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「それゆけ!'96東京おもちゃショー」 | |
(96.06) | |
1.ここ数年の動向 今年で35回目を迎える「東京おもちゃショー」が、6月6日〜9日に幕張メッセで開催された。近年は、新聞・雑誌やテレビ等でも取り上げられるようになり、一般に広く知られるようになった。また、同展示会自身も一般公開日を増やすなど、業界関係者に加えて、一般消費者も重視する姿勢を見せている。幕張メッセ横の広大な駐車場を臨時スペースを含めて埋め尽くすほどに成長したこのイベントは、いまや日本国内指折りの規模を誇るイベントといえるだろう。 一般開催日を過去5年ほど見てきて、その内容にも変化が現れている。数年前は松下電器の「REAL(3DO)」を筆頭に、開発中のCD-ROM搭載ゲーム機が主導権を握っていた。現在もテレビゲームがこのイベントの主流の1つであることには変わりがないが、一般消費者の来場が増えるにつれて、テレビゲーム中心の企業はブースは分けるなど、テレビゲームとは一線を画す動きも見受けられる。また、来場者は、徹夜組を含めたテレビゲームファンもさることながら、ブース前に置かれた乳母車が示すように、その中心は乳児を含む子供を連れた家族である。そのため、会場はハイトーンな声や泣き声に包まれ、また大人は足下を見て歩かないと子供を蹴飛ばしかねない状況である。展示製品の前にある「さわらないで!」という表示が、何の意味を持たないことはいうまでもない。 |
2.キーワードは「知育」と・・・・・? キーワードの一つは「知育」である。子供の教育に熱心な世相を反映し、幼児向けを中心に、知能発育効果を前面に出したおもちゃが各メーカから出展されていた。「遊びながら真の国際性を養う」という国際電話を模したおもちゃの対象年齢が1.5歳〜4歳であることが、これを象徴している。また、PL法対策や安全性についても展示も目立っていた。 一方、新聞の夕刊では「ネットワーク通信時代」というキーワードで、「東京おもちゃショー」がトップ記事で取り上げられていたが、さて実際の内容は・・・? ここでは、「東京おもちゃショー」における情報通信の様子をごく簡単に数点ご紹介しよう。 |
○FAX通信を利用した通信おもちゃ
子供用電子手帳で話題を集めているカシオは、赤外線通信によるデータ交換機能に加えて、FAX通信による手書きデータ交換機能を搭載したモデル(発売中)を出展、そのラインナップと機能の充実ぶりは、ビジネス用電子手帳顔負けである。また、セガも同様のFAX通信機能を搭載したテレビゲーム機型のおもちゃ「TV-MAIL」を参考出品、96年秋に発売を予定している。
カシオは本業の電子機器事業のノウハウをおもちゃに転用したもので、おもちゃ本業のメーカには、このような製品はあまり多く見られない。しかし、子供達にとって、電話がおもちゃの一部として利用されるほど身近になっていることを、あらためて感じさせられた。
3.おもちゃと情報通信 情報通信とおもちゃの世界には、「疑似世界の実現」という共通点を見いだすことができる。 情報通信の世界では、現在、VRやサイバースペースへの関心が非常に高い。一方、子供達にとっての最大の関心事は大人の世界であり、おもちゃはそれを疑似体験できる道具である。 そのため、おもちゃの世界は大人の実生活の鏡でもある。例えば、各種家電の普及に伴って、ままごと道具にも家電が登場したように、通信機器の家庭への普及を反映して、電話やFAX、コンピュータのおもちゃが登場している。ともするならば、パソコンやネットワークの利用がもっと日常生活に浸透して行くに従って、おもちゃの世界にもこの波が本格的に訪れる可能性がある。しかし、逆に日常生活への本格的な浸透はまだこれから、ということを、おもちゃは示しているともいえるかもしれない。 ※参考情報
主要な関連URL
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(産業システム研究部:鬼頭 隆 kito@icr.co.jp)
(入稿:1996.06) |
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