トレンド情報
トレンド情報 -トピックス[1996年]
<海外>

「英国におけるCATV電話の現状」

(96.08)

  1. サービス提供状況
  2. CATV電話の普及
  3. CATV電話の抱える問題
  4. 今後の動向

1.サービス提供状況
 英国では、1990年放送法によって設立された「独立テレビ委員会(ITV)」がCATV免許の付与と事業規制を行っている。これまで、127地域にCATVのフランチャイズ免許が付与されている。そのうち、108地域でCATVが、102地域でCATV電話が、それぞれ提供されている。また、いずれのサービスの提供も開始されていない地域が18地域ある。
 フランチャイズ地域ごとにそれぞれ事業免許が1つ付与されるが、複数の地域で免許を保有することも可能である。そのような事業者の中でも特に、テレウェスト、ナイネックス・ケーブルコム、ベル・ケーブルメディアが最大手に数えられる。

2.CATV電話の普及
 英国のCATV業者は、国内通信の複占時代(1991年まで)には、BTまたはマーキュリー網への接続を条件として電話サービスの提供を認められていたが、普及は進んでいなかった。
 1991年に複占体制が終了し、市内通信の競争の促進のため、CATV業者は、自社設備を利用して電話サービスを提供することが認められた。その結果、CATV電話の加入は飛躍的に増加した。


このデータの詳細は、 こちらをご参照ください。

 96年第1四半期には、住宅用CATV電話の加入数(1,469,849)がCATVの加入数(1,422,868)を上回るまでになっている。(ただし、そもそもCATVの加入自体があまり多くない。英国のCATV加入率(CATV加入数をホームパス世帯数で割ったもの)は本年第1四半期で21.6%であり、米国の約3分の1に過ぎない。)
 英国では、CATVには加入せずCATV電話だけに加入することが可能であるため、このような加入数の逆転現象が起こりえた。ただし、CATV電話加入数とCATV加入数を単純に引き算して、生じた差がCATV電話のみに加入しているユーザーの数だと断言することはできない。2回線以上契約しているユーザーがいるのか、また、いる場合どのようにカウントしているのかが明らかにされていないからである。
 オフテルが95年12月に公表した年次報告によると、94年度の英国通信市場におけるCATV業者のシェアは2.7%であり、電話収入はCATV業者合計で1億1900万ポンド(約190億円)に達している。BT(84.3%)やマーキュリー(12.4%)と比べるとまだ非常に小さいが、市内通信市場に限定すると、CATV業者とマーキュリー(直接およびBT加入者などの間接加入の合計)のシェアはそれぞれ2.8%であり、同水準になっている。

3.CATV電話の抱える問題
 CATV電話が普及するにつれ、BTやその他の事業者との競争が益々激化している。本年7月に多数の事業者が料金改定を実施した。割安な料金は、CATV業者のマーケティングにおける重要なセールス・ポイントである。例えばベル・ケーブルメディアは、BTと比べて最大で25%割安な料金に改定している。現在、週に5,000〜7,000のユーザーが、BTからCATV電話に移行していると報道されている。
 ただし、単に料金が割安であるというだけでは競争を勝ち抜くことはできない。サービスの品質が悪ければ、たとえ料金が割安であってもユーザーにとっては魅力がない。CATV業者の顧客サービスは、BTと比べて「非常に原始的である」と指摘されている。特に料金請求に関しては、CATVとCATV電話の料金請求を統合するシステムがうまく作動していない業者もあり、料金の誤請求が頻発しているという。さらに悪いことに、誤った請求額を正確に訂正できない業者が多いという。
 また、CATV電話ユーザーには、移り気な傾向があるようだ。BTから気軽にCATV電話に移行したユーザーは、何かがあればまた気軽にBTに帰っていく可能性がある。
 このような理由から、CATV電話は解約率もかなり高くなっている。例えば、前述のベル・ケーブルメディアの解約率は16.5%である。同社の先般の料金値下げは、解約率の低下を目指したものと言われているが、単に料金を値下げするだけでどれほどの効果があるか疑問視される。
 一方BTは、CATV業者に対抗して、「ウィンバック」作戦と呼ばれる顧客奪回活動を積極的に展開してきている。同社によると、この活動により、CATV業者から週1,000ユーザーの奪回に成功しているという。CATV電話に移行したユーザーに対して、BTに戻ってくるよう説得を行う、というのがこの活動の内容であるが、BTの担当者がCATV業者が不利になるような虚偽の情報をユーザーに流布しているとして、様々なCATV業者が不満を申立てている。規制機関であるオフテルが、申立ての一部に関して、競争上不公正な営業活動にあたるかどうかについて調査を開始している。

4.今後の動向
 CATV業者の最大のライバルであるBTは、米国のMCIと提携して国際的にもマーケティングを強化している。また、AT&Tをはじめとする外資系事業者が英国における事業を拡大しつつあり、CATV業者は今後益々苦戦を強いられるだろう。
 一方、本業であるCATV事業は加入が伸び悩んでおり、CATV業者は電話事業による収入に頼らざるをえない状況になっている。
 このような中で、CATV業者同士の合併や買収がしばしばマスコミを賑わすようになってきている。現在、テレウェストによるナイネックス・ケーブルコムの買収が交渉中であると報じられている。政府当局は、BTやBスカイB(衛星放送)との競争の活発化をもたらすとして、この合併を認めるだろうと見られる。  政府による複占政策に保護されてシェアを拡大してきたマーキュリーとは異なり、競争の原則のもとで事業を展開しなければならないCATV業者の進む道は、予想以上に険しいものになりそうである。
(海外調査第一部 光山 奈保子)

(入稿:1996.08)

このページの最初へ


トップページ
(http://www.icr.co.jp/newsletter/)
トレンド情報-トピックス[1996年]