2004年11月号(通巻188号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:市場・企業>

インドの携帯電話市場−進む業界再編と料金値下げ競争−

■固定電話と携帯電話の逆転

 インドにおける携帯電話普及が急速に進展している。インドの電気通信管理局(TRAI)によると2004年6月末の携帯電話加入者数(WLLを含む)は約3,773万で、前年同期比118%と急増している。2004年内には固定電話の加入者数約4,900万(ITU調べ)に迫る勢いで伸びており、固定電話と携帯電話の逆転は時間の問題といえよう。

 インドは中国に次いで世界第2位の巨大市場として、世界のIT系企業の注目を集めている。携帯電話機市場でも、ノキアやモトローラ、サムスン電子のほか、中国の科建も進出している。1台3,000ルピー(約7,200円)を下回る安価なGSM端末が普及する一方、カメラ付腕時計型携帯(韓国Telson製)も発売されており、カラー液晶やカメラ機能を備えた携帯電話端末を中心に高機能化が進みつつある。また、香港のハチソン・ワンポアやシンガポール・テレコムは、インド国内の資本とともに携帯電話事業でそれぞれ「ハッチ」と「エアテル」というブランドを確立している。

 今後も事業者数の増加や料金の値下げが一層進展すると見られるが、相互接続料金の引き下げや、全国展開を可能にするために営業エリアを限定しない統合免許の導入、外国企業による出資上限の引き上げなどの規制緩和によってこれからもインドの携帯電話をめぐる動きは衰えることはないだろう。ガートナーによれば、2006年には携帯電話加入数は1億、2008年には1億5,000万を突破すると予測している。

■値下げ競争

 インドでは携帯電話料金の値下げ競争が著しい。携帯電話サービス最大手のブハルティ・テレベンチャーは、自社携帯間の近距離通話(後払い)に、これまでの半額の1分1ルピー(約2.4円)という新たな料金を設定した。同第2位のリライアンス・インフォコムでも自社携帯間の通話料金(後払い)を1分1ルピーから0.4ルピー(約1円)へと値下げした。ハチソン・エッサールでも9月上旬に最高約50%の値下げを実施している。国営のMTNLも10月から携帯電話料金を最大57%値下げする。

■業界再編

 順調に加入者数を増やしている一方、通話料金の値下げ競争が激化していることで、加入者1人当たりの利益の低下に直面している事業者も出てきた。「エアテル」ブランドで知られるブハルティ・テレベンチャーは、2005年4月よりサービス網を増強しシェアを拡大するため約7億ドルを投資すると発表している。ブハルティの加入者数は約830万だが、約870万人の加入者を持つ首位の財閥系リライアンス・グループを追撃し、現在のシェア約21%を1ポイント引き上げながら加入者数を増やしていくことで加入者1人当たりの利益を確保する方針だ。今年度もサービス拡充などに合計で7億5,000万ドルを投資することを計画している。

  香港のハチソン・ワンポアとインドのエッサール・グループによる合弁企業であるハチソン・エッサール・テレコム・グループはエアセル・セルラーを買収した。エアセル・セルラーは南部のタミルナド州などで加入者が多い。さらに、コルカタに本社を置くハチソン・エッサール・イーストなど5社でも経営統合し、新会社名をハチソン・マックス・テレコムとした。

 政府系BSNLは、バングラデシュとの国境に近い西ベンガル州やオリッサ州など東部に積極的に進出している。また、加入者増を見込んでノキアとノーテル・ネットワークスに地上設備を発注している。

 携帯電話事業者各社は市場拡大の余地が大きいインド東部・南部での事業展開を重視しており、今後海外の事業者の参入も含め業界再編が一層進むことが予想される。

(「Business Week」、日本経済新聞、TRAI公表資料、COAI広報資料等に基づく。)

移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 永野 寛

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