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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<海外>

「米国キャリアによるインターネット・アクセス・サービスの現状」

(96.07)


 今年2月にAT&Tが発表した消費者向けインターネット・アクセス・サービスである「ワールドネット・サービス」は、同社が90年代初めに導入してセンセーションを巻き起こした「ユニバーサルカード」の成功を髣髴とさせるものがある。1990年3月に導入された同社の「ユニバーサルカード」は、クレジットカードとコーリングカードを合わせた機能を持ち、このカードを使ってコーリングカード通話をすれば、通話料が1割引となり、また、クレジットカードとしても発行1年以内に加入すれば、生涯にわたって年会費が無料になるというもので、発行開始後わずか15ヵ月で1,000万枚を突破し、一気に全米第2位のクレジットカード発行会社として金融業界に進出したサクセス・ストーリーである。

 「ワールドネット・サービス」は、加入してから1年間は1ヵ月5時間までのインターネット・アクセス・サービスが無料、5時間を超える1時間ごとに2.5ドル、かけ放題の定額サービスは1ヵ月あたり19.95ドルというものであり、それまで先行していたインターネット・アクセス・サービス・プロバイダーの料金と比べ格安となっている。このため、このサービスの発表から9週間で60万件の問合せが殺到し、このうちの約4分の1にあたる15万人が加入した。しかし、これは果たして成功といえるだろうかという懐疑的な論調の新聞報道もある。それは予想以上の問合せのために、サービス開始のためのソフトの生産が間に合わないため、申込んでも数週間も待たされたり、ソフトのインストールが不調であったり、顧客サービス担当や技術サポート担当の体制が不足したりしたために「AT&T」のプランド名に傷がついたというものである。

 消費者向けインターネット・アクセス・サービスとしては、MCIがAT&Tよりも早くから提供しており、同社はすでに20万の顧客を獲得したとしている。しかし、ソフトが不足しているという状況はAT&Tの場合と似ている。MCIは「ネットワークMCI」のTVコマーシャルを毎日流しているため、ソフトを待たされている顧客のいらだちは募る一方である。

 これに対して第3位の長距離通信事業者であるスプリントは消費者向けサービスの提供に対して慎重である。スプリントはAT&Tの轍を踏まないためにも、能力以上の需要が起こらないよう準備しており、同社の消費者向けサービスの開始は今年の夏の終り頃になりそうである。

 これらの長距離通信事業者たちの動きに対して、長距離通信市場に参入しようとしているRBOCの中にも消費者向けインターネット・アクセス・サービスの提供に積極的な事業者がいる。SBCと地域電話会社同士で合併する予定のパクテルは、AT&Tの「ワールドネット」のソフトや料金体系を検討し、これをあらゆる点で上回るサービスをカリフォルニア州で提供する計画を発表した。AT&Tの選んだソフトはネットスケープ「ナビゲータ1.2」であったが、パクテルはこれより優れている「ナビゲータ2.0」を採用する。また、料金も2本立てとして、(1)「ケアフリー・アクセス」は月20時間までを14.95ドル、追加1時間ごとに50セント、最大支払限度を19.95ドルというサービスと、(2)「ベーシック・アクセス」は月10時間まで9.95ドルで追加1時間ごとに1ドルというものである。パクテルはネバダ州でのサービス提供を準備中であり、SBCとの合併が軌道にのれば、このサービスをSBCのサービス提供地域(テキサス、カンサス、アーカンソーなどの5州)にも拡大する予定である。

 ビジネス向けインターネットについては、メジャー・キャリアの中で最も古くからサービスを提供してきたのはスプリントである。これに追随してMCIやAT&Tが参入したが、成長著しいLDDS/ワールドコム(第4位の長距離通信事業者)やLCI(第6/7位の長距離通信事業者)も参入して来た。中でもLCIは96年5月になって、主に大口割引を武器にサービスを開始した。現在、ビジネス用の専用線によるインターネット・アクセス・サービスの各社のサービス及び料金の比較は以下の通りである。

(海外調査第一部 鈴木泰次)

(入稿:1996.06)

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