2009年11月11日掲載

2009年9月号(通巻246号)

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InfoComモバイル通信T&S

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[tweet] サービス関連(製品・端末)

ノキア、モバイル向け金融サービス
「ノキア・マネー」を発表

 ノキアは2009年8月、携帯電話向けの金融サービス「ノキア・マネー」を発表した。新興市場を主要ターゲットとした決済サービスを提供し、新興市場においての生き残りをかけ、同社の提供する端末や製品の競争力強化を目指している。
「ノキア・マネー」は、携帯電話を活用し、送金や決済が可能となるサービスである。携帯電話利用者同士では、電話番号を指定して送金をすることができる他、商品やサービス代金、公共料金の支払いやプリペイド方式の電子マネーの利用が可能となる。このサービスは、主に銀行口座を所有しない携帯電話ユーザーの多い新興市場をターゲットとしている。サービスは2010年初頭に一部の地域で商用化し、順次提供地域を広げていく計画である。

 ノキアではこれに先駆け、2009年3月にモバイル決済サービスを手掛ける米国のベンチャー企業、Obopayに7千万ドルを資金提供、今回のサービスは同社と共同で開発している。Obopayの技術を利用すれば、ユーザーは携帯電話番号にリンクした口座を開設し、携帯電話を介してこの口座で入金や出金などのやり取りができる。同社が開発した携帯電話向けの決済プラットフォームを活用し、SMSやインターネットを介して決済するしくみである。ノキアでは、このサービスがキャリアを越えての送金が可能となる点を強調しており、今後、他の決済サービスと互換性を確保し、サービスに対応する携帯電話の機種数を増やし、このサービスを広範に普及させていきたい考えを示している。

 ノキアがモバイル決済サービスを手掛ける背景には、新興市場における競争激化がある。一時は成長への期待から参入が目立った新興市場向けの価格を抑えたローエンド向け端末市場だが、端末価格の下落が激しく、利益率は低下する一方である。さらに、昨年からの金融危機による経済不況により、想定していた程の市場拡大は望めない。その上、中国メーカーの参入も相次いでおり、さらに激しい価格競争が始まれば、従来からの端末メーカーは撤退や規模縮小を余儀なくされることになる。そこでノキアでは、端末に付加価値をつけ携帯電話を活用したサービスを提供することで、新興市場での生き残りと競争力の強化を目指している。

 統計によれば、全世界の携帯電話ユーザーは40億を超えた一方で銀行口座は16億に過ぎず、特に新興市場においては携帯電話は使っていても銀行口座のないユーザーは多い。一方、新興市場における携帯電話を活用した送金などの金融サービスは開始されているが、国境を越えたサービス、特に欧州からアジアといった地域を越えた大規模なものはまだ見当たらず、市場開拓は始まったばかりである。

 日本では「おサイフケータイ」も普及し、世界に先駆けてモバイル決済サービスが始まったが、概して海外では黎明期とも言える段階である。米調査会社ガートナーによれば、2008年ではモバイル決済サービスの利用者は4,310万人であったが、2009年には7,340万人と成長率70.4%となる見込みだ。さらに、2012年には全人口の3%に当る1億9千万人まで成長するとしている。一方、そのコア技術を見ると、先進市場ではNFCを活用したサービスが広まっているが、新興市場ではよりコストを抑えることが可能なSMSを活用したソリューションが主流となっており、海外では一線を画す状況となっている点は見逃すべきではない。

宮下 洋子

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