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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<イベント>

「ビジネスショウ'96 Tokyo みてある記」

(96.05)

  1. 「有明」までの遠い道のり
  2. ビジネスショウ'96のキーワード
  3. ビジネスショウ'96概観
  4. トピックはモービルコンピューティング、ISDN、インター(イントラ)ネット
  5. ユーザーの情報環境は多様化の時代へ


1.「有明」までの遠い道のり
 「しまった。」、最初にそう思った。ビジネスショウの行われている有明の東京ビックサイトまで移動するために乗ろうとした新交通システム「ゆりかもめ」の新橋駅でのことである。券売機にならぶための列が延々と続いているのである。ざっと見渡すだけで200名、いや300名はいるだろうか。そのままUターンして帰ろうかと思ったが、気を取り直して列に並ぶことにした。待つこと20分、何とか乗車券を購入し、いざ東京ビックサイトへ向かう。

2.ビジネスショウ'96のキーワード
 ビジネスショウは日本の情報通信分野の展示会の中では比較的歴史の古いものである。ほんの数年前、PCを取りまく競争環境が今のように激しくなく、コンピューターネットワークがさほど重要視されていなかった時代には、各メーカともビジネスショウにあわせて最新機種をリリース、それを最前面におしだしたブースをたてていた。ビジネスショウはこれまでどちらかというとコンピューターセントリックな展示会だったのだ。しかしながら、今年はテーマを「ネットワークが育む 創造的ビジネスと豊かな社会」としており、時代の趨勢がコンピューターからネットワークへ移行している現状を意識したものになっている。

3.ビジネスショウ'96概観
 またまた昔の話で恐縮だが、数年前PCといえば、PC-9800シリーズのことを指していた。「98帝国」という言葉があったぐらいで(今もあるが)まさにパソコンといえばNECだった。Microsoftは黒幕に徹しており、表舞台に立つことはなかった。しかし時代は変わった。DOS/V、Windowsの登場によるアプリケーションレベルでの互換性の確立が引き起こしたPCハードのアーキテクチャーの抽象化とそれによる外資系企業の日本市場参入、Appleのコンシューマー市場参入、LANの一般化、インターネット・WWWによるマルチメディアネットワークの具現化、などである。要するに何が言いたいのかというと、もはやNECだけをみていればよいという時代は過ぎたということである。
 さて、今年のビジネスショウの出店企業を見てみると、NEC、EPSON、東芝など国内のコンピューターベンダーは出店していたものの、HP、COMPAQ、AppleやMicrosoftなど外資系のコンピューターベンダーはこぞって参加を見合わせていた。ネットワーク関連でもNovellやCiscoを始めとする主要各社は出店していない。結果として、InterropやWorld PC Expoなどの展示会と比較すると、力強さは感じられないものとなった。コンピューターセントリックな時代、98帝国の時代のビジネスショウから脱却し切れていない姿がそこにあった。秋の展示会ではこの点をクリアして頂きたいものである。

4.トピックはモービルコンピューティング、ISDN、インター(イントラ)ネット
 展示会場をまわってみると、最も目に付いたのが、PDA、パームトップPCといったモービル環境を意識した製品群である。主なところでは、PDAの代表選手ともいえるsharpのカラーザウルスやTFT液晶を搭載し、210x115x34mm、840gでWIN95環境を実現した東芝のパームトップPC「Libretto20」などが人気を集めていた。少し変わったところでは三菱のAMity SPとよばれるコンピューターが展示されていた。これは、ザウルスのようなペン入力タイプのPDAにキーボードなどの周辺機器を加えることによりデスクトップユースにも耐えられるようにしているものだ。オフィスとモービル、両方のニーズをみたすことを目的としているように感じられた。営業マンが外出先からこのコンピューターを使って必要な情報を取り出すためのシステム提案が同時にされており、ビジネスユースを強く意識させるものであった。
 NTTのブースではISDNを前面に押し出したプレゼンテーションを行っており、黒山の人だかりができるほどの盛況ぶりであった。また、NECではDSU内蔵のTA、Comstarzシリーズを3機種展示していた。価格は5〜6万円台であり、NTTのDSUが23800円+TA4万円程度〜といった現状を考えても悪くない選択肢であるように思われる。ISDN普及に必要な諸条件は急速に整いつつあるようだ。
 そのISDN普及の立役者ともいえるインターネットも今回のビジネスショウのトピックといえる。先述のカラーザウルスや「Libretto20」はWWWブラウザを標準搭載、インターネット対応は怠りない。注目すべきはこれまでPeopleなど他のパソコン通信サービスにインターネット接続に遅れをとっていたNiftyServeが同社のGUIベースの通信ソフト「Nifty Manager」を通じてインターネット接続をおこなえるようにするとアナウンスしていた点だ。9月末までにはWIN版、MAC版の対応ソフトが出そろうようだ。130万人以上の会員数を持つNifty Serveがインターネットとの接続を強化するということは、インターネットの個人利用者に対する垣根が一段と低くなることを意味しており、インターネットを取りまく環境が新たなステージへ進むことが予感される。

5.ユーザーの情報環境は多様化の時代へ
 このように見て来て感じられることは、ユーザーを取りまく情報環境はまさに多様化の時代を迎えつつあるという点だ。PDA、パームトップPCの進展によるユーザーの地理的、物理的制約からの解放、ネットワークの高速化による利用メディアの制約からの解放、パソコン通信とインターネットのシームレス化。我々は何処にいても、簡単に様々な情報を入手できる時代に直面しつつある。ユーザーの情報利用環境はまさにパラダイムシフトを起こしつつあるのだ。

(産業ネットワーク研究部 小原 靖浩:ohara@icr.co.jp)

(入稿:1996.05)

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