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トレンド情報 -トピックス[1996年]
<海外>

「米国とわが国における再販売市場の動向」

(96.12)

 米国では、1980年代末から再販売市場が急速に伸びており、最近では約800億ドルに及ぶ長距離/国際通信市場の10%に達するものと推定されている。
   約500の長距離通信事業者が熾烈な競争を展開していると推定されるが、そのうち施設サービス中心のキャリアは、AT&T、MCI、スプリントやワールドコムを含めて大手10社程度と見られており、残りはある州や一部の地域では施設を有するが、それ以外はリセールでサービスを提供するか、全部リセール・ベースで事業を展開している。
   再販売とは、再販売業者(リセラー)が施設ベースのキャリアから長距離通話や国際電話サービスを大口割引で買ってきて、エンドユーザー向けに、キャリアの一般料金よりは割安の小口割引料金で提供し、リセラーもその差額から必要な経費を支出し、しかも利潤を獲得するというものである。
 したがって、リセールという商売が成立するためには、必要な利潤を生み出すための大口割引を規制機関が認めることと、リセラーに対して料金規制を行わないことが不可欠の前提条件となる。
 リセラーは、通常、アンダーライング・キャリア(基礎となっている施設ベースの大手キャリア)から長期契約(3年〜5年)及び最低支払保証額(月額・年額で利用がなくても必ず支払う額)などに基いて、20〜70%の大口割引でトラヒックをバルク買いし、エンドユーザーを集めて10〜40%の割引料金のほか、自社ブランドでマーケティング、ビリング(料金の請求・回収)、顧客サービスなどを提供する。
 伝送回線や各種大口割引を借りて「交換機だけを保有するリセラー」と、交換機も保有せず、すべて借りる「交換機非保有リセラー」、顧客だけを集めて、サービスやビリングはアンダラインダ・キャリアが行う「アグリゲータ」(トラヒックを集める業者)などに分かれる。
 AT&T、MCI、スプリントなどの大手長距離事業者は80年代には競争相手としてリセラーに対して協力的でなかったが、最近ではフォーチュン1000社などの大規模ユーザーは自社で直接に対応し、手がまわりかねる中小企業についてはリセラーを積極的に活用する方向となり、販売支援などを行うようになっている。
 この数年間、話題を呼んできた「国際コールバック」もリセールの1種であり、これは国際通信料金の内外価格差を利用したものである。
 現在、日米間の国際通信料金は、通常の料金では日本発と米国発を比較するとむしろ日本発の方が安いが、大口割引を利用すると米国発の方が半分以下となり、これを利用して、日本発の通話を米国発信に切り換えて割安にするというものである。
 通常、国際コールバック業者に登録したユーザーが、米国のリセラーの交換局をダイヤルで呼び出して受話器を置くと、ユーザーの電話番号が交換局に送られるので、それを利用して米国側から呼び返して接続するものである。
 これまでは中小規模の国際コールバック業者だけであったが、AT&Tジャパンが11月に対米3分間240円(KDD:450円、IDC・ITJ:440円)で参入したことから、わが国の国際通信業界に衝撃を与えた。
なお、AT&Tは、わが国だけでなく、欧州でも米国より国際通話料金の割高な諸国で同様の方式で国際コールバックサービスを提供しはじめている。
 世界最大の長距離/国際電話会社であるAT&Tも今やナリフリ構わずである。
 また、97年中には国際専用線の単純再販売(公専公接続を含む)が解禁される見込みであり、国際通信の競争はリセール市場の発展によって熾烈になり、国際料金は急速に低下していくであろう。
 わが国の国内再販売市場は、現在、制度上は2種事業であるが、従来、施設ベースの1種事業者の大口割引の割引率が大きくなかったこともあって、米国ほどには発展してこなかった。
 しかし、最近では25%割引も出現しており、さらに割引率が拡大し、国内専用線(本年10月)、国際専用線のそれぞれの公専公接続が認められるようになると、わが国のリセラーも、その他の規制緩和と相まって、急速に発展していくものと予想される。
 ただし、リセール事業は少ない資本で参入可能であるが、競争が激しくハイリスクでもあり、よく熟知した市場にターゲットをしぼるとともに、成長性の高い分野(例えば、携帯電話、フリーダイヤル、国際通信、カード)などに柔軟に食い突いていくことが、米国でもわが国でも商売成功のコツであろう。

 国際コールバックも国際通信の競争が激しくなり、その料金の内外価格差が縮小するまでの数年間が勝負であろう。

(取締役 海外調査第一部長 堀 伸樹)

(入稿:1996.12)

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