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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<放送>

「CATV事業の本格的競争の幕開け」

(96.06)

MSOの設立や大手資本の事業参入などが積極的であり、CATV局の新設、系列化さらには同一地域内の競争などが激しくなりそうである。さらに、デジタル衛星多チャンネル放送の開始を目前に控え、一層期待と不安が増大している。
  1. 統括運営会社(MSO)と番組供給会社(MCO)の動き 
  2. 本格的な競争時代への突入
  3. CATVの将来と課題について


1.統括運営会社(MSO)と番組供給会社(MCO)の動き
1)統括運営会社(MSO)の設立
 日本においても統括運営会社(MSO)が、米国のCATV大手と日本の商社との合弁によって相次いで設立されており、現在3つのMSOとしてタイタス・コミュニケーションズ(伊藤忠とタイム・ワーナー(TW)などが設立)、ジュピター・テレコム(住友商事とテレ・コミュニケーションズ(TCI)が設立)、シーティ−テレコム(トーメンとコンチネンタル・ケーブルビジョン(CCI)との合弁)が設立されている。さらに、日本テレコムと日商岩井、三井物産が、新たな勢力として動き出している。何れも、国内でCATV局の新設ならびに系列化などを通じて普及の促進拡大に努力している。特に、双方向性を利用して、CATV電話事業への参入やマルチメディアの各種実験にも積極的に取り組んでおり、CATV網を新たな通信網に発展するべく期待されている。

2)番組供給統括会社(MCO)の設立
 住友商事と米国TCIは、日本初のCATV向け番組供給統括会社「ジュピター・プログラミング・ネットワーク(JPC)」を96年3月設立した。CATV局向けの番組供給統括会社は、マルチ・チャンネル・オペレータ(MCO)と呼ばれ、TCI傘下の米リバティ・メディア、英フレックステックや仏のカナルプルースなどの大手が存在する。今後1年半の間に、傘下に6社前後の専門番組供給会社を設立する予定。住友商事とJPCやゴルフメーカの出資でゴルフ専門チャンネルの「ジュピターゴルフネットワーク」を5月31日設立し、10月からサービス開始する予定である。

2.本格的な競争時代への突入
1)1地域複数事業者の進出
 これまで1地域独占が一般的であった都市型CATV事業で、1地域内で複数のCATV局を手掛ける例が増えている。96年4月15日の郵政省が設置許可したCATV局7局のうち、4局が広域展開の事業者である。現在までに許可されたCATV局では、4地域(横浜市戸塚区、埼玉県大宮市・上尾市・伊奈町、神奈川県逗子市、横浜市瀬谷区・大和市)で複数事業者が競合する。
 今後とも大都市内や周辺地域で、MSOや大手資本のCATV局の広域展開に伴い増加すると考えられる。CATV業界では、総じて反対の意向である。業界主導による一本化調整の可能性など探るため、「1地域2事業者問題」について協議する予定。
 いずれも、大都市部あるいはその周辺部において競合していることとMSOなどの新規CATV開局によって発生している。エリア内でのサービス競争が起きる方向での調整を期待したい。

2)MSOを中心にした系列化や業界の統廃合の動き
 CATV局の広域事業化や既存CATV局の経営権委譲などが続いており、MSOを中心にした系列化や業界の統廃合の動きもある。しかし、日本のCATVの経営母体に第三セクターが多いことや小規模エリアに特化された小規模経営であり、そのうちの相当数が赤字経営である。設備は放送の再送信を中心に構築されているため、双方向サービスをエリア内で本格的に実施する場合は多くの設備再投資が必要となる。このため、再編や合併よりも資本参加による系列化が今後とも続くものと思われる。

3)大手資本のCATV事業への参入
 MSOのほか、通信機器メーカ・通信事業者・電力会社・自動車メーカ・警備保障会社など資金力や技術力のある企業の参入や資本提携が積極的に行われている。
 それぞれの参入に対する考え方が企業により異なっているが、複数企業の提携によりマルチメディアの新たな事業化への実験や先行投資的な意味合いが多い。さらに多くの企業が参入するものと推定できる。
 富士通は、機器サプライヤとしてだけでなくオペレータとして活動も積極的に進めており、全国で12CATV会社に経営参加している。

4)デジタル衛星多チャンネル放送の開始
 デジタル衛星多チャンネル放送について、日本ケーブルテレビ連盟は当初基本的には反対との方針であったが、今年2月には「原則受け入れ」でDMCと合意した。CATV事業者にとって、脅威であり競合する相手ではあるが、番組ソフトの豊富な供給の点からも、番組の多様化とともに番組供給コストの低減にもつながることから、CATVと衛星デジタル放送の共存の道を探ることになった。
 当面は、CATVでの再送信が中心となり、CATVの多チャンネル化と番組コンテンツの多様化が進み、CATV加入者増につながっていくものと予測される。
 現時点で、最も注目される点は、料金と番組のコンテンツである。デジタル衛星放送の料金の設定しだいでは、CATVとの加入者争奪が起きる可能性がある。更に番組コンテンツとしては、米国等の有力番組供給会社の事業参入も相当増加する見通しもあり、番組の多様化やサービスの多様化に拍車がかかりそうだ。

5)NTTのケーブルTV参入問題を協議
 社団法人日本ケーブル連盟は、NTTの分離分割に伴うNTT各社のCATV参入問題やNTTのファイバー・ツウ・ザ・ホーム(FTTH)の第三者への貸与の問題について、NTTによる通信・放送の寡占化が進む恐れがあるとの認識にたち、6月の通常総会で連盟の態度を決議する方針を決めた。NTTや郵政省から聞き取り調査を行い、調査結果をベースに対応方針を決める予定である。NTTのCATV事業への参入問題は、加入者光ファイバー化や「通信と放送の融合」の流れから当然発生してくる課題であるが、NTT論議が1年間先送りされたため今後の動きに注目したい。

3.CATVの将来と課題について
 デジタル衛星放送の開始が本格的な競争の幕開けといえる。アメリカのように急激な普及の予測もあるが、番組の多チャンネル化やPPV(ペイパービュー)の発展などCATVの普及拡大の大きな力にもなる。4月8日の郵政省「放送高度化ビジョン(中間報告)」“2010年の放送”では市場規模が現在の6〜7倍の1兆3千億円と大きな飛躍が予想されている。新たなサービス領域の拡大や新たな資本の参入によるノウハウの結集などにより、より多くの競争が起きると考えられる。現在CATV事業者にとっての課題は、サービスエリアの拡大とエリア内の普及率の向上であり、ともに競争により早期に達成できるものである。競争が当然である事業となることが、現在最も重要な課題であるといっても過言でない。
(システム開発部 遠山 廣)

(入稿:1996.06)

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