ICTに関わる者がアニメやMANGAをみると、ついついコンテンツ産業へと話題が流れがちです。今回は、そうではなく、福祉ロボットへと目を向けてみましょう。
2010年4月、鉄腕アトムが東京の小学校の入学式に行く場面があったそうです。私の記憶にその場面は出てきませんが、画の背景には高層ビルと高速道路の間をアトムが飛び抜けていくシーンが描かれていたように思うので、やはり1950年代から手塚治虫氏が描いていた世界は50〜60年先の今日の世界を想定していたと思われます。半世紀前に登場してきたロボットがその後もアニメやMANGAや広告など様々なシーンに登場しており、息の長い人気キャラクターとして親しまれているようです。また、同時代の人気マンガの鉄人28号も復活しています。2009年秋、原作者である横山光輝氏が神戸市出身であることから、神戸市長田区の公園に鉄人28号の原寸大(マンガ上の全長18メートルを再現)のモニュメント像が阪神大震災後の復興のシンボルとして設置され、地域の活性化にも役立てようとしています。また、最近の新聞広告でもコマーシャル用のキャラクターとして紙面一杯に華々しく登場してきました。
海外に目を転じると、上海万博では日本館のロボットが大きな評判となってニュースや各種メディアで何度も紹介され、特に、二足歩行のロボットや介護や人の活動を支援するロボットに人気が集まっています。
今、偶然とはいえ、新旧のロボットが注目されている現象には、鉄腕アトムは自立型、鉄人28号はリモコン操作型という違いがあるものの、何かを先読みさせるメッセージが潜んでいるようです。知性組み込み型のロボットや介護を必要とする人の自立的行動を支援する機器、介護人の介護行動を支援する福祉機器市場の急激な拡大を示唆しているように思えます。技術開発、マーケット、技術、必要とする政策が整ってきたと感じられるからです。技術面では、レベルの高いロボットやICTは日本のお家芸といえるし、マーケットとしては65歳以上の高齢者が2015年には3,000万人を超え、4人に1人が高齢者となる社会が目前に迫っているからです。政治的には、またまた首相交代という新政権を迎えることになりましたが、これからの新成長産業戦略でも、健康・福祉、科学技術、ICTなどの分野は引き続き重要課題となるはずです。
こんな考え方を、ケアサービス事業を経営している友人に話すと、「概ね同感、でも要介護者にとっては車いすを押すアトム少年よりも自分の意志で動かせる車椅子、あるいは自分の脚で歩けるような補助用具のほうがずっと望まれているのよ」「確かに人の意志は尊重されるべきですね。アトムは理工系の発想かも。でも、介護サービスの現場では看護人の負担は厳しく若い人は長続きしないのが現実なんでしょう。介護人のための支援ロボットや自立支援ロボットのニーズはあるのでは?あるいはリモコン操作型の機器・用具はどう?」、「それはありうる話よ。安ければね」というところでこの話題は終わりました。