| |
「ケーブルテレビ'96に行って来た!」 | |
(96.07) | |
1.今年のテーマは「21世紀のスーパーネットワーク ケーブルテレビ」 ケーブルテレビ'96が6月12日から14日までの3日間、池袋のサンシャインシティで開催された。今年で13回目を迎えるケーブルテレビ業界の一大イベントであるが、今回より通信月間とケーブルテレビの日(6月16日)に合わせて、開催日が6月に繰り上げられた。 今年のテーマは「21世紀のスーパーネットワーク ケーブルテレビ」である。昨年に続きネットワークを前面に掲げたテーマであった。 |
2.影が薄くなったVOD 昨年と比べて最も変わった点といえば、昨年、一昨年の話題となっていたVOD(ビデオ・オン・ディマンド)やNVOD(ニア・ビデオ・オン・ディマンド)の影が驚くほど薄くなったことであろう。昨年は大手メーカーを中心にVODのモデルシステムが展示されており、ケーブルテレビ電話と共に注目を集めていた。 ところが、東京テレポートやシティテレビ中野などで実験システムを構築している松下や富士通を除いては、隅っこの方で展示されていたり、VODそのものが姿を消していたブースもあった。 VODはシステム構用など初期投資や著作権などコンテンツ提供者との関係、レンタルビデオとの競合などの課題が指摘されており、サービスの実現化にはまだ時間がかかるという見方が最近では支配的であるが、VODが主役の座から滑り落ちたかのような今年の展示であった。 |
3.何はなくともインターネット 今年、来場者の関心を最も集めていたのは、やはりインターネットであった。大手メーカーのほとんどが試作品ながらも実際にケーブルモデムを用いたインターネット接続を実演しており、自由に触ることもできた。海外製のケーブルモデムを用いていたメーカーもいくつかあったが、愛知電子、NEC、東芝、富士通、パイオニアなどでは自社製品が展示されていた。 伝送速度はメーカーにより様々であったが、対象型モデムでは上り下りとも10Mbps程度が一般的であり、非対称型モデムでは下り10〜30Mbps、上り2Mbps程度が多かった。しかし、この速度はいわば最高速度であり、実際の速度はケーブルテレビ局とプロバイダー間の回線の太さや混雑具合に左右される。実際、デモンストレーションで高速にアクセスされていたモデムであっても、いきなりECNのホームページにジャンプさせると説明員の笑顔をひきつらせてしまうほど速度が遅くなるのである。 さて、気になるモデムの価格だが、米国製モデムの価格を意識してか、どのメーカーも判で押したように「製品化の時には4〜5万円を考えています」との回答であった。 早いメーカーでは今年秋から年末にかけての製品化を目指していることから、ケーブルテレビの新たなサービスの本命としてインターネットサービスの今後の動向が注目される。 |
4.地域インフラとしてのケーブルテレビ インターネットだけではなく、ケーブルテレビを地域インフラとして捉えた展示が目に付いた。松下のブースではセンターにUNIXサーバを設置し、公共施設にパソコンベースの街頭端末を設置して、それぞれ10Mbpsのイーサネットに対応したケーブルLANシステムで接続することで、動画を含めた公共情報の検索閲覧や公共施設予約などが行える公共情報提供システムが展示されていた。また、愛知電子でも海外製品ではあるが、LANcityを使った10Mbpsの高速LAN間接続の提案が行われていた。 このほか、セキュリティシステムや在宅健康管理システム、緊急通報システムなどにケーブルテレビネットワークを利用した展示もあり、ほとんどが製品化されていた。また、変わったところでは、ホテルでの利用を想定した東芝のゲーム・オン・ディマンドシステムやケーブルテレビの伝送ケーブルにPHSアンテナを取り付けた松下のPHS/Cシステムなどがあった。 |
5."ケーブル"が注目され始めたケーブルテレビ このようにして見てくると、ケーブルテレビの"ケーブル"(=ネットワーク)の部分が注目された大会であったといえよう。改めて考えてみると、今年の展示品は、ケーブルの先がテレビにつながっていなかったような気がする。ケーブルの先につながっていたのは、パソコンであり、電話であった。数えたわけではないが、特にハード部門の展示では、パソコンや電話につながっていた方が多かったのではないか。これは3、4年前にはほとんど考えられなかった光景である。 通信事業への進出は、必ずしもケーブルテレビにバラ色の未来を約束するものではない。また、地域やネットワーク構成、今までの経緯などによりケーブルテレビ事業者によっても異なることであろう。 しかしながら、ソフト部門初参加のパーフェクTVを始めとするDMC放送の開始により、ケーブルテレビの売り物の一つであった「多チャンネル性」は数の上での優位性を失いつつある。 このことからも、ケーブルテレビ事業者は通信事業を含めた事業戦略や今後のケーブルテレビのあり方について、各事業者なりの答えを出すべく検討を行う時期に来たのではないかと思われる。 |
(社会システム研究部:安藤 雅彦 ando@icr.co.jp)
(入稿:1996.06) |
このページの最初へ |
![]() (http://www.icr.co.jp/newsletter/) |
![]() |