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2012年8月7日掲載 |
米国のIEE(Institute for Electric Efficiency)が2012年5月に公開した資料” Utility-Scale Smart Meter Deployments, Plans, and Proposals”によると、米国におけるスマートメーターの導入は比較的順調に進んでいるようだ。 米国におけるスマートメーター導入状況2012年5月時点、米国では約3600万台のスマートメーターが導入済みとなっている。これは米国の全世帯の3分の1に相当するとしている。さらに今後も導入は進み、2015年時点では、約6500万台のスマートメーターが導入済みとなると予測している。これによって、米国の全世帯数の半数以上にスマートメーターが設置されることになる。 このようにスマートメーターの導入が進んでいくと、期待されるのがエネルギー利用データを活用したさまざまなビジネスだ。スマートメーターから取得されるデータを活用する動きは、いわゆる「ビッグデータ」の取り組みとして期待されている。 エネルギー利用データをダウンロードできるGreen Buttonの動きそのような中、米国ではエネルギー利用データを簡単・安全にダウンロードでき、そのデータを活用することができる仕組みとしてGreen Buttonという取り組みが行われている。Green Buttonの取り組みを既に行っているユーティリティのユーザは、各社が提供しているWebポータルなどに登録することで、自らのデータをダウンロードすることができる。 例えば、カリフォルニア州に本社を置くユーティリティであるPG&E(Pacific Gas and Electric)のWebサイトを見ると、下記のようにエネルギー利用の「見える化」サービスなどを利用できるMy Energyというサービスにログインすることが求められる。 ![]() 出所:http://www.pge.com/myhome/myaccount/using/thegreenbutton/ ログイン後、ユーザはXML形式で自らのエネルギー利用に関するデータをさまざまな形式でダウンロードすることができる。ダウンロードしたデータは、エネルギー省(DOE)がスポンサーとして名を連ねているOpenEIというWebサイトで公開されているアプリを利用して分析することができる。OpenEIでは、現在51のWebアプリと14のモバイルアプリが公開されている。 ![]() 出所:http://en.openei.org/apps/?keyword=Green%20Button%20Apps Green Buttonの可能性と国内の動きこのGreen Buttonの仕組みを採用しているユーティリティは、2012年7月末時点で5社、取り組みを行うと宣言している企業が17社おり、これらの企業の顧客数は約2700万世帯にのぼると言われている。 これだけの潜在的なユーザが、自らのエネルギー利用データを自由に使える(あるいは今後使える)状況にあるという点で、Green Buttonの取り組みは大きなインパクトがあると言えるだろう。 ただし、ユーザがわざわざダウンロードしなければならない点や、既に各ユーティリティが独自の「見える化」サービスなどを提供している点を踏まえると、現時点ではGreen Buttonの意義がそこまではっきりしないのも事実である。 今後、ユーザがダウンロードしてから活用するというフローだけではなく、ユーザに事前に許可を取り、自動的に他のサービスにデータをアップロードすることが可能になるなどのフローが追加されれば、より活用の範囲が広がる可能性があるだろう。 国内におけるエネルギー利用データ活用の動き翻って国内の取り組みを見ると、スマートメーター導入の取り組みを積極的に進めている関西電力は「はぴeみる電」という電力使用量の照会サービスを提供している。 また、2012年6月28日付の日刊工業新聞に掲載された東京電力の広瀬直己新社長へのインタビュー記事(「東電、スマートメーター活用した情報提供に参入」)では、東京電力自らスマートメーターを活用した情報サービス事業に乗り出すことを明言している。具体的なサービスの候補として、在宅医療や防犯サービス、見守りサービスなどの名前が挙がっている。 その後、7月12日に東京電力が公開した「スマートメーター仕様に関する意見募集の結果および「基本的な考え方」について」というプレスリリースでは、東電が行ったスマートメーターの仕様見直しの結果がまとめられている。その中で、新たに追加された項目として「将来サービスへの対応」という項目があり、「ガス・水道の共同検針」や「電力使用量の見える化サービス」、「ネガワットアグリゲーションビジネス」、「高齢者の見守りサービス」、そして「節電サービス・省エネアドバイス」などが例として挙げられている。 国内でも、今後、スマートメーターの導入が進むにつれ、電力会社をはじめとして、データを活用したビジネスへの参入を検討する企業が増えてくるはずだ。それに向けて、第三者も含めた企業がデータを活用しやすい仕組みに加え、ユーザが安心してデータを提供できるような仕組みなどを整備していく必要があるだろう。 |
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