このテレビ欲しい!
CES会場のメインホール、扉を開けた一番手前のVIPなブースで、インテル(パソコンとか買うと‘Intel’というロゴを見たことがあると思う)が人を集めてなにやら説明していた。いったいなにをしているのか?お姉さんがリモコンを動かすたびに、テレビに映った四角いボックスから見たことのある顔が流れてきた。「グリッソム・・・」僕の好きなドラマ、CSIが放送されていた。CSIの舞台はCESが行われているラスベガスだ。
「あぁ、テレビの画質のデモか・・・」立ち去ろうとすると、お姉さんはリモコンで映画を買ったり、天気予報を見せてくれる。画面の上に目をやると、「ウィジェット・テレビ」の文字。「ウィジェット?インターネットがテレビで見れるん。ふーん」
ウィジェットは、ブログパーツやガジェットと呼ばれている。ヤフー!ウィジェットに行くと、時計、カレンダーがデスクトップに映せて楽しいよ〜なんてことが書いてある。いったいどーやって作るのか?は、ちょっと調べただけではちょいわからなかった。
CESで見たウィジェット・テレビは、そんなレベルをはるかに超えていた。例えば、デスパ妻を1チャンネルで見ていて、前回どうだったっけ?って思ってすぐリモコンを動かすと前回のデスパ妻が見れちゃう感じだ。それも、なんか機械を買ったりすることなく、リモコンでワンタッチだ。
今でも間違ってデータ「d」なんてボタンを押してしまうと、画面が小さくなって、大リーグの日本人選手の結果とか、近所の天気予報が見れたりする。まぁタマに見たりして知ってても損はないけど、他でも見れるし・・・
ウィジェット・テレビは、そんな付録情報ではなく、ドラマそのものがズバリ見れてしまうスグレものだ。深夜2時にならなくても、まぁなっていても好きな時間に、録画しなくても、24が見れる。とにかく、リモコンで8を押さなくてもドラマが見れる。
こんな便利なテレビ、欲しくないですか??
テレビに動画をウィジェットで、その手があったか!
便利なテレビの秘密は、テレビに搭載されたインテルのCE3100というチップ(パソコンやテレビを動かす部品)にある。その部品が、ドラマを見ている画面の上に、独立したウィジェットを動かす役目をしている。
ウィジェット・テレビは、インテルの作戦と粘り勝ち(かどうかはまだわからないけれど・・・)のシロモノだ。インテルのお客さんが、パソコンだけでなく、テレビにまで広がることになる。
インテルは、チップをコンテンツ付きで売る。パソコンにチップを売るときは、マイクロソフトと仲が良かった。マイクロソフトの製品ウィンドウズの名前にちなんで、「ウィンテル」という言葉が生まれたくらい。今回、テレビ用のチップを売るときは、ヤフーがパートナーだ。
ヤフーの役割は、「Widget TV Gallery」の運営。「Widget TV Gallery」は、フリー、オープンな仕組みで、ウィジェットを作るソース(ルールみたいなもの)は一般公開され、作品の内容が普通だったら、誰もがこのGalleryに申し込んで自分の作品をテレビに流せることになる。テレビ局のプロデューサーに営業しなくても良い。
現在は、CBS、Flickr(写真)、MySpace(ミクシィみたいな)、Cinema Now(ディスカスみたいな)、Joostといったコンテンツを集めている。
これは、いよいよ日本でも見たい!
テレビもガラパゴス化するのか・・・心配
CESでウィジェット・テレビの展示を見て、ひとつ気にかかったのが、パナソニックのテレビでウィジェット・テレビが見れなかったことだ。
なんで?・・・ヤな予感・・・
いち早く、新しい製品を出してビックリさせてくれるのが日本のメーカーじゃなかったのか・・・そのおかげで、留学先や旅先で「ジャパニーズ、頭いい」なんて言われて気分よかったのに。先輩たちのおかげだった・・
10年前、留学したアメリカの学校では、車、レストラン、注射器、建設機械、消費財、あらゆる日本の会社の武勇伝を教えていた。日本企業が革新的なサービスでいかに米国企業のシェアを奪っていったか、という授業を延々としていたのだ。
ウィジェット・テレビを作らないテレビメーカーって、その米国企業と同じじゃない??
学校でケース(教科書のような)を読んでてカッコイイ!って思ったもんだ。Disruptive Technologyは、Nipponの会社のためにあったのではなかったのか。イノベーションのジレンマ(クリステンセン・・・またか)がここにも。イキのいい若手の提案も、「はぁ、ウィジェット?!」なんて感じなのか。先輩たちの頭はカタくなってるのだろうか。大企業ってのは、世代間闘争の場でもある。世の中に変化がなければ、先人の知恵も生きるんだけど・・・
パナソニック(CES2009)
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パナソニックは、自社独自に、YouTubeとかアマゾンのビデオストリーミングとかFlickrも見れるようにしている。
先日、電機屋さんをブラついてたら、東芝担当の人が、「お客さんもやっぱり、当社に行き着きましたか?」といきなり話しかけられた。その人が言うには、「テレビはなんだかんだいって画質!画質がキレイじゃなければそもそもテレビ見たくないですもん。画質がキレイで、パソコン1台分ついてるから、東芝売れてるんです」ということだった。しかし最高のZシリーズでも、インターネット動画はまだ見れない(画像・静的ページは見れる)。それでも買いますが・・・
高画質も嬉しいけど、日頃インターネットとかケータイとかいじってわかった、好きなときに好きな番組が見れる(オンデマンドと呼ぶこともある)楽しみも欲しいんだよなぁ。
日本国内だけは、どんどんテレビが高画質化されて、その実、Huluもウィジェット・テレビも楽しめないなんてことになるんだろうか。テレビもガラパゴス化してしまうんだろうか・・・アクトビラがあるけど、ウィジェット・テレビのほうが断然オシャレだ。
リモコンで「d」ボタンを押すと、画面が小さくなるのって、放送コンテンツに違う情報を重ねてはいけないという規定があるらしい・・・たぶん・・・「事故と勘違いする場合もある」なんてことから決められたルールだろう。これって、ウィジェット・テレビを見せない理由に使われそうな気がする。
インターネットのイノベーション=Tsunami 実感
ガラパゴスは、Tsunamiによって穴が空くんだろうか。Tsunamiは、あっという間に目の前に迫るよ。
インターネットのイノベーションは、欲しいものを世界の誰かが作ってくれる、というところにある。作ってくれる人が多いので、どんどん新しい波が生まれる。
2007年秋に、ロサンゼルスに取材に行ったとき、ウィジェットってオモシロイ!って感じだった。それが、この秋にロスに行ったときは、広告と動画を一緒にバラまいたらいいんだよと言っていた。それが、3ヶ月後にテレビで見れるようになっているなんて・・・。僕の作る資料もいまや3ヶ月が寿命だ。グスン
テレビ局(アメリカの)も2007年くらいまでは、ネットでプロモーションして、木曜22時にはテレビの前に座っていてくださいね、という幻想を抱けた。2008年Huluが成功してからは、もうテレビとインターネット、2本立てで行こう!って感じだ。それが、ウィジェット・テレビになったら、時間編成もいいけど、オンデマンドもよろしく!ってことになっている。
テレビ画面は、コンテンツを持っている会社(テレビ局だろうが、映画会社だろうが)の活躍するグラウンドであり続けるだろう。しかし、放送波、編成、枠売り広告、いままでのルールは変更されていくだろう。
ディズニー-ABCのアン・スゥイーニー社長は、「我々は、番組をどれだけ見られているかで広告を売るのをやめました。その代わり、広告自体をどれだけ見てるかで販売していきます」と言っていた。
「社会は変わってしまった・・・新たなルールで頑張る」ということだろうか。消えた獲物(ここでは若年層世代のこと)は、自分で探さないと・・・能動的ですね。
まぁ、とにかく新しいことが次々と起きているってのは楽しいことです。