3.法規制が存在するアプリケーション
- 3-2 主として書面への要請に基づくもの
- 3-2-1 オンラインでの行政サービス
- (1)制約の現状
a.転居時の届け出
- 住居を移転した際には、住民基本台帳の記載事項を変更するために市役所等へ転居届を提出する必要がある。この届出がオンラインでできれば、市役所等に出かけなくても手続きをすませることができる。これを実現するためには全国の自治体が協力してデータを交換する必要がある。しかし、自治体のなかには個人情報保護のためにこのようなデータの交換(オンライン結合)を禁止する条例を定めているところも多く、また実現のための全国の自治体の協力関係も出来ているとは言えない。
b.住民票、戸籍謄本等のオンライン入手
- 住民票の写し、印鑑登録証明書の自動交付は、交付を行う端末機のトラブル(紙詰まり等)に伴うプライバシー侵害から保護するため、当面は本庁や支所・出張所等の行政窓口に限られている(1990年自治振第60号、振興課長通達)。この結果、プライバシーの保護は期待できるものの、コンビニエンスストア、金融機関、駅等での設置が不可能となっている。更に自宅等でのオンライン入手が可能になるには、自動交付用の専用端末機ではなく、家庭のPCから利用出来るよう端末機の汎用化が必要である。
- また戸籍謄本等の戸籍情報は、目的外使用や個人情報の漏洩の危険から守るため、戸籍情報ファイルへのアクセスが自由にできないシステムになっている。
c.住民票、戸籍謄本等の情報の地方自治体間でのオンライン結合
- 前述の「オンライン結合禁止」条項が全国共通窓口の実現を不可能にしてきた。住民基本台帳および戸籍情報のネットワーク化が不可避である。
- ここ数年自治省は、住民基本台帳のネットワーク化を2000年に導入すべく法案準備を進めており、全国どこの窓口でも住民票をとれる見通しがたったと言えよう。しかしながら戸籍情報のネットワーク化については、現時点ではまだその見通しを得られていない。
- (2)調査結果の特徴
- オンラインでの行政サービス(転居時のオンライン届け出、住民票等のオンライン手続き及び全国行政窓口での取得)は、いずれも9割前後が規制緩和すべきとし、かつ強い利用希望を有している。
- 可能にしてよいが自分は利用しないとする回答はいずれも2%台で低率である。
- 行政サービスのオンライン化は、今回調査したアプリケーションの中で最も規制緩和の優先順位が高く、全体の6割以上が優先順位の1位と回答している。
- また上位1〜3位を加重した総合ポイント順位でも2位以下を大きく引き離している(総ポイント数8242)。参考までに、二位以下は、在宅勤務(4006ポイント)、オンラインでの企業経営情報の公開(3160ポイント)が続く。
- 3-2-2 オンラインでの企業経営情報の公開
- (1)制約の現状
- 証券取引の公正と公平を維持するために「経営の重要な事項に関する情報」については、「少なくとも二社以上の報道機関に公表した時から12時間以上経過」してからでないとホームページに載せられないことになっている。12時間たたない内にホームページに載した場合、ホームページを見て株式を売買した人は、証券取引法が禁止するインサイダー取引を行ったとみなされる恐れがあるからである。
- しかし、ホームページの大きな魅力の一つに、速報性があり、発表と同時にホームページにも掲載したいというニーズが出てきている。
- (2)調査結果の特徴
- マスコミへの発表と同時に認められるべきとする回答が、無条件に(53%)及び一定ルールを定めた上で(27%)を合わせて8割を越えている。
- 規制やむなしとする回答が1割強存在する。
- 3-2-3 オンラインでの選挙運動
- (1)制約の現状
- 公職選挙法で選挙に利用できる「文書図画」は通常葉書とビラ等に限定されており、これ以外のものを使うと選挙違反となる。インターネットのホームページはこの「文書図画」にあたるとみなされるため、利用することができない。主たる禁止理由は、選挙運動に利用できる「文書図画」を自由に認めると、資力がある候補者が有利になるということにあるが、他方でインターネット等を利用した低廉な選挙活動への期待もある。
- また昨年のアメリカの大統領選挙では、ネットワーク上でもキャンペーンが行われ、有権者に政治的立場をアピールし理解を求める手段として、また、双方向性を生かして有権者の意見を政治に反映させる手段としての活用が進んでいる。
- (2)調査結果の特徴
- 認めるべきとする回答が8割を越えている。その内訳は、一定のルールを定めたうえでとする回答(43%)と、全く自由にとする回答(38%)が各々ほぼ4割である。
- 規制やむなしとする回答が1割強存在する。
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