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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<移動通信>

「新方式・新サービスで飛躍を図る
日本シティメディアの戦略」

(96.12)

 日本シティメディア(JCM)は、無線パケット通信サービス「テレターミナル」を提供する移動体通信事業者で、NECを筆頭株主に、パイオニア、(財)移動無線センター、東京電力の出資を仰いで1989年からサービスを提供している。無線パケット通信という性格上、提供しているのは音声ではなくデータ通信のみであり、その通信速度は9,600b/s。業務用には外付けタイプもしくはPCMCIA型カード・タイプの無線モデムを、一般向けには通信機能内蔵の携帯情報端末「メサージュ」をそれぞれ販売してきたが、サービス・エリアがほぼ国道16号線内と狭いこともあって、加入者数は13,000(96年3月末)と思ったようには伸びなかった。

 JCMでは、96年12月から新方式である「データTAC」の運用を開始した。新方式は米国モトローラ社が開発した方式で、米国ではモトローラが出資するアーディス社(加入者数6万)がこれを採用している。その通信速度は19.2kb/sと従来の2倍であり、機能がアップした分アプリケーションの幅が広がってくる。また、データTACは米国を始めカナダ、ドイツ、オーストラリア、シンガポール、香港など10カ国で採用されている方式であり、各種機器、設備の共通化が図れ、コストダウンが実現できる。

 JCMは、12月の運用開始に合わせ、新サービス「Qメール」を開始した。「Qメール」では110×60×20の小型端末(国際電気製:14,500円)によって、双方向通信が可能なポケットベル・タイプのサービスを提供する。ポケットベルのように電話からメッセージを送信するだけではなく、Qメールから別のQメールへメッセージを送信できる。この場合、クイック・レスポンス機能によって簡単に相手にメッセージを返信する(簡易応答)こともできるし、返信しない場合でも自動的に相手に受信通知が送達される(自動応答)。また、1台のQメールから最大9台まで同報でメールを送信したり、Qメールからポケットベルへメッセージを送信したりすることも可能である。JCMでは「Pの次にはQがくる」とのキャッチフレーズで、ポケットベルの対象ユーザー層(主に若年層)へのアピールを行っている。ポケットベルの加入数は、携帯電話やPHSに押されて今年度に入って鈍化傾向にあるが、JCMではポケットベルに双方向性を付与することで、携帯電話やPHSに十分対抗できるサービスであるとし、同社としては今まで未開拓であった消費者層への売り込みを図っていく。月額使用料は2,400円で、別に1通信当たり10円が課金される。

 なお、米国でアーディス社と並んで無線パケット・サービスを提供しているラム・モービル・データ社(ベルサウス系)も、従来は業務用端末を中心にビジネスを展開してきたが、今秋にページャー(ポケットベル)を意識した一般向けの端末「インタラクティブ」を発表しており、日米の無線パケット事業者が、共に消費者市場をターゲットとするという同様の戦略を採っている点、興味深い。

 12月現在では、データTAC方式でサービスするのはQメールのみであるが、今後は対応する無線モデムも開発していく方向である。同社は、2001年度末で50万の加入者数を目指している。

(移動・パーソナル通信研究部:正垣 学)

(入稿:1996.12)

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