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サービス関連(通信・オペレーション)
迷走するヒューレット・パッカード〜
|
順位 |
メーカー |
4Q10 |
4Q10 |
4Q09 |
4Q09 |
出荷台数
|
---|---|---|---|---|---|---|
1 | HP | 64,213 |
18.5% |
60,072 |
19.7% |
6.9% |
2 | Dell | 43,403 |
12.5% |
38,419 |
12.6% |
13.0% |
3 | Acer | 42,430 | 12.3% |
38,412 |
12.6% |
10.5% |
4 | Lenovo | 34,182 | 9.9% | 24,904 |
8.2% |
37.3% |
5 | 東芝 | 19,095 |
5.5% | 15,837 |
5.2% |
20.6% |
その他 | 142,874 | 41.3% | 127,139 |
41.7% |
12.4% |
|
|
合計 | 346,198 |
100.0% |
304,783 |
100.0% |
13.6% |
同日(8月18日)、HPは、webOS事業の打ち切りを発表した。webOSは、HPが買収したPalmが開発したスマートフォン/タブレット向けのソフトウェアプラットフォームである。スマートフォン向けのプラットフォームとしては後発であり、iOSやAndroidなどの特長を多く取り入れている。「Palm Pre」や「Palm Pixi」といったPalm時代の製品のほか、2010年7月にHPに買収されてからはタブレット端末「TouchPad」(図1)や、スマートフォン「Pre3」(図2)、「Veer」(図3)などが登場していた。
HPはスマートフォン(かつてのPDA)の草分け的存在といえるPalmを2010年に12億ドルで買収し、Palmのスマートフォン向けOSであるwebOSを手に入れた。当時Palmは業績が苦しい状態にあり、HPに買収されることで販売や流通、マーケティング、開発者向けの取り組みなど様々な面での改善が期待された。
さらに世界最大規模のPCメーカーであるHPにとって、世界的なタブレットの潮流に乗って発表したのが「TouchPad」だった。2011年7月にアメリカで発売を開始したばかりのTouchPadは、iPad対抗本命かと一部では期待されたが、Appleの「iPad 2」には大きく差を付けられた。そして49日後の2011年8月18日にはwebOSからの撤退を表明した。
このようにPalmを買収し、webOS搭載タブレットTouchPad販売開始直後のwebOSからの撤退には以下のような理由が推測される。
(図1)HP「TouchPad」 |
|
---|---|
(図2)HP「Pre3」 |
(図3)HP「Veer」 |
このように、買収計画時と現状の乖離としては、
(買収計画時)
(現実)
2011年7月に販売開始したHP社のTouchPadの売れ行きはどうだったのだろうか?米家電小売最大手のベスト・バイでは、約27万台のTouchPadを販売予定として入荷していたが、わずか2万台程度しか売れていなかったらしい。TouchPadの2種類のモデルは、「メモリー 16GB版:499.99ドル」、「同32GB版:599.99ドル」で発売されていた。webOSの撤退を受けて、1台99ドルという投げ売り価格での値下げを行ったところ、皮肉なことにTouchPadはベストセラーとなった。「もうHP社のTouchPadを購入できなくなる、HPのロゴの入った製品がなくなってしまうかもしれない」というマニアやギーク達の購買意欲心理をくすぐったのであろうか。HPのオンライン・ストアでは、全モデルが売り切れ状態となった。ベスト・バイでもほぼ完売した。アマゾンの電子機器ベストセラー・ランキングでもTouchPadが1位となった。その他の小売店でも、売り切れが続出しているらしい。しかし1台99ドルではHPにとっては利益にならない。皮肉なことである。
もはやコモディティ化してしまったPC事業については、分離した後、どうやって生き残っていくのであろうか。IBMもPC事業は中国のレノボに売却した。HPのPCはコンパックやDECなどアメリカのPCメーカーが合併しあってできた「寄せ集め企業」でもある。差別化が難しくなってきているPC生産において一体どこの企業が現在のHPのPC事業を引き受けるのであろうか。まさに瀬戸際に立たされている。
続いてwebOSだが、HPは、「これからもwebOSソフトウェアの価値を最大限に生かす道を探し続けていきたい」と述べている。一部の報道ではサムスンが買収するのではないかとも報じられている。現在のAndroid、Appleが席巻しているスマートフォン・タブレット市場でwebOSをどこの会社が引き受けるのかは注目していく必要がある。
アメリカの報道や論調、ブログを見ているとグーグルによるモトローラ・モビリティの買収について
は、好意的な意見が多い。背景に特許問題があることや、他メーカーへのAndroid OSの提供を考慮すると、賛否両論の意見はあるが、グーグルがモトローラを救ったという見方をしているアメリカ人が多いように見受ける。グーグルによるモトローラの買収はアメリカもまだ「ものづくり」を捨てていないという見方をされている。一方で、先行きの見えないHPについては非常に悲観的な論調や記事が目立つ。IBMが中国企業レノボに買収された過去の例や、今回は韓国企業であるサムスンへの売却説が浮かぶ中で、アメリカ人としての自国メーカーへの激励の裏返しなのかもしれない。今後のHPの事業の行方にはアメリカのみならず世界が注目している。
スマートフォン、タブレットの市場においてはもはやハードウェア生産だけでは、差別化および市場での生存競争が厳しくなってきていることが理解できる。かつては「OS+ハードウェア」のセットを握ることが市場での競争力に繋がるのではないだろうかと考えられた時があった。
さらに、市場で受け入れられているのは「OS+ハードウェア」だけでなく、アプリケーションが充実していることであると理解できる。
メーカー |
OS |
他メーカー への OS提供 |
ハードウェア |
アプリ |
---|---|---|---|---|
Apple |
iOS |
× |
自社製品(iPhone、iPadなど) |
◎ |
Android | ○ |
モトローラ |
◎ | |
RIM | BlackBerry | × |
自社製品(BlackBerryなど) |
△ |
Microsoft | Windows Phone OS |
○ |
ノキア+サムスン、HTCなど |
○ |
サムスン | bada OS |
× |
自社製品(waveなど) |
△ |
HP | webOS |
× |
自社製品(TouchPadなど) |
× |
今回のwebOSは、HPの「OS+ハードウェア」で成功するのではないか、と期待されていたが、実際にはうまくいかなかった。果たして、今後は「OS+ハードウェア」を生産する企業らもHPと同じ道を辿ることになるのだろうか。そのカギを握るのは、そのOS上で動くアプリケーションとハードウェアのデザイン、ユーザインターフェースなどのエコシステムがうまく循環するかどうかだろう。
残念ながら、webOSとTouchPadではそのエコシステムがうまく回らなかった。今後、メーカーは「OS+ハードウェア」だけでなく、いかに優れたアプリケーションを有するプラットフォームを提供して消費者を引き付けられるかが生存競争のカギになるだろう。またOSを持たないモノづくりのみに特化したメーカーはいかに利益率を高く生産するかがカギになるだろう。
世界のメーカーの動きは、HPの今後の事業と同様に注目していく必要がある。
※本内容は、2011年8月31日時点のものである。
佐藤 仁
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