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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<移動通信>

「日本にも携帯電話の回線リセール事業者が登場」

(96.09)

 8月22日の日本経済新聞の記事によると、通信関連のベンチャー企業である日本通信(東京都千代田区)が、携帯電話の再販売(リセール)事業を開始するとのことである。電気通信サービスのリセール事業は、固定電話の専用回線の分野ではすでに実績があり、リクルート、共同VAN等の事業者がサービスを提供している。また、最近では固定電話の公衆回線についても、リセール事業を行う会社が出てきている。

 リセール事業の構造は、まず電気通信事業者(キャリア)がリセール業者(リセラー)との間に大量の回線契約を締結し、リセラーはこれを分割してエンド・ユーザーに提供するという形になっている。キャリアは顧客応対・料金請求をリセラーに対して行い、エンド・ユーザーに対して行う必要はない。エンド・ユーザーへの顧客応対・料金請求は、リセラーが行うこととなっている。そのため、エンド・ユーザーの中には、利用しているサービスを提供キャリアを知らず、リセラーの名前しか知らない、ということもある。

 専用回線の場合には、リセラーは大容量のスーパー・ディジタル回線を契約し、それを分割して各エンド・ユーザーに提供するという形を採っている。大容量の専用回線の場合、小容量の専用回線を束ねて同じ容量にしたものよりも安い料金が設定されているため、リセラーは利鞘を稼ぐことができるのである。固定電話の公衆回線については、今年6〜7月に長距離事業者が相次いでユーザー単位の大口割引を導入しているため(同一名義であれば、設置場所はどこでもよい。例:NTTのスーパーテレワイズ)、その割引分が利鞘となる。携帯電話の場合、固定電話よりいちはやくこの種のサービスを導入しており(例:NTTドコモのGレート)、仕組みは固定電話の場合と同じである。

 世界的に見ると、リセール制度は、米国、英国、フランス、ドイツで導入されている(欧州ではリセラーを「サービス・プロバイダー」と呼んでいる)。日本と欧米のリセール制度の違いは、日本では一般ユーザー向けの大口割引をリセラーも利用しているのに対し、欧米では一般ユーザー向けの大口割引とは別にリセラー向けの卸売(ホールセール)料金が存在するという点にある。卸売料金は、一般ユーザー向けの大口割引よりもさらに安く設定されている。これは、キャリアにとってはリセラーを相手にすればよく、エンド・ユーザー個々と応対する必要がないため、コストがかからない分安くできる、といった理由から来ている。具体例を挙げると、米国シカゴの某リセラーの場合、ページング・サービスをキャリアから月額3ドルで仕入れ、月額5ドルで販売している。NTTドコモのGレートが最高20%の割引であることと比べると、かなり安く仕入れていることがわかる。

 キャリアにとってのリセール制度のメリットは、エンド・ユーザー個々に顧客応対・料金請求する必要はなくリセラー1社を相手にすればよい点、エンド・ユーザーよりもリセラーの方が支払能力の点で安心できる点等が挙げられる。一方デメリットとしては、キャリアとリセラーとの間で、ユーザーを巡って競合する可能性があることが挙げられる。欧米ではこれを回避するために、以下のような施策で棲み分けを行っている。

  • キャリア直販はビジネス向け、リセラー販売は消費者向け、というようにターゲット・ユーザーを分けている。
  • キャリア直販では最低使用期間12カ月、リセラー販売では最低使用期間6カ月、というように契約条件を変更している。
  • この端末or付加サービスはキャリア直販でしか販売しない、というように提供サービスを変更している。この日本通信の場合には、エンド・ユーザーの要望に従った請求書を発行するといった付加価値を付ける予定である。
(移動・パーソナル通信研究部:正垣 学)

(入稿:1996.09)

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