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「IMT−2000(FPLMTS)の動向」 |
(96.11) |
IMT−2000(FPLMTS)とは、アナログ技術をベースとした第1世代、デジタル技術をベースとした第2世代に続く、第3世代の移動体通信システムのことである。第1世代のアナログ方式ではAMPS、NMT、NTT等々、第2世代のデジタル方式ではGSM、PDC、北米版TDMA等々といった各方式が並立し、全世界で標準の規格というものは存在しなかった。第3世代のIMT−2000では、世界標準を確立することによって、シームレスな移動体通信を実現するとともに、固定網と同レベルの品質で多種多様なサービスを実現できるシステムの実現を目指している。
IMT−2000の標準化作業については、ITU(国際電気通信連合)が1985年から着手している。システムの概要については、すでに以下のように合意されている。
日本では、郵政省が10月1日から、IMT−2000の実用化に向けた「次世代移動通信システムに関する調査研究会」を開催した。この研究会には、日本の通信事業者やメーカーの他に、モトローラやエリクソン、ノーテルといった欧米の通信機器メーカー、三星電子、LG情報通信といった韓国の通信企業が参加している。最終的には97年4月までに報告書をまとめ、ITUに日本案として提出する予定である。採用される方式としては、CDMA方式をベースにしたものが有力視されている。また、これとは別に、郵政省は中国政府との間で、IMT−2000の開発で協力することで合意している。 世界的に見て、IMT−2000の標準化作業の一刻でも早い実現を希求しているのは日本である。これは、現在使用している周波数帯が逼迫していることから来ており、ITU予定の1999年より1年早い実現を望んでいる。一方、欧州陣営は、独自で第3世代のプロジェクトとしてUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)を進行中である関係上、むしろこの標準化作業をできる限り遅らせることを望んでいる。 今後の周波数の逼迫状況次第では、標準化作業の前に日本が2GHz帯の周波数利用を先走らざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。こうなった場合、その後の標準化で日本案とは別の方式が採用されるとすれば、日本は世界的に移動通信分野で孤立しかねない。過去に日本では、デジタル携帯電話の標準として日本独自のPDC方式を採用したことによって、日本メーカーの海外進出のチャンスや外国メーカーの国内参入のチャンスにブレーキをかける結果に終わった経緯がある。同じ轍を踏まないために、郵政省、通信事業者、メーカーの今後の戦略が注目される。 |
(移動・パーソナル通信研究部:正垣 学)
(入稿:1996.11) |
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