トレンド情報
トレンド情報 -トピックス[1996年]
<海外>

「新通信法改正後の
ベル電話会社の合併を巡る動き」

(96.06)


 1996年4月1日、パクテル/SBCの合併、1996年4月22日、ベル・アトランティック/ナイネックスの買収による合併がそれぞれ発表され、ほんの1ヵ月の間に7つのベル電話会社がに5社に再編成(図参照)される見込みとなった。この合併の目的は、新通信法の改正により、事業機会の拡大、競争激化が予想される事業環境下で、合併によってシナジー効果(資金力強化、サービス提供エリアの拡大等)を実現し、生き残りを目指すことにある。

ベル電話会社が5社に再編された場合のサービス提供エリア

 しかし、残る3社(USウェスト、ベルサウス、アメリテック)は、必ずしも買収・合併によるシナジー効果が得られるとは考えておらず、また、上記の2社の合併についても、各州の規制機関が直ちに承認することはない等、合併までの道のりには険しいものがある。ベル電話会社各社の規模及び状況は以下のとおり。

ベル電話会社各社の規模及びその他の状況
規模その他の状況
パクテル
SBC
買収規模:167億ドル
年間収入:210億ドル
(2社合計)
アクセス回線数:3000万回線
●SBCがパクテルを買収する形で合併
●人口集中の著しいカリフォルニア州を長距離通信、国際通信、インターネットの拠点にする
●アジア(太平洋)及び中南米(エリアがメキシコに隣接)のゲートウエイとしての市場進出
●パクテルの取得しているPCS免許を利用
ベル・アトランティック
ナイネックス
買収規模:230億ドル
年間収入:265億ドル
(2社合計)
アクセス回線数:3710万回線
●ベル・アトランティックがナイネックスを買収する形で合併
●サービス提供地域は隣接しており、全米長距離通信トラヒックの1/3をカバー
●2社はすでにセルラー事業を統合しており、この合併は早くから噂されていた
ベルサウス 年間収入:179億ドル
アクセス回線数:2110万回線
●全米3位の市場、規制当局との関係が良好で、<他社参入が容易でない
●セルラー事業、南米進出にも積極的
●合併による規模の経済の実現には魅力を感じず
アメリテック 年間収入:134億ドル
アクセス回線数:1910万回線
●来年初めまでに、サービス提供エリア5州発信の長距離通信事業へ参入を希望
●サービス提供地域外においては、長距離通信事業者であるワールドコムのサービスを再販売することで合意
●ベル・アトランティック/ナイネックスと合併する噂もある
USウェスト 年間収入:118億ドル
アクセス回線数:1480万回線
●サービス提供エリアは、農村地域が多くサービス提供エリア内の長距離通信事業については魅力が小さい
●ケーブルTV電話を利用して、自社サービス提供エリア外のサービス提供を目指しているが、タイムワーナーとの提携もこじれ、コンチネンタル・ケーブルの買収もまとまっていない

 現在のところ、残りの3社はベル電話会社どおしの合併・買収を否定しているが、特に、ベル電話会社と長距離通信事業者の合併・買収の可能性は大きいであろう。例えば、MCIとベルサウス、アメリテックとワールドコム及びフロンティア社(独立系市内電話会社で長距離通信事業も展開している)との合併の噂もある。今後も、長距離通信事業者、ケーブルTV会社等との買収・合併が進展するであろうと予測される。

(海外調査第一部 小野 等)

(入稿:1996.05)

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