ホーム > Global Perspective >
Global Perspective
2011年1月26日掲載

ソマリアで携帯電話送金サービス「Zaad」を反イスラム的として禁止

グローバル研究グループ 佐藤 仁
[tweet]

 アルカイダと連携していると言われているソマリアのイスラム過激派組織アル・シャバブは、同国内の携帯電話会社に対し、携帯電話を利用した「Zaad」と呼ばれる送金サービスを、2010年12月31日をもって、全面禁止するように2010年10月に命じた。
アル・シャバブによると携帯電話送金サービスは、「資本主義を助長し反イスラム的」であるとの見解からソマリア経済に対する欧米諸国の干渉を強めるとの理由で全面禁止するよう命じた。

 ソマリアは長年にわたり内戦状態が続き、現在はアル・シャバブが実効的に支配していると言われている。暫定政府軍との戦闘が続くソマリアでは、外国で暮らすソマリア人らからの送金が経済活動の大きな資金源になっていた。送金が停止され、戦禍に苦しむ人々の生活は益々悪化していることだろう。

 ソマリアには、国家が内戦状態で政府機能が麻痺しているため、電気通信に関する規制がないため、複数の携帯電話会社が存在している。ほぼ全ての携帯電話会社で、携帯電話送金サービス「Zaad」を提供している。同サービスは2009年に開始したばかり。
 携帯電話以外にも送金会社を通じた送金システムも確立しており、ソマリアへは外国から年10億ドルが送られているともいわれ、ソマリアのライフラインとなっている。(下記動画参照)

 携帯電話を利用した送金サービスはフィリピン、ケニア、アフガニスタン等の発展途上国では頻繁に行われており、海外に出稼ぎに出ている同胞が母国に送金するサービスとして有名でよく利用されている。

 2010年1月14日のBloombergの報道によると、今後ソマリア政府は通信事業者に対して課税、周波数管理・規制を行うことを検討しているようだが、まだ正確なことは明かされていない。日本や欧米の感覚では周波数の管理が整備されていないことに違和感を覚えてしまうが、現在のソマリアの状況を鑑みると相当に時間がかかるのではないだろうか。またどこまで実効性をあるかも不明瞭である。

 今後ソマリアで政情が安定し、携帯電話送金サービス「Zaad」の復活と人々が平安なる生活を祈願する。

ソマリアと携帯電話事情

 ソマリアと言えば、海賊が有名で、日本からも海上自衛隊の護衛艦がソマリアに向けて出航して警備にあたっている。
もともと漁民たちだったが外貨獲得の為に海賊を行い、現在では1隻につき、約100万ドルの外貨獲得源と言われている。
1991年から内戦が続いており、2005年に暫定政府が樹立された。但し現在の暫定政府は全土を実効支配していない。日本は暫定政府を承認していない。政治も経済も安定していない。
約140万人が国内避難民、約59万人が近隣諸国に難民として生活している。
通貨のソマリア・シリングは世界で最も価値の低い通貨の一つで、ドルが流通している。
(下記の送金ニュースを伝える動画でも、ドルで受け取っている)

(基礎データ)
首都:モガディシュ
人口:約913万人
面積:637,657km²
言語:ソマリ語、アラビア語
GDP:55億ドル(一人当たり約600ドル)
宗教:イスラム教

 ソマリアの携帯電話加入者数は約165万人で、普及率は約18%と低い(2010年9月)。3Gはまだ導入されてない。以下がソマリアの携帯電話事業者。
HorTel :シェア約42%
Nationlink:シェア約15%
Telcom Somalia:シェア約12%
Somafone:シェア約12%
Telesom:シェア約11%
Golis Telecommunications
SomTel

【参考動画:Zaadサービス紹介(Telsom社)】

【参考動画:ソマリア経済を支える送金に関するニュース】

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。