2007年1月号(通巻214号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:市場・企業>

携帯SNSの行方

 携帯電話で利用できるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では、わが国でもKDDIが2006年11月16日より、SNSベンチャー企業のグリーと共に「EZ GREE」を開始し、11月23日時点で既に会員数が10万人を突破したとの発表がされている。NTTドコモも楽天と提携し、SNSをオークションに組み込んだケータイコミュニティー「オクトモ」を2006年11月20日より開始しており、ソフトバンクモバイルも世界最大手SNSであるマイスペースのサービスを2007年にも正式に開始する予定であり、ここへきて携帯SNSへの期待感が一気に高まっている。こうした中、米国でも携帯SNSを巡る大手事業者の動きが顕在化してきた。

■インターネット・ポータル最大手の米ヤフーが携帯SNSに参入

 米ヤフーは2006年11月30日、携帯SNSの新サービス「Mixd」を開始し、成長が期待される携帯SNS市場に参入した。しかし、Mixdは従来型のSNSとは異なり、プロフィールの作成や友人リストの拡張などはできない。インターネット・サイトとの連携もなく、テキスト・メッセージのみで友人として登録されたメンバーの管理・コントロールを行うものである。

 同サービスは、テキスト・メッセージング・サービスを既に積極的に活用している社交的な若者を対象とし、パーティや飲み会、研究会、スポーツ観戦ツアー等の企画運営を簡易にするためのツールとして、友人をグループ(Mixer)化し、Mixer内で短縮されたテキスト・メッセージのキーワードを使って伝達したり、写真やビデオを共有したりするものである。また、Mixer全体のログが関連ウェブページにて公開される。同社によれば、従来のテキスト・メッセージング・サービスでは1対多とやり取りする概念がなかったことから、同サービスによってMixer間のモバイル・メッセージングとメディア共有の簡略化が図れるとしている。

 同サービスの利用にあたっては、携帯電話事業者が課金する通常のテキスト・メッセージング・パッケージ以外のコストは一切発生しない。また、携帯インターネット・サービスの利用プランへの加入やカメラ付き携帯電話も必要ないとしている。Mixdはヤフーにとってまだ実験段階のサービスであるが、ターゲットや利用用途を絞り込んだ同社の戦略が成功するか否か、今後の動向が注目される。

■世界最大手SNSマイスペースとシンギュラー・ワイヤレスの提携

 他方、2006年11月にページビュー(PV)がヤフーを抜いたと報道された最大手SNS、マイスペースは、2006年12月18日、シンギュラー・ワイヤレスと携帯SNSで提携したことを発表した。シンギュラー・ワイヤレスのユーザーは、携帯電話からモバイル版SNS「My Space Mobile on Cingular」にアクセスし、プロフィールを作成・編集したり、友人リストや友人のプロフィール、写真等を閲覧したりすることができる他、友人の追加登録や検索、ブログやコメントの投稿、メッセージの送受信等の各機能が利用可能となる。また、自身のマイページにリンクしている友人がプロフィールやブログを更新した際には、携帯電話にアラートが送信される。

 同サービスを利用するためには、携帯電話にJava対応のアプリケーション・ソフトウェアをダウンロードする必要がある。サービス利用料金は月額2.99ドルだが、別途データ通信料金がかかる。マイスペースによれば、当初は約30機種でサポートし、近く20機種を追加予定で、最終的にシンギュラー・ワイヤレスのユーザーが利用している90%の携帯電話に対応するとしている。また、当初ビデオ視聴には対応していないが、2007年中には提供したいとのことである。

 マイスペースはシンギュラー・ワイヤレスの他にも、2006年2月にMVNOのヘリオと提携し、携帯SNS「MySpace Mobile On Helio」を提供している。しかし、ヘリオの加入者数が限定的であることから、マイスペースではナショナル・キャリアであるシンギュラー・ワイヤレスと提携することにより、携帯SNSの利用者を一気に拡大する狙いである。ちなみに、マイスペースとシンギュラー・ワイヤレスとの提携はこれが初めてではない。両社は2006年3月に、マイスペース・ネットワーク内の友人が、プロファイルやブログを更新した際に携帯電話にアラートを送信するサービス「MySpace Mobile Alert」の提供で提携している他、同年4月には、マイスペースを利用するアマチュア・アーティストが自作の楽曲を着信音にして配信できる「Cingular Mobile Music Studio」の提供でも提携している。両社では、主にティーンエイジャー向けのデータ・サービスの収益拡大を図るため、今後も関係強化を図っていくとしている。

 調査会社のM:Metricsによれば、米国ではSNSに登録している13〜17歳のユーザーの8.8%が携帯電話から写真をウェブにアップロードしており、その割合は、米携帯電話ユーザーが携帯電話から写真をウェブにアップロードする割合(4.8%)の約2倍とのことである。同社はヨーロッパの数カ国においても同様の調査を実施しているが、いずれも同様の結果を得ており、若年層が牽引しているSNS市場において、写真の投稿が有効なサービスであることを示している。携帯電話のキラー・アプリケーションが模索されてから久しいが、若年層を中心とした携帯SNSがブレーク・スルーとなるのか、今後が期待される。

研究員 武田 まゆみ
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