2014年2月18日掲載

2014年1月号(通巻298号)

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コラム〜ICT雑感〜

読み・書き・そろばん、ICT

「一年の計」ということで正月に書初め会場に出向くことが習慣となっている。子供から老人まで一新腐乱に書に向きあう姿は昔も今も変わらない。「読み・書き・算盤」とはよく言ったもので、「文字・文書を読むこと、内容を理解して書くこと、および計算すること、ならびにそれができる能力を持っていること(世界大百科事典 第二版)」の代表例である書は、年齢に関係なく老若男女に必要な能力だと考えながらの帰りの電車の中、前の座席で子供から老人まで全員がスマホを使っている姿をみて、今日の社会におけるインターネットの位置づけも、「読み・書き・算盤」と同様、年齢に関係なく必要な能力になりつつあり、故に幼少時からの教育の重要性を再認識した。

かつては子供たちが携帯やスマホをもつことに対して否定的な意見も多かった。例えば、(1)学生の本分はまずは学問の本質を知るために苦労して会得することだという「精神論」や、(2)ネットには危険なサイトも存在するので迂闊に青少年に触れさせるものではないという「臭いものには蓋をしろ」的な主張等である。ところが実際には (1)学問の本質を学ぶことは重要だが、適切な使い方をすれば、情報収集やコミュニケーションの手段としては極めて効率的であること、(2)誰でも大人になるわけで、その時になってリスクの蓋然性を理解していなければより重大な結果を及ぼすこと等もあり、今では否定的な意見は徐々に少なくなってきている。現実社会で多くの人が使っているということは、効率性とリスクを天秤にかけたうえで、有用だから使っているわけである。

そうは言ってもインターネット機器の特性として厄介な面があることは事実である。特にスマホの場合には携帯端末から進化したものではあるが、最早PCの小型版(画面が小さくて老眼の私にとっては辛いが)でおまけにネットにつながっていることが前提である。また外部環境の中で変化するスピードが速いテクノロッジーの中でも最もスピード感があるのがICTの分野で、技術的についていくのはその道の専門家でも努力がいることも確かである。

そこで何が必要な能力かとなるが、私は煎じ詰めれば「ネットモラルの理解」と「リスクとリスク対処への理解」と考える。さらに青少年という観点からは、家庭や学校等、社会での教育が重要となる。これら社会教育という面では、文科省や総務省等が主体となって、地域コミュニティー、学校・PTA、民間企業等が連携して既に数年前から実施されてきており、今年も1月末から「ネットモラルキャラバン隊」の名称で全国12カ所で実施される予定である。

どの時代にもいえることであろうが、新しいテクノロジーの導入やイノベーションが起こると、それに対する反動というものは避けがたいものである。例えば自動車が実用化された当時、「道路を傷め馬を驚かすと敵対視され、住民の圧力によってこれを規制する法律が成立し。。。人や動物に予告するために、赤い旗を持った歩行者が先導しなければならなくなった(Wikipedia─自動車より)」とある。インターネット革命がもたらしたICTの発展は今後も続くであろうし、社会経済全般の発展には必要不可欠な道具であり続けるだろう。日本経済の持続的な発展の土台という観点からも、地道ではあるが着実な青少年へのICT教育の普及に期待する。

(参考)

取締役 社会公共システム研究グループ 部長 田川 久和

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