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Global Perspective 2011
2011年6月2日掲載

オランダ:「Hyves」にみる今後のSNSの方向性

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 世界のSNSは昨今、Facebookで席巻されている。2011年5月末日で、全世界で6億8,000万人の利用者がいる。そのようにFacebookが席捲している中、オランダではFacebookよりも人気のあるSNS「Hyves」がある。Hyvesがサービスを開始したのは2004年10月。2007年には、オランダで最も人気あるサイトにも選ばれた。

 2010年のHyvesの利用者は、約1,000万人。オランダでの人口普及率は約68%。Facebookの利用者は2011年6月で約428万人、人口普及率は約25.5%とのデータがある。

 オランダでも最近はFacebookの人気が急上昇しており、Google trendsでのアクセス数を見てもFacebookとは僅差になりつつある。Facebookに抜かれるのも時間の問題ではないだろうか。cosmoScoreの調査によると2010年末時点で、欧州18カ国のうち15カ国でFacebook利用者の方が他SNS利用より多い

 HyvesはオランダのSNSだが、サービスは英語でも提供している。だから世界中の誰でも登録は可能だ。私事で恐縮だが、筆者はHyvesがサービス開始した2004年にオランダに在住していた。そしてHyvesにも登録していた。オランダ人は英語が堪能でありオランダで生活するにあたってはオランダ語が話せなくても困らない。しかしSNSの中ではオランダ人同士はオランダ語でコミュニケーションをしている。その中には入り込めない。そのうちに疎遠になってしまい利用しなくなってしまった。

 HyvesもFacebookやTwitterの急猛追を受けてはいる中の2010年11月、オランダ国内のメディアグループTMGが買収すると発表した。

 さらにHyvesはSNSだけでビジネスを成立させるのは厳しくなったのであろう。「Hyves MobileというMVNOで通信事業にも参入した。オランダT-Mobileの回線を利用してHyves MobileのMVNO事業は2010年10月から開始した。Hyves Mobile同士の会話なら月1,000分の会話は無料で提供している。開始3日で 21,000人の申し込みがあったとの報道があった。オランダはMVNOが非常に盛んな国であるから、オランダではブランド力のあるHyvesにとっては新たな収入源として期待できるのではないだろうか。テレビ広告も頻繁に見られる。(下記動画参照)

 現在世界のSNSはほぼFacebookに席巻されている。2010年12月に発表された世界のSNSマップを見ても、世界のほとんどの国ではFacebookが利用されていることがわかる。(日本ではmixiが一番)

 今後、Facebookも含めて世界のSNSがどのような差別化をしてビジネス展開をしてくるのか注目していきたい。SNSは人が集まって成立するビジネスである。さらにSNSの世界は栄枯盛衰が非常に激しい業界である。SNS疲れといわれるように、登録していたが自然に足が遠のいてしまうこともある。いかにユーザを引き留めておくかも重要なカギである。2008年までは1位だったMySpaceもFacebookの台頭によって、アクセス数も売上も大きく減少したとの報道があった。
自国(特にオランダのような小国)に特化したHyves のようなSNSの戦略やビジネス展開は日本のmixiやGREEのようなSNSも参考になる部分はあるのではないだろうか。グローバル化社会においては、もはや自国だけにとどまったSNSでは言語やコミュニケーション文化、アプリケーションビジネスなどで限界があるだろう。今後自国SNSは、SNSとして世界市場に進出していくのか、またはmixiのように韓国、中国、ドイツのSNSと連携していくのか、HyvesのようにSNSの特性を活かしたMVNOのような新事業に参入するのか。Facebookが市場を席捲しつつある中、自国SNSは大きなパラダイムシフトの時期を迎えている。今後の各自国SNSサイトの動きに注目していきたい。

(参考サイト)
Hyves
Hyves Mobile

【参考動画:Hyves Mobileの広告(2010年)】

【参考動画:HyvesがMVNOに進出することを伝えるニュース(2010年)】

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