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生まれ変わる電話ボックス:ニューヨークの「スマートスクリーン」携帯電話やスマートフォンの普及により、公衆電話ボックスおよび公衆電話ブースは過去のものと見なされるようになって久しい。しかしながら、固定電話会社によって整備された一大インフラを再度活用し、第二の人生(?)を歩ませようという動きもある。本稿では米ニューヨーク市での試みを紹介し、その可能性を考察する。 公衆電話を置き換える「スマートスクリーン」ニューヨーク市当局は2012年11月20日、市内にある公衆電話を、大型情報端末「スマートスクリーン(SmartScreen)」に移行させる計画を正式に開始すると発表した。同市の計画では、数週間のうちにユニオンスクエア周辺の電話ブース20基に「スマートスクリーン」を設置し、2013年初めまでには市内全5区で250台を設置する。最終的には、屋外に設置されている公衆電話12,800台全てを「スマートスクリーン」に置き換えることまで視野に入れている。 「スマートスクリーン」は32インチの大型タッチパネル、マイク、スピーカー、ビデオカメラなどを備えた情報端末で、有線でインターネット接続している(【写真1】)。使用料は無料で、運用コストはスクリーン下半分に表示される広告収入で賄う。開発したのはCity24/7という会社で、インフラはシスコシステムズ、スクリーンはLG電子の協力を得ている。ニューヨーク市は今年4月に「スマートスクリーン」計画を打ち出し、数ヶ月のパイロットテストを経て正式に推進することを決定した。
【写真1】電話ブースに設置された「スマートスクリーン」(右側)
レストラン探しから緊急通報までCity24/7によると、「スマートスクリーン」ではレストランや店舗の検索、旅行者向けのアトラクション検索、交通情報、緊急警報(ダイヤル911)、苦情申立(ダイヤル311)等を利用できる。 「スマートスクリーン」のメイン画面はwebサイト上に作られており(【写真2】、 また、画面の一番下には、視覚障害者向けのコントラスト変更、車いすで利用するためのスクリーンのチルト、他国語対応(スペイン語・ロシア語・中国語)などのアクセシビリティ、および警察や消防署への緊急通報用のボタンが、車いすでの利用を考慮してスクリーンの一番下に配置されている(【図2】)。 ![]()
【表1】「スマートスクリーン」のメイン画面から利用できる機能
緊急時の情報発信「スマートスクリーン」は緊急時に警報を発令することもできる。
上に掲げた防水・防塵・耐氷結性能は、粉塵の吹きつけ、水の噴流、雪、外部の氷結からも保護されることを示しており、言ってみればホースで水をかけて掃除できるレベルだ。
【写真3】「スマートスクリーン」による入場規制の案内
市民の安全をサポートする、進化した広告塔「スマートスクリーン」が持つ機能のほとんどはスマートフォンで実現できる。実際、City24/7ではメイン画面をスマートフォンからもwebブラウザーで利用できるようにしている。そうなると、わざわざ「スマートスクリーン」を導入する必要はどこにあるのか? 「スマートスクリーン」のポイントは、広告よりも公共サービス、特に市民の安全サポートにあると考える。【写真3】のような規制や警報の類いは、デジタルサイネージの利点を生かして、必要な地区に瞬時に表示させることができる。また、携帯電話を持っていない人や、災害等で携帯電話が使えなくなった場合などでも緊急通報ができるように、見た目以上に頑丈に作られている。「スマートスクリーン」がこのような機能を備えているのは、City24/7のCEOであるTom Touchet氏が前職のテレビ・プロデューサー時代に2001年の同時多発テロを扱ったニュース番組の制作に携わった経験と無関係ではないだろう。 日本と違い、欧米では電線が地中に埋設されており、街中に電柱がほとんど見られない。電柱に広告のポスターを貼る代わりに、欧米では大小の広告塔が存在する(【写真4】)。「スマートスクリーン」は、このような広告塔の役目を持ちながら、公共サービスと緊急時の情報発信や通報機能を兼ね備えた「進化した広告塔」となりうる。近年は日本でもデジタルサイネージが増えているが、他のサービスを取り込んだものはほとんど現れていない。ニューヨークでのこの試みが
【写真4】欧州の広告塔
清尾 俊輔 |
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