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「フランス−新電気通信規制法とフランス・テレコム民営化法の成立」 | |
(96.10) | |
欧州委員会が1998年1月からの電気通信の全面自由化を決定して以来、欧州各国はそれぞれ、新しい競争的枠組みにおける法制度の整備に取り組んでいるところであるが、フランスにおいても、6月の国会で、1990年以来の現行基本法である「電気通信事業規制法」の改正法が可決された。さらに、国営電気通信事業者「フランス・テレコム」の民営化法も6月末に可決され、1997年1月から株式会社に改組されることが決定した。これにより、1997年初頭から新しい規制上の環境がスタートすることになり、全面的競争開放を約1年後に控えてカウントダウン体制に入ったと新聞紙上で報じられている。 以下に、これらをめぐる話題を探る。 |
1.新電気通信規制法の成立 フランス政府は、1995年後半から、大統領選挙(同年5月)の影響で停滞していた電気通信改革に本格的に着手した。10月から12月まで民間からの意見を徴集するための公的諮問を実施した後、1996年初頭から法案の策定に着手し、1996年4月の春季国会において新電気通信規制法を上程し、6月中旬に成立、7月27日に発効された。 当初、法案発表段階で最も議論の的となったのは、ユニバーサル・サービスの定義問題である。これまでフランス・テレコムの使命とされた「公共的電話サービス」の提供義務を競争事業者に開放することに対し、品質維持及びコスト管理の観点から、フランス・テレコムの労働組合のみならず有識者から成る諮問機関においても反対意見が出された。このため政府は、ユニバーサル・サービスを含みながらもより広い意味の「公共的サービス」を定義した上で、フランス・テレコムをその提供事業者と規定することによって、法案を無事通過させた。公共的サービスとは以下の3つのサービスの総称とされている(5年毎に見直し)。
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2.フランス・テレコム民営化法の成立 公共的サービス擁護の論点が規制法によって明確化したことにより、過去数年来棚上げされていたフランス・テレコム(FT)の民営化問題も一気に進展した。過去に政府がFTの民営化方針を発表すると、労働組合がストライキによって抵抗する形で民営化の延期が繰り返されてきたが、政府は規制法の国会上程による政策環境の変化を好機として捉え、民営化に難色を示す労働組合との交渉を有利に展開し、6月上旬に法案を国会へ上程した後、6月末には強硬手段で法案を可決させた。この背景には、緊密な提携関係にあるドイツ・テレコムが既に株式会社化され(95年1月)、本年11月より欧州最大規模の株式売却を開始する点が大きく影響を与えており、FTのこれ以上の民営化の遅れは、株主となる政府の財政問題にも及び、一刻の猶予も許されない状況であったことが指摘されている(ラルシェ・レポート:1996.3.発表)。 民営化法の主要点は、FTを株式会社へ改組するものの政府が資本の過半数を直接保有する点、及び職員への公務員身分の保証やそれに伴う従業員年金制度の改善等、が中心となっている。フランス・テレコム総裁は、1997年4月中旬以降、一般投資家向けに第1期として株式の20%を公開する予定を発表している。 |
3.規制法成立後の話題:インターネット、相互接続、新番号計画 フランス政府は、フランスにおいても急速に普及し始めたインターネット関連のオンライン・サービス規制問題に関して、電気通信規制法を審議中であった上院で以下のような基本的方針を掲げており、今後の議論の高まりが予想される。
さらに、フランスにおける新しい電話番号体系が今年10月18日からスタートすることも、民間事業者にとっては、頭の痛い問題の1つとなっている。フランス国内の電話番号を、これまでの8ケタ(パリ地域は9ケタ)から10ケタに統一して番号容量を増加させ、欧州連合で推進中の番号計画との調和を図るために導入されるが、新規参入者に与えられる電話番号は、12ケタから14ケタに増加することになるため、CGEを中心として抗議の声が上がっている。政府は、新電気通信規制法に盛り込まれた2001年からの番号ポータビリティの実施を、1998年から地域ごとに導入することも可能であるとして、融和策を講じているところである。 |
(海外調査第一部 水谷 さゆり)
(入稿:1996.10) |
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