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Global Perspective 2011
2011年6月14日掲載

デジタルフォトフレームサービス

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 今回はデジタルフォトフレームサービスについて考えてみたい。

 日本でも数年前から、各通信事業者がデジタルフォトフレームを販売している。携帯電話から写真を送信して、専用のフォトフレームで写真が表示されるサービスである。
スマートフォンのようにメディア等では、大きく取り扱われたりはしない。2009年にソフトバンクのテレビ広告で武田鉄也が竜馬に扮してPhoto Visionの宣伝をしていたのを覚えている人もいるだろう。

 日本の通信事業者が提供するデジタルフォトフレームサービスは下記の名称で提供されている。

 海外の通信事業者のデジタルフォトフレームの動向に目を転じてみたい。
アメリカでは多くのデジタルフォトフレームがあるが、Pandigital 社が提供するデジタルフォトフレームが有名である。2010年1月から、AT&Tが同社のPandigital Mail8を提供している。2011年1月現在、119ドルで購入できる。仕組みは基本的に日本と同じで、AT&Tのユーザが携帯電話で取った写真をメールに添付してデジタルフォトフレームに送信するサービスである。2008年にはデジタルフォトフレームのシェアは11%だったが、今後はもっと広く普及していくだろうと、アメリカPhoto Marketing Associaion Internationalは予測している。
2011年4月20日、AT&Tは2010年1Qに160万台の電子書籍・デジタルフォトフレーム等の端末を販売したと発表した。

 また2010年7月20日には、オランダKPNもPandigital のデジタルフォトフレームをM2Mサービスとして、欧州での普及に提携すると発表した。KPNは、欧州32カ国でこのサービスを海外ローミング費用なしで提供を予定しているとのこと。

 欧米人は家族や友人らとの写真をフレームに入れて、家庭や職場デスクにたくさん置いている人が多い。また、欧州では、スペイン人がドイツで働き、オランダ人がフランスで働くことは珍しいことではなくなっている。このサービスを利用して写真が手軽に送信できるのはコミュニケーションも取りやすくなるだろう。今後多くの家庭、職場のデスクにデジタルフォトフレームが並ぶことになるかもしれない。
KPN社をはじめ海外の通信事業者は、本サービスを”M2M”(Machine to Machine) のソリューションと位置付けているが、デジタルフォトフレームサービスは、送る人がいて、受け取る人がいる “H2H”(Human to Human) なサービスではないか。

 オランダを始め欧州では、携帯電話の加入者率が100%を超えている国がほとんどで飽和状態である。一人で複数のSIMを保有しているのだ。全通信事業者のSIMを持っていて使い分けている人もいる。そのような状況の中、デジタルフォトフレームは新たな通信事業者のビジネスチャンスとして捉えられる。

 2010年11月1日、ドコモは同社の「お便りフォトサービス」技術を韓国KTに展開すると発表した。今後、韓国のようなアジアの通信事業者も携帯電話加入者が飽和する中で新たなビジネス創出をする必要がある。デジタルフォトフレームが果たす役割は大きくなっていくのではないだろうか。
2011年1月13日からソフトバンクは「フォトビジョン法人パック」をリリースした。フォトビジョンの一括管理が可能な「法人フォト管理サービス」を利用できる、法人専用のフォトビジョン向け料金プランである。法人市場をターゲットに絞った興味深い展開を始めた。今後、デジタルフォトフレームを用いての今後のB2BまたはB2Cの活用事例に注目していきたい。

 携帯電話に搭載されたカメラ画素数もより良くなってきている。日本では現時点ではあまり目立たないが、今後サービス進化の余地は多いにあるだろう。一方で料金プランがわかりにくい、設定がわかりにくい等のユーザの声もあるだろう。それらへの対応を行いながら、誰でも簡単に利用できるようなサービスになることを期待したい。
飽和した携帯電話市場とネットワークの大容量化が進む中で日本だけでなく世界市場でのデジタルフレームサービスの新たな役割と動向について引き続き注目していきたい。

*本情報は2011年6月13日時点のものである。

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