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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<移動通信>

「PHSから自動車・携帯電話の相互通話が可能に」

(96.07)


 95年秋にリック・リサーチ社がPHSと携帯電話の一般ユーザー約600人に行ったアンケート調査によると、PHSへの不満として「エリアが狭い」(81%)の次点として、「携帯電話にかけられない」(57%)が挙げられている(日経産業96年2月14日号)。各PHS事業者が積極的に基地局等の設備建設を行った結果、エリア面の苦情は昨年と比べて徐々に解消しつつある。一方の自動車・携帯電話への通話に関しても、この度実現への一歩が踏み出された。

 PHSと自動車・携帯電話との相互通話が現状で不可能なのは、PHSはシステム構成上その網の大半をNTTのISDN網に依存しており、NTT側の市内交換機が自動車・携帯電話との相互通話を行えるように設定されていないからである。つまり、PHS事業者だけで解決する問題ではなく、NTTに依頼して解決してもらう必要がある。NTT網の交換機のソフト改造について、NTTは97年末に終了するとしている。PHS事業者と自動車・携帯電話事業者は95年12月に協議の場を持ち、NTT側の準備が整う97年末の実施で一旦は合意していた。

 ところが、自動車・携帯電話との相互通話を望む声が大きいことから、NTTパーソナル通信網グループとその親会社であるドコモグループとは96年に入ってから個別に話し合い、2月4日に他社に先駆けて相互通話を行うことを発表した。しかし、他事業者からの反発を受け、NTTパーソナル通信網グループはこの計画を撤回せざるを得なかった。  その後各事業者協議の上、96年夏から「暫定接続」を行うことで合意した。「暫定接続」とは、一旦NTT網内の接続装置に接続の上、そこから転送するという仕組みになっている。かけ方については、接続装置への接続用の番号をダイヤルして、その後で相手先電話番号をまわすというツー・ステージ・ダイヤルになっている。

 NTTパーソナル通信網グループ9社は6月20日、PHS発信、自動車・携帯電話着信の暫定接続の実施を郵政相に認可申請した。7月1日から実施される。ダイヤルの方法としては、例えば首都圏地区なら03-5229-7100をダイヤルし、その後で*と相手先電話番号をダイヤルする。

 DDIポケット電話グループ9社とアステルグループ4社(東京、関西、中国、九州)も、6月23日同様の申請を行った。7月下旬から実施される予定である。ダイヤルの方法としては、両グループともまず「161」をダイヤルし、その後で相手先電話番号をダイヤルする。3グループを比較してみると、DDIポケット電話グループ及びアステルグループはユーザーの利便性を考えて3ケタの特別番号を割り当てたのに対し、NTTパーソナル通信網グループはあくまでも暫定的サービスであるとの認識の元、通常の地域番号とした点が注目される。

 通話料金は3グループとも、距離、時間に関係なく5.5秒で10円。加えて1通話当たり20円が加算されるという2重構造の料金となっている。3分の通話では350円となり、例えば別の電話サービスで一番高い料金の対地区分である平日昼間・160km以遠への通話と比較すると、NTT固定網相互間の140円、PHS→NTT固定網の200円、NTT公衆電話→NTT固定網の220円、自動車・携帯電話→NTT固定網の190〜260円よりもかなり高くなっている。

 自動車・携帯電話発信、PHS着信の暫定接続も、自動車・携帯電話事業者が接続装置を設置することで96年9月に実現する予定である。また、97年末にNTT側の交換機の対応が終了し、本格的な相互接続が始まれば、料金も値下げされる見通しである。

 また、本格的な相互通話が実施されるまでまだまだ時間がかかることから、今回のPHS事業者と同じように接続装置を介した形での接続を業務とする業者も現れている。例えば、割安国際電話サービス事業者のユナイテッド・テレコムはまずユーザーに1,000〜10,000円のプリペイド・カードを購入してもらい、それに記載されているIDを投入することで利用することができる。PHS→自動車・携帯電話の料金は3分200円程度である。また、トーメンの子会社でDDIポケット電話の販売代理店であるトーメンポケット電話販売は、自社のDDIポケット電話ユーザーを対象に会員制の接続サービスを行っている。申込料は1,000円で別途月額100円の使用料がかかる。通話料としては、PHSから接続センターまでと、接続センターから自動車・携帯電話までの両方をかけ手が負担する。料金は、トーメンポケット電話販売からユーザーへ請求が行く。

(移動・パーソナル通信研究部:正垣 学)

(入稿:1996.07)

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