| |
「インターネット上の電子決済と | |
(96.08) | |
1.ECの進展 最近のインターネットの爆発的な普及状況から見ると、各企業にとっては今後、ただ単に情報発信するだけでなく、いかに商取引を電子的に行っていくかというECつまりエレクトロニック・コマースが、最大の関心事となってきている。 インターネットによるオンラインショッピングは95年の推定で日本で数億円、アメリカで約2億ドルと言われているが、弊社が運営しているECN(エレクトロニック・コマース・ネットワーク)上で行った最近の調査では、ここ半年間でオンラインショッピングを行った人は約3倍近くも増えており、ECは確実に進展していることが判る。しかしながら、さらにECが進展するためには、インターネット上での安全・確実な決済システムをどうやって普及させるか、電子マネーがどこまで普及するのかが、大きな鍵を握っている。そこで以下に、インターネット上で現在行われている各種の電子決済方式の最新動向と今後の課題について述べることとする。 |
2.クレジットカード型電子決済方式 現在、最もポピュラーな支払方法となっているのが、クレジットカードによる電子決済である。カード番号や氏名、有効期限などの情報をインターネットを利用し、送受信するものである。しかし、この場合、本人であるかの確認や、あるいはデータの内容が改竄されたりという問題が生じる。そこで、事前にIDを発行したり、暗号化技術を駆使してデータをやり取りするといった、ファーストバーチャル方式やサイバーキャッシュ方式などが一般に利用されている。クレジットカード支払いはもう既に世に浸透した支払方法であり、世界のどこの国でも、24時間いつでも利用できるという点はサイバースペースでの電子決済にも受け入れられやすいと考えられる。しかし、まず、カード会員や加盟店の登録が大前提であること、少額の取引には向かないこと、匿名性がないこと、個人間の支払いができないこと、手数料がかかることなどのデメリットもある。 また、最近の動きとしては、VISAとマスターカードが今年2月に「SET」と呼ばれる統一規格で合意をし、7月には改訂版を発表した。インターネット上でのカード決済の統一規格の国際標準として今後の主流になっていくものと思われる。 |
3.ICカード型電子決済方式 ICカード型の電子決済方式はモンデックスに代表されるように、通常の現金と同じように一般の店舗でも利用が可能であり、再現金化、他人への資金の移動が可能になる。ただ、日本においてはモンデックス方式を現行法でそのまま実現することは困難である。 他にもアトランタオリンピックでVISAキャッシュの実験を行ったり、国内でも通産省のEC実験プロジェクトでUCカードなどがICカードの実験に取り組んでいる。しかし、ICカード型の方式はコストの面で問題がある。カードや端末など新たなインフラを整備する必要があり、誰がコストを負担するのかといったことが大きなポイントにもなってくるであろう。 最近、モンデックスの経営者から、モンデックスカードによるインターネット上の決済に来年から対応できるよう開発中であるとのコメントもあり、今後、インターネットにも利用可能なICカード型の電子マネーの開発、実用化が急がれる。 |
4.電子現金型電子決済方式 電子現金型の電子決済方式としてはデジキャッシュ社が開発したeキャッシュが代表的である。既にアメリカのマークトウェイン銀行が実験をスタートしており、フィンランドやドイツでも実験が始められる。電子現金型では少額取引に向いており、個人間の支払いも可能になる。また、コスト的にも、パソコン1台あれば後はソフトの問題だけで、非常に低コストの運用が実現できると思われる。 また、現金に近い性格で利便性はあるが、犯罪組織などのにも悪用される可能性もあり、課題も多い。しかし、電子現金型の最大の特徴としては、匿名性が確保されていることである。通常の買い物でもいちいち全ての取引が誰かに分かることは好ましいことではない。個人のプライバシーの保護という観点からも、匿名性があることが重要になってくる。 また、NTTの開発した電子現金システムは匿名性があることの他に、個人間での資金移動や分割使用が可能であることなど優れたシステムであ。この秋から始めるECNの実証実験プロジェクトでこのシステムが実験され、日本独自の電子現金として今後の動向が注目される。 |
5.電子決済の今後の課題 様々な電子決済の方式がある中、電子決済の当面の課題としては、暗号技術の確立や認証機関の設置の問題の他、現行の法制度の整備が急務となってきている。関係各省庁で検討は進められているが、まだ具体的な段階まではきていない。関係機関や専門家、あるいは企業の研究開発部門との連携などを図って、できるところから整備していくことが重要となってくる。 また、どの電子決済方式が生き残っていくかは現段階では分からない。共存共栄とまではいかないが、当面はいろいろな決済手段が可能になり、その中からユーザーにとって、使い勝手の良いシステムが自然と残ってくるのであろう。国内外の実験プロジェクトの実験結果を充分に検討し、早急に安全・確実で、便利な電子決済方式が普及することを期待する。 |
(産業ネットワーク研究部 古村 嘉章)
(入稿:1996.08) |
このページの最初へ |
![]() (http://www.icr.co.jp/newsletter/) |
![]() |