■プロバイダーの責任と管理範囲
2002年5月1日より、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(法律第一三七号)」が施行されている。本法律はその通称である「プロバイダー責任法」が示す通り、待ちに待たれたプロバイダーの責任問題につき定めた法律ではあるが、プロバイダーが責任を負わない場合について規定しているのみの法律であり、民法709条(不法行為)の責任制限のために作られた法律である。従って、実際の判断には結局の所裁判所の判断を仰ぐしかないと言えなくもない。しかしながら、モバイル・インターネットにおけるプロバイダー責任についての議論は残念ながら引用できる事例のある段階ではないし、総務省主催のビジネスモデル研究会における、モバイル・インターネット上のコンテントに関する第三者機関設立の案も不成立という現状にあっては、本法律はモバイル・ポータル運営者にとって重要な指針を提供することは間違いないであろう。そこで、米国の法律や事例を中心に、プロバイダー責任に関する主用事項(責任帰属の世界の流れ、ヤフーのナチス関連商品取引事件、米プロバイダー責任の類型、日本プロバイダーの責任、モバイル・ポータル運営者の責任)をまとめた。