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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<地域通信・長距離通信・国際通信>

「10回目を迎えたNCC3社の1995年度決算」

(96.06)

 DDI、JT、TWJの長距離系NCCの95年度決算が出そろった。2強と言われるDDIとJTは過去最高の売上と利益となり、2社に出遅れていたTWJも初めて売上が1,000億円を超えるという好決算であった。
  1. TWJは電話が健闘、DDIとJTの増収は携帯電話ブームが背景
  2. アクセスチャージ値下げが費用削減に寄与
  3. 利益の柱は電気通信事業
  4. 96年度は増収減益


1.TWJは電話が健闘、DDIとJTの増収は携帯電話ブームが背景
 売上の柱である電話収入はDDIは減収、JTは微増という開業以来初のさえない決算となった。TWJは95年3月末の全国拡大終了を契機とした積極営業を展開、新規獲得回線数も200万と3社中最多となり、収入も27%の伸びとなった。
 95年3月に料金値下げが実施されたが、これは年度末も迫っての実施であったため、減収要因としてはさほど影響していない。DDIとJTの低迷の要因としては、(1)トラヒックそのものがのび悩んだ。(2)企業ユーザが割引率の高い回線群割引に移行したり、公専接続やVPN等を利用するようになった。(3)家庭用ユーザもF&F型の割引サービスを契約したり、新規契約者の大半が契約と同時にこうした割引サービスを利用した。といった点が考えられる。
 専用は、95年10月の過去最大規模の値下げが大きく影響し、3社揃って減収という、初の事態となった。
 DDIとJTは、本業である電話、専用がともに伸び悩んだ反面、売上は過去最高という結果となったのは、電気通信事業以外の収入、つまり、セルラー電話やデジタルホンといった自社グループの自動車・携帯電話事業者からの販売手数料や、システム販売、設備建設等といった附帯事業収入が大きくのびたからである。爆発的なブームとなった携帯電話の販売台数の伸びやエリア拡大などが2社の増収に結びついた。

2.アクセスチャージ値下げが費用削減に寄与
 売上が増えれば費用も増えるのが普通であるが、DDI、JTは営業費用を縮減している。なかでも営業費用全体の4〜5割をしめる通信設備使用料は約1割削減されている。ここに計上されるNTTへのアクセスチャージの支払い額は2社とも200億円程度軽減されていることから、アクセスチャージの負担減が営業費用削減の最大要因であったといえる。
 経費といわれる営業費は営業費用の3割を占めているが、DDIは微減、テレビCMに積極的なJTは1割増、巻き返し中のTWJは2割増となっている。
 特に、TWJは施設保全費、減価償却費等といった設備拡充関係の費用も増加しており、この点でも他2社と異なる費用構造となっている。

3.利益の柱は電気通信事業
 DDIとJTの増収は附帯事業によるものであったが、営業利益に占める附帯事業利益はDDI18%、JT6.1%で、収益率も両社5%程度である。利益の柱は依然として電気通信事業である。売上面では伸び悩んだ電気通信事業であるが、アクセスチャージの負担減により費用が削減され、結果として増益となり、収益率も向上した。
 TWJは5年ぶりに営業ベースで黒字転換したが、電話の増収とアクセスチャージの負担減がプラスに作用した。しかし、営業外収支は悪化しており、57億円の経常損失と653億円の累積損失を抱え、債務超過が続いている。

4.96年度は増収減益
 決算に大きく影響するアクセスチャージは、96年4月からNCCの短時間通話に有利に働くセットアップチャージ付 秒課金に変更され、また県内市外通話にもコストベースのアクセスチャージが適用されるようになるため、(トラヒックに変動がなければ)NCCのアクセスチャージ負担額もより軽減される可能性が大きい。しかし、今年度は、通話料金・専用料金値下げが通年で影響することや、新たな設備投資計画により、DDIとJTの二者は増収減益を見込んでいる。
(通信事業研究部 戸田 敦子)

(入稿:1996.06)

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