2012年3月27日掲載

2012年2月号(通巻275号)

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コラム〜ICT雑感〜

「半分だけ正しい」常識〜ビッグデータ時代を考える

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 数年前、思考系のある講師の薦めで「事実に基づいた経営(Hard Facts)」(ジェフリー・フェファー、ロバート・I・サットン著 東洋経済新報社刊)という興味深い本に出会った。「半分だけ正しいが半分だけ間違っている」常識に捉われず「データにもとづき自分の頭で考えろ」という至極あたりまえの結論を愚直に、また多様なケースで論じている。例えば、カジノにおける収益力の向上は、業界の常識とされた家族連れではなく、むしろ引退したか引退しかけている比較的年齢層の高い層をターゲットにすること、この層へのプロモーションは一般に行われているホテルや食事の割引ではなく、無料チップが有効であること。他にも大リーグやNFLの事例や、経営戦略論の半分だけ正しい常識等、具体的でわかりやすく大変示唆に富む本であり、是非一読をお勧めしたい。

 はからずもIT業界では「ビッグデータ」が流行の兆しを見せている。センサー技術やデバイス、情報処理や情報通信等の各分野におけるテクノロジーの発展、それに伴う性能の大幅な向上、破壊的な価格低下により、莫大なデータを収集して分析でき、これを導入すれば新たなビジネスモデルの構築や経営革新が可能といううたい文句である。確かにデータの種類(幅)と量が増え、よりスピード感をもって、データに基づいて判断するにあたって有効な技術(道具)であるという意味で画期的であることは勿論であるが、ここにも「半分だけ正しい」常識が隠されている。

 インテリジェンスの世界では、情報を「(1)収集」「(2)分析」「(3)評価」「(4)利用」のサイクルと定義することが一般的である。ビッグデータに関わるテクノロジーは、(1)収集に関わるソースと手段(幅と量)が増え、かつコストを大幅に削減できることが特徴であろう。次いで(2)分析稼働を軽減し、(3)評価、(4)利用にいたる意思決定(や部分的な自動化)の一助となることは間違いない。ところがこのサイクルを回す前提として、なんらかの「筋の通った理論や仮説」があるはずで、それによって「収集」すべきデータがきまる。あたりまえの話だが、ビッグデータの時代になっても「筋の通った理論や仮説」がなければ、的外れの(場合によっては誤った)分析しかできないわけである。これはペタバイト級の処理が可能となっても変わらない。どう解釈するかという評価、利用のステップにいたっては言うに及ばずというところか。結局、労働集約的な単純作業や手間は省略できスピードが上がったとしても、データに基づき「自分の頭で考える」ことの重要性は何ら変わらないわけである。

 かつて「DWH(Data WareHouse)」が流行った時期がある。各種DBからETL(Extract Transform Loading )ツールを使ってデータを引き出し、DWHを構築してBI(Business Intelligence)で分析するという代物であった。この技術をうまく使いきったすばらしい企業もあるだろうが、なかには大量のハードとソフトを買ってはみたもののという企業も多いことだろう(まさに筋の通った理論や仮説がないケース)。

 いずれにしてもテクノロジーの発展は重要であることは間違いない。しかしながら最新のテクノロジーを使いこなす前提として、「半分だけ正しいが半分だけ間違っている」常識を疑う目を持ち、データに基づいて考え、常に本質を問い続ける重要性を忘れたくはないものである。

企画総務グループ/情報サービスグルーブ部長 田川 久和

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