2003年1月号(通巻166号)
ホーム > レポート > 世界の移動・パーソナル通信T&S >
世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:市場・企業

韓国cdma2000 1xEV-DO市場の現状

 香港にて2002年12月2日から7日にかけて行われた国際展示会、第6回テレコム・アジア2002において、韓国企業は同国市場のcdma2000 1xEV-DOの進展を世界に見せつけていたようだ。今回の展示会規模を前回の第5回展示会と比較すると、参加企業数は約40%減となり、来訪者数も約30%減という結果となっており、長引く世界的テレコム不況の影響が映し出されている。しかしながら、展示会の韓国企業ブースではEV-DOのデモンストレーションが行われ、第3世代移動通信サービスに対する明るい兆しが見え始めたようだ。ここでは、韓国におけるEV-DO市場の概要を紹介する。

 韓国においてEV-DOサービスを提供している事業者は、韓国第1位のSKテレコム(SKT)と第2位のKTFである。最初にサービスを開始したのがSKTで、2002年1月28日にスタートさせた。システム・インフラはサムスン電子によるもので、2002年7月時点において2,068基の基地局が設置されている。一方韓国第2位のKTFも同サービスを2002年5月10日に開始しており、ルーセント、モトローラ、サムスン電子などにより設置された基地局数は2002年第1四半期の時点で1,450基となっている。

 SKTはサービス開始当初、EV-DOサービスに対してブランド・ネームを設定していなかったが、2002年11月25日にブランド・ネームを「ジューン(June)」とすると発表した。一方のKTFはサービス開始当初からブランド・ネームを「FIMM(First In Mobile Multimedia)」と設定していた。SKTが11月にブランドを設定するまでは、SKTはあえて3Gサービスに対して特定のブランドを設定しない展開を行い、まるでKDDI(同様にKDDIもEV-DOサービスに対して特定のブランドを設定していない)と同じ路線を採るのかに思えた。一方のKTFのブランド「FIMM」は、NTTドコモの3Gサービス・ブランド「FOMA(Freedom Of Mobile Multimedia Access)」と似ているため、韓国の第2事業者(KTF)が日本の第1事業者(NTTドコモ)と、また韓国の第1事業者(SKT)が日本の第2事業者(KDDI)と同じようなアプローチを採っているかのように見えた。しかしながらSKTは、サービス開始から10ヶ月も経過した11月になってからブランド・ネームを設定した。ブランド設定の背景には、同社の伸び悩む加入者数があるのだろう。

表:3G及び2.5Gサービス加入者数(2002年第3四半期)

 表にある通り、SKTとKTFの差は桁違いだ。SKTのプレス・リリースによればブランド・ネームの「ジューン」は消費者にとって親しみやすい名称だとの説明があったが、確かにFIMMやFOMAといった略称をブランドにする形式と比較して、「June」という一般名称を利用しているため親近感を覚える。このブランドの設定により今後加入者数が増加することが望まれるところであるが、以下では韓国第1事業者であるにも関わらず、SKTの3Gサービスが伸び悩んだ原因について触れてみる。

  SKTの加入者数伸び悩みの原因は端末展開の失敗にあった。SKTは世界初を目指し、サービス開始を急いだためか、サービス開始時の利用可能端末としてパソコン・ユーザー向けのデータ・カード型EV-DO端末しか用意しなかった。サービス開始6ヶ月後の2002年7月にやっと、サムスン電子のEV-DO携帯電話、SCH-E100をリリースした。一方のKTFはSKTのSCH-E100リリースに先駆けて2002年5月にLG電子のEV-DO携帯電話、LG-KH5000をリリースした。このKTFの携帯電話は、SKTの携帯電話よりも先に市場にリリースされたという優位性(つまり韓国市場初のEV-DO対応携帯電話)に加えて、機能的にもKTFの携帯電話の方が消費者にとっては魅力的だったと思われる。なぜならSCH-E100(SKT)が、デジタル・カメラをアクセサリーとして装着することで写真撮影が可能であったのに対して、 LG-KH5000(KTF)はデジタル・カメラを内蔵しており、それに加えて液晶画面がビデオ・カメラのように回転するという奇抜なデザインを持っていたためだ(2002年12月に発表されたNTTドコモのP2102Vと同様のカムコーダー型液晶。写真参照。なんとカムコーダー型液晶搭載携帯電話の登場は韓国市場に先を越されていた)。

【LG-KH5000(KTF)】 【 P2102V(NTTドコモ)】
LG-KH5000(KTF)
出典:LG電子のプレス・リリースより
P2102V(NTTドコモ)
出典:NTTドコモのプレス・リリースより

 SKTは現在、データ・カード型端末1台と3台の携帯電話をEV-DO端末として用意し、KTFは4台のEV-DO携帯電話を用意している。カメラ内蔵型という点では、SKTは1台のみ(SCH-V300)であるのに対して、KTFは3台(LG-KH5000、KTF-X3000、Hyundai PD-6000)ある。液晶画面のカラー数で見ると、SKTの最新端末は26万色(IM-5300)を誇り、いくつかのKTF端末は6万5千色となっている。両者の端末スペックは互いに切磋琢磨し、日ごとに違いが無くなってくるだろう。こうなってくると消費者にとってのサービス選択基準はハードの仕様からソフトの仕様、つまり、コンテンツ品質へと移ってゆくのではないか。一部の報道によれば、最近韓国において携帯電話事業者はコンテンツ・プロバイダーと協力体制をとり、急激にコンテンツ数が増加しているという。EV-DOサービスのコンテンツはW-CDMAサービスのコンテンツと違いがないと考えられるため、韓国市場はEV-DO用コンテンツがW-CDMA用に市場を開墾しているとも言われている。3GサービスとしてW-CDMAを選択する多くの欧州事業者にとって韓国市場は日本と同様興味深い市場に映るのだろう。

移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 上田 倫未
▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。