2004年8月号(通巻185号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<トレンドレポート>

Wi−Fiビジネスの将来

 Wi−Fi(無線LAN)は画期的な無線アクセス技術であり、既に多くのパソコンがWi−Fiと接続する機能を内蔵している。米国の調査会社のヤンキー・グループは、2004年末には米国の750万世帯が家庭内でWi−Fiを利用すると予測している。また、最近のウォール・ストリート・ジャーナルはWi−Fiの普及で、最近バスルームからのメールの利用やウェブへのアクセスが増加していると指摘し、家庭内で「何処からでもインターネット」が利用できる状況をレポートしている。一方、米国におけるWi−Fiのホットスポット(パブリック・ロケーション)の数も急増し、2003年末で1.5万となったという。しかし、去る2004年5月に卸売りWi−Fiプロバイダーのコメタ・ネットワークスが、投資家に利益を還元する見通しが立たないという理由から業務の中止に追い込まれ、改めてWi−Fiがビジネスとして自立することの難しさを示した。Wi−Fiの利用が急激に進む一方で、Wi−Fiのパブリック・ロケーション(公衆無線LAN)・ビジネスの自立が困難なの何故なのか。ビジネスとして自立するための条件は何なのか。米国における市場動向を手懸りにこの問題を考えてみたい。

■無料Wi−Fiネットワークの急展開

 コメタ・ネットワークスは2002年に卸売りWi−Fi事業に参入した新興企業で、IBM、インテル及びAT&Tが支援していた。通信会社やインターネット・サービス・プロバイダーなどにユニバーサル・アクセスとセキュアーなWi−Fiサービスを提供することを目標に、2004年末までに全米2万ヵ所にホットスポットを構築する計画だったが、実際はシアトルを中心とした250ヶ所にとどまっていた(注)

(注)米コメタ・ネットワークス、ホットスポット業務を停止 Infocom移動・パーソナル通信ニューズレター 2004年6月号(通巻183号)参照

 事業撤退の原因を端的にいえば、多くの公的機関,お客を惹きつけることを望むパパママ(mom-and-pop)ストアや「草の根」ネットワークを構築することを目指す個人が、何千もの無料のホットスポットを開設したことである。いくつかの地方自治体、例えばジャクソンビル(フロリダ州)、ロワー・マンハッタンおよびポートランド(オレゴン州)は、地場企業などと協力して無料のWi−Fiネットワークを展開している。

 驚くべき広がりを見せる無料ネットワークは、通信事業者などのコマーシャル・ベースのプロバイダーがWi−Fiで利益を上げることを困難にし、その戦略の見直しを迫っている。無線接続の展開を目指す地方自治体と「草の根」グループの努力によって、無料Wi−Fiのインフラはボトムアップで構築されつつある。インターネット接続が立ち上がった時のことを考えると、これらの勢力の潜在的な力は巨大であると見るべきだという(注)

(注)Where entrepreneurs go and the Internet is free(The New York Times online / June 7,2004)

 それぞれのWi−Fiホットスポットは無線の送信及び受信機を備え、DSLのようなブロードバンド回線を介してインターネットに接続されている。Wi−Fiの送信機は通常150〜1,000フィートの範囲で接続ができる。送信機が異なるネットワーク上にある時、および異なるチャンネルで通信を行 う場合は、カバレッジがオーバーラップする特定のエリアにおいても同時に通信が出来る。ニューヨークやサンフランシスコなどのホットスポットが密集して設置されている大都会では、Wi−Fiのユーザーはものの数ブロックも歩けば無料ホットスポットを発見できるという。このような状況では、無料ホットスポットを利用できない所に限って、有料ホットスポットを利用するということになり、Wi−Fiの事業化は難しい。

■携帯電話会社のビジネス・モデル

 しかし、Wi−Fiサービスを販売するすべての企業が苦境にあるわけではない。例えば米国第5位の携帯電話会社であるT−モバイルUSAは、利益を上げられるよく出来たビジネス・モデルを持っている、と調査会社のヤンキー・グループは評価している。(前掲ニューヨーク・タイムズ紙)T−モバイルUSAは、キンコーズ、ボダ―ズ・ブックストア、ホテル、空港、大学およびスターバックス・カフェなどのなかに4,650のWi−Fiホットスポットを設置しており、現在、1日に35ヵ所のホットスポットが増加している。同社は最近、北米の122のハイヤット・ホテルにホットスポットを展開する計画を発表した。ユーザーは、1日の利用で9.95ドル、1ヵ月の利用(同社の全ホットスポットで利用できる)で29.99ドル、同じプランでユーザーが同社の携帯電話の顧客である場合は19.95ドルで利用できる。

 T−モバイルUSAは、Wi−Fiの顧客数、収入、利益などを公表していないが、同社のWi−Fi事業の責任者は、「我々はこのパブリック・ホットスポット事業で十分に稼げると思っている。」と語っている。彼によると、T−モバイルUSAはこれまでいくつかの重要な教訓を学んできたという。すなわち、ホットスポットはビジネス顧客からのヘビー・トラフィックが期待できるところに設置する必要があり、またWi−Fiビジネスが儲かるためには、同じサービスを何処からでも利用できる能力をユーザーに与える全国ネットワークを構築するとともにブランドを確立することが不可欠だということである。

 T−モバイルUSAのケースでは、Wi−Fiと携帯電話の両事業部門が、ネットワーク・オペレーション、顧客コール・センター及びデータ・ネットワークを共用することで低コストを実現している。同社は現在の1,430万の携帯電話顧客に、同社のブランド・ネームを利用してWi−Fiサービスを売り込んでいる。一方、Wi−Fiは携帯電話の新規顧客獲得のためのプロモーションやセールス・トークとしても役立っている。

 T−モバイルUSAのWi−Fi事業の責任者によれば、同社の商業ネットワークは、より信頼性の高いセキュアーなインターネット接続を提供できると顧客は評価しているので、無料ホットスポットの急増を心配することはないという。社外秘の報告書をダウンロードしなければならないとか、仕事のために会社のシステムにアクセスしなければならない場合は、セキュリティに不安のある無料Wi−Fiの利用は差し控えた方がよいからだ。

 利用者側から見たWi−Fiに加入しても良い条件は、どこでもホットスポットを利用できる「ユニバーサル・アクセス」を提供できる事業者が存在し、セキュアーなサービスを合理的な料金で利用で きること、ということになりそうだ。特に、種々のロケーションのホットスポットをカバーするシングル・プランを利用者に提供できるかどうかが、Wi−Fiサービスの成長にとって肝要なのではないか、と前掲のニューヨーク・タイムズ紙は書いている。

 携帯電話事業では「ユニバーサル・アクセス」は、特定の携帯電話事業者の顧客が競争会社のネットワークを利用できるようにする「ローミング協定」によって実現している。しかし、Wi−Fi事業におけるローミング協定は、まだ限定的である。ローミングによって「ユニバーサル・アクセス」を実現することが、Wi−Fiビジネス化でも欠かせないポイントだ。

 しかし、T−モバイル・グループが狙っているのはは、Wi−Fiのスタンド・アロン事業ではない。去る7月19日にT−モバイルUKは、英国で第3世代携帯電話(3G)網によるデータ・カード接続と、データ・カードとWi−Fiを統合するサービスを開始した。同社の英国におけるホットスポット数は約500(グループ全体では7,000)である。当面の3Gの速度は128kbpsであるが、数ヵ月後には384kbpsとなる。この3G/Wi−Fi統合サービスの料金は、データ・カードの購入など一時金で199ポンド(40,200円)、無制限利用の月額料金が70ポンド(14,100円)である。T−モバイルUSAは、3Gが導入されるまでの間、GSM/GPRS/Wi−Fi統合サービスを提供する計画が進行している(注)

(注)T-Mobile UK launches 3G data card and 3G/Wi-Fi tariff(Dow Jones Newswires/19 July2004)

■ 地域電話会社とケーブル会社のビジネス・モデル

 概して米国の地域電話会社は、インターネット接続のための2回線目の電話を維持することに重点を置いたため、DSLのようなブロードバンドの提供にあまり熱心ではなかった。一方、衛星放送会社の攻勢を受けて困惑したケーブル・テレビ会社は、競争優位を確保するため、ケーブル・モデムによるブロードバンドの提供に一斉に動き出した。これに脅威を覚えた地域電話会社は、ブロードバンドの市場シェア確保を狙って、昨年からDSLの料金を引き下げ始めた。さらに、SBC、ベライゾン及びベルサウスは、新規にDSLを契約した顧客にWi−Fiルーターを無料で提供している。クエストは顧客に提供するすべてのDSLモデムにWi−Fiの機能を持たせている。

ブロードバンドで攻勢に出たケーブル・テレビ会社に対する地域電話会社の反撃は成功したようだ。今年の第1四半期におけるDSLの純増数は117万で、初めてケーブル・モデムの114万(前年同期比16%の減)を上回ったという。ブロードバンド顧客の獲得競争に勝利するため、ベル電話会社がWi−Fiの競争に参入したことは理屈が通っている。新技術はともかく顧客を惹きつける。しかし、Wi−Fiを事業として採算が取れるようにすることと、競争優位のためにWi−Fiを活用することは別の課題である、とウォール・ストリート・ジャーナルは指摘している(注)

(注)Bells offer free Wi-Fi equipment to defend Internet turf(The Wall Street Journal online / July 6, 2004)
なお、米国における2003年末ブロードバンド接続回線数は2,800万で、内訳はケーブル・モデム58%、DSL34%である。世態普及率は20%。(FCC調査)

 ブロードバンド・プロバイダーは、Wi−Fi接続の設定が複雑なため、ホーム・ワイヤレス・ネットワークの提供によって他事業者への契約の移行を少なくすることが出来ると強調する。ケーブル会 社のコックス・コミュニケーションズによると、Wi−Fi設備を購入した顧客の年間解約率は、全ケーブル・モデム利用者の年間平均解約率36%の半分だったという。しかし、地域電話会社には、ブロードバンドの市場シェアを高めること以上の目標がある。それは顧客の家庭内からケーブル・モデムを締め出すことであり、そうでなければケーブル会社による電話(VoIPの場合が多い)の契約獲得を阻止出来るからだ。

 DSLとケーブル・モデムのシェア争いは、もはや単なるインターネット接続の問題ではなく、電話会社のコア・ビジネスである音声サービスが、今や危機にあることを意味している。

 ケーブル会社も電話事業に乗り出している。最大手のコムキャストは4,000万世帯で電話サービスを利用できるようにするプランを発表した。コックスは既に12都市で電話サービスを開始している。タイム・ワーナー・ケーブルは、今年末までに同社の31の市場全部で電話サービスを開始すると発表した。さらに、ケーブル・ビジョン・システムズは最近、デジタル・ケーブル・テレビジョン放送、ブロードバンド・インターネット接続及び無料の電話サービス(VoIP)をパッケージで提供する計画を発表している。

 ケーブル会社も、電話会社ほど積極的ではないがWi−Fi事業に進出している。コムキャストは一部の市場で顧客に家庭内で使うWi−Fi設備をリースで提供しているが、今年末までには全市場に拡大する予定だ。同社は設備を設置するための料金のほかに、月額10ドルの顧客サポート料金を課している。コックスはルーターやPCカードを含むWi−Fi設備を249ドルで提供しているが、月額料金は不要で、今年の秋には積極販売を計画している。タイム・ワーナー・ケーブルは、ラップトップPC用のアンテナつきカードを含むWi−Fi設備を、設置料35ドル以下(地域で異なる)、月額料金およそ6ドルで提供している。

 地域電話会社第2位のSBCは、6,000地域に20,000以上のWi−Fiホットスポットを3年間で展開し、近い将来Wi−Fiと携帯電話子会社シンギュラーの第3世代携帯電話サービスを統合して、顧客が何処にいてもブロードバンドにアクセスできるようにする計画を発表している。SBCのWi−Fiサービスは「フリーダムリンク」と呼ばれ、2006年末には同社の営業区域13州における6,000のホテル、空港、コンベンション・センターなどで利用出来るようにする。加入者がさらに多くのホットスポットと接続出来るようにするため、他のWi−Fiプロバイダーとのローミング協定締結を促進することも計画している。

 さらにSBCは7月初旬に、Wi−Fiプロバイダーのウェイポート(Wayport)と提携して、今後1年以内に全米6,000のマクドナルドのレストラン(マクドナルドの全店舗数は約8,000)でWi−Fiサービスを提供すると発表した。SBCは去る3月にも、全米3,000のUPS(United Parcel Service 、大手物流会社)の店舗でWi−Fiを利用できるようにする計画を発表している。ブランドと立地条件の良さによって、マクドナルドのレストラン・チェーンやUPSストアは、SBCのWi−Fiサービス( フリーダムリンク)にとって良きパートナーとなるとともに、同社のバンドリング戦略を補強する有力な手段となる、とSBCの幹部は語っている。SBCのネットワーク内におけるWi−Fiの無制限利用は月額19.95ドルである(注)

(注)SBC plans deal with McDonald’s to offer Wi-Fi in restaurants(The Wall Street Journal online /June 7、2004)

■新興企業のビジネス・モデル

 Wi−Fiは機器の値段も安く、周波数の免許も不要で、規制もなく、新興企業でもネットワークの展開は容易である。参入ラッシュはまるで西部開拓時代の再来を思わせるような雰囲気だったという。しかし、お金を払ってくれる顧客を集め、採算をとって行くことが極めて困難なことが認識され、かなりの企業は撤退したが、現在でも新規参入は続いている。このような情況の下では、どんな「ビジネス・モデル」を選択するかが重要である。

 よく知られているのはボインゴ・ワイヤレスの「アグリゲーター」モデルである。自社のWi−Fiネットワークは展開せず、他社が構築した6,000のホットスポット(ローミングで相互に接続可能)にアクセス出来るサービスを月額21.95ドルで提供している。創立後3年になる同社のコストのほとんどが従業員70人の人件費で、同社は2006年に黒字に転じることを期待している。

 米国でT−モバイルUSAと並んで2大Wi−Fiプロバイダーと目されているのは、ウェイポートである。主要なホテル800、及び12の空港を含む1,500ヵ所にホットスポットを設置している。同社は去る5月に、全米8,000のマクドナルド・レストランにWi−Fiを構築する契約を獲得したが、そのことがコメタ・ネットワークスの事業撤退を早めたともいわれている。同社はそれまで消費者にWi−Fi接続を提供する事業を行っていたが、マクドナルドとの契約締結を契機に、「卸売り」モデルに方針を転換した。前述したように、SBCと提携して6,000のマクドナルド・レストランにおいてSBCのブランドでWi−Fiサービスを提供している。ウェイポートはベンチャー・キャピタルからの出資を受けて1998年に設立されたが、未だ利益を出していない(注)

(注)Skeptics question Wi-Fi’s viability(Washingtonpost.com /June 14,2004)
なお、マクドナルド・レストランでは、同社のブランド名でも顧客にWi-Fi接続サービスを提供している(ウェイポートが一ヶ所月額32ドルをマクドナルド側から受け取る)。

 最近における新興Wi−Fiプロバイダーの動きをニュー・メキシコ州リオ・ランチョ(Rio Rancho人口6万人)の事例で紹介する。去る6月26日に同市の住民は、住宅、自動車、近所の公園など街のほとんど何処からでもインターネットにアクセス出来るようになった。ポイント・ツー・ポイント通信用の無線ルーターを数百フィート毎に設置し、ブロードバンド信号を中継する新しい「メッシュ」技術が、無線ネットワークによる信号の到達距離を数マイルまで延ばした。Wi−Fiホットスポットは今やリオ・ランチョのようなホットタウンを実現した、とビジネス・ウイークは報じている(注)

(注)Wi-Fi hits the hinterland(BusinessWeek online / July 2,2004)

 このネットワークを構築したUsurf Americaは、アクセス・ポイントの一つが機能しなくなっても、システムが一番近いアクセス・ポイントを探して接続するので、リオ・ランチョ全域をWi−Fiでカバーすることが可能になったと語っている。街灯のポールに設置された500の無線ルーターが、全市103平方マイルをカバーしている。さらに、いくつかは高いビルの屋上にも設置されている。工事着手から運用開始までの所要日数は僅か数日だった。Usurfがリオ・ランチョのネットワーク構築に要した費用は200万ドルで、利用料金は月額40ドルである。従来の技術でブロードバンドを構築すれば1,000万ドルを要しただろうという。

 この例は、電話会社やケーブル会社がブロードバンドの進出に躊躇するような地域でも、成功する可能性があることを示している。電話会社のDSLのサービス・エリア外にある地方自治体などがこのメッシュ技術に着目し、住民サービスのために導入を開始した。ミネソタ州チャスカ市は新興企業のトロポス・ネットワークと提携し、無線LANサービスを住民に提供する。2004年6月中にホットスポットを市内200ヵ所に設置して巨大な無線LANを構築した。警察など市の安全確保対策としても活用されるが、サービスの主な対象は一般市民で、利用者は市内何処からでもこの無線ブロードバンドにアクセス出来るようになる(注)

(注)米の高速無線LAN(日経産業新聞 2004年6月4日)

■Wi−Fiの将来性は他のサービスとの一体化にある

 Wi−Fiは、ユビキタス・ブロードバンド・ネットワークの構成要素として欠かせない存在である。Wi−Fiの技術もWiMAXやIEEE802.11nなどの登場でさらに革新が進みそうだ。家庭内ネットワークのブロードバンド化にはWi−Fiだけでなくブルートゥースやウルトラ・ワイド・バンドも使われそうだが、Wi−Fiの需要は確実に今後も伸びると期待できる。問題はWi−Fiをビジネスとして成功させるためにはどうしたらよいかである。

 先ず、Wi−Fiのスタンドアロン・ビジネスは極めて難しいと見るべきではないか。理由はWi−Fiの無料化の流れが益々強まると思われるからだ。慶応大学の国領二郎教授によれば、情報ネットワーク・ビジネスは、収益追求型と無料奉仕型の二面性が共存するという。Wi−Fiは、まさしくこの二面性を持つ典型な分野だと考えられる。収益追求型ビジネスを目指す場合は、無料奉仕型サービスにない特徴をどう出せるかにかかっている。

 次に、自社の他のサービスを売り込むために、無料もしくは格安価格で提供する「目玉商品」もしくはプロモーション・ツールとしてWi−Fiを活用する方法である。例えば、米国の地域電話会社第1位のベライゾンは、同社のブロードバンド・サービスであるDSLを契約したニューヨーク市内の顧客には、Wi−Fiを無料で利用させている。VoIPなども将来は、ブロードバンド・サービスの「景品」として無料で提供される可能性が高い。Wi−Fi設備の価格やインターネットに接続するブロードバンド回線の料金の低下を考えると、Wi−Fiはコア・ビジネスの顧客獲得もしくは維持に、優れたコスト・パフォーマンスで効果的に寄与できるのではないか。

 第3の可能性は、Wi−Fiを他のサービスと一体化し、新たな付加価値のついたサービスとして提供することである。このケースでは採算がとれる可能性がある。米国の地域電話会社が、Wi−Fiと子会社の第3世代携帯電話(3G)のサービスをデータ・カード上に一体化して提供しようとする動きがこれにあたる。わが国でも最近ソフトバンクBBが、同社が参入を目指す第3世代携帯電話(3G)向けの端末を、Wi−Fi端末としても使えるようにしようという構想を発表した。顧客は3G端末から、同社のホットスポットを介して既存のIP網にもアクセスが可能(IP電話も利用できる)となることから、同社はビジネス利用を中心に短期間に大量の顧客を獲得できると期待している。

特別研究員 本間 雅雄
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