トレンド情報
トレンド情報 -トピックス[1996年]
<インターネット・パソ通・コンピュータ>

「コンピュータ・テレフォニー市場、
いよいよ本格始動か?」

(96.09)

  1. コンピュータ・テレフォニーとは?
  2. コンピュータ・テレフォニー市場をめぐる動きが本格化
  3. トリガーとなった「発信電話番号表示サービス」
  4. コンピュータ・テレフォニーの導入により可能となること
  5. アプリケーションの開発が鍵に

1.コンピュータ・テレフォニーとは?
 「コンピュータ・テレフォニー」ということばが、よく聞かれるようになった。「CTI(Computer Telephony Integration)」とも呼ばれ、これは電話とコンピュータが相互に連動し、通話とデータが一体となって処理される環境のことを指す。たとえば、パソコンやワークステーションなどと、PBXやビジネスホンなどを統合したシステムで、マーケティングへの応用など、ビジネス分野での活用が考えられる。
 ここ数年のパソコンの普及やLAN環境の整備など、コンピュータ・テレフォニーを普及させる条件は整ってきた。また、NTTにより97年春にもサービス開始が予定されている 「発信番号表示サービス(発IDサービス)」が、さらにコンピュータ・テレフォニー市場の拡大、ニュービジネスの創出に拍車をかけることが予想される。

2.コンピュータ・テレフォニー市場をめぐる動きが本格化
 米国では、コンピュータ・テレフォニーの市場規模はすでに35億ドルに達しているが、日本は発IDサービスが実用化されていなかったため、市場は低迷していた。しかし、発IDサービスの実用化が間近となり、国内でも電話端末、PBXを連携するソフトウェア製品、それらを搭載したサーバといった分野で、各社が続々と製品を発表している。
例えば、NECが発売した「APEX Call Center」は、従来のシステムにコンピュータ・テレフォニー機能を盛り込むことで、パソコン画面上で電話操作ができ、各種のデータベースと連動させることにより、電話しながら顧客情報などを処理できる。
 また富士通では、コンピュータ・テレフォニー機能に対応した専用PBX「E-3900」、Windows95上での電話操作が可能な「CTIサーバ」、パソコンにビジネスホン機能を組み込む「PC-DTボード」と内蔵パソコンなどを発売している。
 こうした製品の主な販売ターゲットは、通信販売業者や苦情処理などを行うコール・センターである。
 メーカー各社では、まずコール・センターでコンピュータ・テレフォニーを普及させ、次はオフィスへの導入をねらっている。電話、電子メール、ファクスなど異なる形態のメッセージを、パソコン上で統一的に扱う仕組みにより、外出先から電子メールを音声/ファクスで取り出すことなどが可能となる。さらに、グループウェアと組み合わせれば、オフィスの生産性がさらに向上することが期待される。

3.トリガーとなった「発信電話番号表示サービス」
 日本のコンピュータ・テレフォニー 市場拡大にはずみをつけたのが、NTTが97年1月に試験サービスの開始を予定している「発信電話番号表示サービス(発IDサービス)」である。 これは発信者の電話番号を受信者に通知するサービスである。加入電話網(アナログ電話網)に契約している全ユーザが利用できるが、電話番号の通知を希望するユーザはNTTと契約し、工事費と月々定額の使用料を支払う。発信者側は基本的に無料である。
 このサービスのしくみは、電話のベルが鳴る前に、発信者の電話番号情報が、モデム信号(ITU-T V.23準拠)として受信者側に届く、というものである。モデム信号を採用したのは、将来的に電話番号以外の情報を通知することも可能となるからである。また、この番号情報を受信するためには、発IDサービスに対応した電話機、PBXなどの利用が必要となる。
これにより、コール・センターなどで、電話を受けた際に、電話番号から顧客データを逸早く検索し、パソコンのディスプレイに表示させれば、お客様にたいし迅速できめ細かい応対が可能となる。
 米国では既に87年から同様のサービスが提供されており、コンピュータ・テレフォニー市場の拡大に拍車をかけた。そうした状況から、日本のハード/ソフトサプライヤーは発IDサービス開始にむけて、製品の開発・発表を急ピッチですすめている。

4.コンピュータ・テレフォニーの導入により可能となること
 コンピュータ・テレフォニーと発IDサービスを組み合わせると、データベースを含むコンピュータと電話の連動環境が整えられることにより、コール・センターのような業務では、次のようなアプリケーションを利用できる。
  1. 顧客情報自動表示
    電話の着信と同時に顧客情報がディスプレイ上に表示されることにより、迅速かつスムーズに応対で きる
  2. インテリジェント・ルーティング
    発信者による音声・肉声応答切り替えや特定の担当者への接続、オペレーターの能力に応じた接続が できる
  3. パソコンだけで通話も同時処理
    パソコンを操作するだけで、通話と顧客情報の処理や転送を同時にできる
  4. プレディクティブ・ダイヤリング(先行ダイヤル)
    アウトバンド業務において、オペレーターの空き状況を予測し、PBXが自動 発信し、応答があったときのみ、オペレーターに接続する
 発IDサービスの試験提供に際し、NTTでは参加企業を募集し、約130社がエントリーされているが、その約7割が問い合わせ受付や注文受付での利用形態であることから、上記のアプリケーションに対する有効性の評価は高いと考えられる。

5.アプリケーションの開発が鍵に
 コンピュータ・テレフォニー市場の盛り上がりにたいして、一方では冷ややかな見方も存在する。 たとえば、今後パソコンLANは100メガビット、さらにはオフィス内でも1ギガビットレベルの超高速伝送が近い将来可能になり、コンピュータ・テレフォニー環境の構築に必要な音声やLANを同時に収容する装置は不要になるとの見方である。
 コンピュータ・テレフォニー市場はマルチメディア時代をにらんだ「アプリケーション開発」にその命運がかかっている。特にオフィスでのコンピュータ・テレフォニー市場開拓のためには、ユーザニーズを掘り起こしたうえでのアプリケーションを投入していくことが肝心である。これにたいしては、メーカーが主導で取り組まなければ、またしても低迷してしまう可能性が高い。
 また、発IDサービスそのものがはらむ問題/影響(電話番号の悪用、営業活動への弊害など)も予想される。
 コンピュータ・テレフォニーをとりまく環境は整いつつあるが、本格的に到来するマルチメディア時代を見据えた製品開発を行っていくことが、サプライヤーの急務であり、市場低迷を回避する鍵であると考えられる。
(情報事業部 川上 晶子)

(入稿:1996.09)

このページの最初へ


トップページ
(http://www.icr.co.jp/newsletter/)
トレンド情報-トピックス[1996年]