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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<移動通信>

「自動車・携帯電話のデータ通信に対する取り組み」

(96.10)

 日本の自動車・携帯電話は、9月末ですでに累計加入数1,530万6,100を記録し、10%を上回る普及率を達成している。事業者にとって加入者が増えることは重要である。しかし一方で、販売店に支払う販売奨励金(インセンティブ)の増加、顧客応対コストの増加、料金滞納額の増加と、決して手放しで喜べない面も持っている。事業者側では、NTTドコモの大星社長が日本経済新聞7月19日付の一面広告で「ボリュームからバリューへ」とうたったように、1人でも多くのユーザーを増やすという「量」重視から、個々のユーザーにいかに多く使ってもらえるかという「質」重視への転換を図りつつある。CS(顧客満足度)専門の部署を社内に設置したり、直営店だけでなく販売代理店でも故障修理の対応を行ったり、通話料だけで聴ける各種情報サービスを充実させたりしているのも、「質」重視の現れである。

 「質」重視の戦略の一環として、データ通信、FAX通信といった非音声系サービスが挙げられる。米国の調査結果によれば、データ通信に自動車・携帯電話を使用するユーザーは、平均使用料(月額基本料+通話料)の2倍の使用料を費やすとされており、しかも解約率が低いともされている。一方で、現在日本では非音声系の通信トラヒックは「1〜2%」(前出ドコモ大星社長の談話より)で、普及はまだまだ。言い換えれば今後の伸びが期待できる市場であると言えよう。

 まず、回線交換で9,600b/sの通信速度のサービスについては、NTTドコモが95年4月から「デジタル・ムーバ・ハイパー」の商品名でサービスを開始している。続いて96年8月に、ツーカーセルラー東京が「サイバーギガ」の商品名でこの分野に参入した。96年10月からは、DDI系セルラー電話会社がこのサービスを開始した。

 ドコモ、ツーカーともにこのシリーズの機種はよく売れているが、実際にデータ通信で利用しているユーザーは少なく、どちらかと言えばイメージ先行の状態である。すでにNTTドコモでは、今までデータ通信のモニターを募集したり、TVコマーシャルで列車内からの電子メール送信をアピールしたりとこのサービスのプロモーションに懸命となっており、今後はデータ/FAX通信用のアダプター・カードの出荷価格を引き下げる施策を取る予定である。また、データ通信用の料金を、通話用の料金体系とは別建てにする構想もある。

 回線交換とは別に、自動車・携帯電話によるパケット通信についても実用化の動きがある。今秋の電気通信技術審議会(郵政相の諮問機関)で答申がまとまる予定である。通信速度は28.8kb/s、課金は情報量課金が採用される見通しである。

 自動車・携帯電話事業者がデータ通信に力を入れるもう1つの理由としては、97年春にPHSでの32kb/sの高速データ通信が実用化されることが挙げられる。回線交換の速度ではPHSに劣るものの、カバーエリア、高速移動への適性では自動車・携帯電話の方に分がある。今から97年春にかけて、自動車・携帯電話とPHSとの間で、様々なアプリケーションの登場が予想される。

(移動・パーソナル通信研究部:正垣 学)

(入稿:1996.10)

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