2012年8月24日掲載

2012年7月号(通巻280号)

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InfoComモバイル通信T&S

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巻頭”論”

当社情総研の「経営理念」〜複眼的アプローチでインテリジェンス・レポートを作成

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6月の株主総会シーズンが終了し、企業トップが交代して新しい経営体制となった会社も多いかと思います。新体制の下、新しい経営方針が示されることでしょう。当社情総研では大きな変化はありませんが、改めて皆様に私達がどのような考え方でクライアントの皆様や関係の方々に対して事業活動に取り組んでいるのか、当社の「経営理念」について御理解を頂いておきたいと考え、今月は標題のテーマといたしました。少し内向きなテーマとなりますことをお許し下さい。

当社の経営理念には2項目があり、第1は“リサーチ活動等のビジネス・社会公共の場での実践・貢献”をあげています。これは、情報通信分野を専門とするシンクタンクとして、リサーチ、コンサルティング、情報発信・提言等を通じて、お客様の事業の発展と業務の改善に寄与するとともに、社会の発展や課題の解決に貢献しようとするものです。具体的な研究員の活動では、インテリジェンス・レポートを作成することを目指しています。つまり、経営判断の任にあたるリーダーに対し、近未来に向けて一歩を踏み出す者の足元を照らし出す力を有するレポートを心がけているということです。

経営理念の2番目は、“情報通信サービスの提供者・利用者両サイドからの複眼的アプローチ”で す。情報通信サービスのリサーチや分析・評価を行う際、多くの場合、ともすればクライアント側、すなわちサービスの提供者の立場で結論を導き出すことになりがちですが、サービスである以上、その利用者の眼を大切にして複眼的に物事を判断してレポートしていく姿勢を表わしています。我が国における情報通信産業の発展に貢献することと情報通信サービスの利用者のお役に立つこと、同時に両方を目指しています。

以上の2点の経営理念の下、これからもリサーチ、コンサルティング、アドバイス機能を発揮し、また世の中に向けた情報発信や提言に努めていきますので、どうぞ御理解のほど、お願いいたします。

このような(1)インテリジェンス・レポートと、(2)複眼的アプローチの観点から見て気に懸かることが最近ありましたので指摘しておきたいと思います。それは、東京電力が機器の調達を進めているスマートメーターの仕様についてです。既に、結果的には見直しが進められているところですが、同社は、スマートメーターのデータ伝送(通信)方式に関して、上部のインフラ側、下部のホーム側とも独自仕様にこだわって既存の通信インフラやIP技術の活用を避けたり、国際的な標準に基づかない方式を目指したりで、オープンな開発の方向となっていないところがありました。こうした姿勢は、リーダーの判断を危うくすることにつながり、また、利用者の立場からは到底受け入れられないものであったことは当然でした。結局、さまざまな方面からの公募意見を踏まえて6月中旬には、コスト削減の観点から仕様を大幅に見直す方向で検討に入ったとのことです。さらに、そもそも電力計メーターは、電力会社間の仕様統一が図られておらず、スマートメーター化の時代となっても相変わらず電力会社間不統一のままで進展することが危惧されるところです。

電力システムの見直し・再構築が喫緊の課題となっているなか、サービス提供者だけでなくサービス利用者の視点も十分取り入れた方策が実施されることを期待したいところです。そこにこそ、新しいサービスや産業の芽があると信ずるからです。各家庭・各組織の電力使用量という個人情報・企業機密に属する情報管理が求められるが故の独自仕様では本末転倒です。情報の安全性を確保しながらネットワークやIP技術を活かす拡張性が求められます。

残念ながら通信の世界でも、こうした独自仕様の発想があったことは否めません。数多くの失敗例があったことも認めなければいけませんが、通信やITの世界ではオープン化がベースとなって、新しいサービスや競争が進展したこともまた事実です。特に、モバイル通信の世界では世界各地域でのエリアカバーが確保されるにつれ、デバイスやセンサーと一体化した通信モジュールなど国や通信事業者を越える製品やサービスが一般化しつつありますので、利用者の立場からは汎用性と機能の拡張性の両方が強く求められています。例えば、世界の主要国・地域で開始されているLTE(3.9G)に関しても、FDD方式とTDD方式との2系統が存在し、なおかつ、周波数についても複数の組み合わせが一本化されていませんので、結局、利用者不便が残される可能性があります。利用者の立場に立った標準化、統合化が望まれます。

我が国の通信市場規模は既に上位ではなく、また、日本のICT経済においても通信機器やコンピューター類は輸出より輸入の方が多くなっていて、国際競争力係数(貿易特化係数)は△0.4〜△0.6まで低下しています。従来以上に一層のオープン化、オープン・イノベーションに取り組む必要がありそうです。私達、情総研も「経営理念」の基本に立脚して、複眼的アプローチに基づくインテリジェンス・リポートを提言していくつもりです。

株式会社情報通信総合研究所
代表取締役社長 平田 正之

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