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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<移動通信>

「日本のデジタル携帯電話にCDMA方式導入の動き」

(96.06)
  1. CDMAとは?
  2. 日本におけるCDMA方式への取り組み


1.CDMAとは?
 世界的に見てみると、デジタル携帯電話の主流を成しているのは、欧州のGSM方式である。ただ欧州にとどまらず、アジア、中東、アフリカの各国で同方式の採用が広がっている。米国でもかなりの数の事業者が、新しくサービスが開始される予定のPCSサービス(1.9GHz帯を利用した移動体通信サービス)に、DCS-1900(GSMの1.9GHz対応版)を採用している。日本が現在採用しているPDC方式は日本独自のもので、他にこれを採用している国はない。
 ところが、将来GSMに取って代わってデジタル携帯電話の主流になる可能性を秘めている方式がある。それが、CDMA(=Code Division Multiple Access;符合分割多重アクセス)方式である。
 CDMA方式は、米国のクアルコム社(カリフォルニア州サンディエゴ)がライセンスを持っており、93年に米国電気通信工業会(TIA)がデジタル携帯電話の一方式として採択している。技術的には、まず、周波数の中に複数の情報を符合化して拡散の上で伝送する。その後、無線局側で混ざりあった情報の中から、自局に割り当てられた符合を読み取る仕組みになっている。
 CDMAと対比されるのが、TDMA(=Time Division Multiple Access;時分割多重アクセス)方式である。技術的には、周波数を時間ごとに分割した上で、圧縮した情報を伝送することになっている。欧州のGSMや日本のPDCは、TDMAの一方式である。TDMAではある周波数部分を1つの無線局が占有するのに対し、CDMAでは無線局が混ざりあった情報の中から必要な信号だけを取り出すようになっており、周波数が有効に利用できる点が利点である。
このようにTDMAより優れているとされていたCDMAであるが、技術上の問題からなかなか実用が開始されなかった。最初に商用化されたのは95年9月で、事業者は香港のハッチソン・テレコムである。続いて、韓国の韓国移動通信(KMT)が96年1月に、第2事業者の新世紀通信が96年4月に、商用サービスを開始した。本家本元の米国では、予定が大幅に延びていたが、96年5月にようやくベル・アトランティック・ナイネックス・モービル(BANM)とエアタッチが一部地域でサービスを開始した。また、ブラジルでも、商用化に向けた動きが進んでいる。
2.日本におけるCDMA方式への取り組み
 日本は1,000万を超える加入数を有する携帯電話大国であるが、現在の問題点として、加入者を収容する周波数に限界があることが挙げられる。これまで、携帯電話事業者は、セルの小型化及びハーフレート化によって、周波数の有効利用を図ってきた。最近の新しい動きとして、CDMA方式の採用が考えられている。
 IDO及びDDI系セルラー電話会社グループは、98年からCDMA方式を導入する予定である。それに先立って、両グループは96年9月頃から共同で、東京23区内で試験を実施する。電波が込み合う都心において、CDMAの有効性を確認するのが目的である。
 両グループは、最初はアナログ方式からCDMAに置き換えていく方針で、そのため、過渡期的にアナログとCDMAとのデュアルモード端末を用意し、買い替え時の割引等、移行がしやすい措置を取る。移行期間は、5〜7年を予定している。両グループは、また日本方式のデジタル方式であるPDCも採用しているが、最終的にはこれもCDMAに巻き取る方向である。
  一方のNTTドコモグループも、CDMAに対しては積極的な姿勢を見せている。NTTドコモは、4月8日、米国の移動体事業者のネクストウェーブ・テレコム(カリフォルニア州サンディエゴ)に、資本参加することを発表した。同社は、米国で行われたPCS(1.9GHz帯を利用した移動体通信サービス)用の免許競売の入札に参加し、5月6日、ニューヨークやロサンゼルスなど56の市場を最高額の42億ドルで落札している。同社には、クアルコム、ソニー、浦項総合製鉄(韓国)が出資している。同社は、PCSサービスにCDMA方式を採用する予定であり、NTTドコモの出資にはCDMA方式のノウハウの取得という意味もある。
 さらに、4月25日、同社は韓国の大手移動通信事業者である韓国移動通信(KMT)との技術交流の覚書に調印した。KMTは、96年1月からCDMAサービスの商用化を行っており、NTTドコモはこのルートを通じてもCDMAに関する情報提供を受ける方向である。
 NTTドコモグループと、IDO及びDDI系セルラー電話会社グループとでは、導入手法に関して違いがある。IDO及びDDI系セルラー電話会社グループは、既存のアナログ・サービスをCDMAに巻き取り、周波数の効率化を図る方針である。一方のNTTドコモグループは、既存サービスの周波数効率化には、あくまでも現在実施中であるPDC方式のハーフレート化でもって対抗する。NTTドコモが検討しているのは、将来割当が予想される 2〜3GHz帯の周波数帯での、いわゆるワイドバンドCDMAの導入である。ワイドバンドを利用してメガビット級の高速データ伝送が予想されており、データ伝送ですぐれているCDMAが適しているとされている。
(海外調査第二部:正垣 学)

(入稿:1996.06)

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