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海外情報
2001年12月掲載

海外テレコム、この一年
暗いことのみ多かり

 いよいよ12月、ちょつと早いが、今年一年のニュースを整理してみた。

 いや予想以上に暗いトピックばかりで、改めて驚かされる。しかも最近になるほど深刻さが増している。

 米国では、1996年電気通信法で市場参入が大幅に自由化されたのをうけて、様々な新興事業者がそれこそ雨後の竹の子のように現れ、ニッチ事業も洗いなおされ、折からのITブームで資金調達も容易、根付くかと思われたのも束の間、昨年の春ごろからの潮目の逆転で、見るも無残な破産続き。大手の既存事業者まで屋台骨が揺るがされている今日この頃である。

 とりわけ往年の覇者、AT&TとBTの惨状には驚く以外ない。AT&Tに至っては、ケーブル・テレビ網を中核としたAll-distance Companyという壮大なビジョンがもろくも潰え去り、折角10兆円ちかくもの大金で買収したケーブル事業まで売りに出す有様。4分割して売れるものから処分する話合いをしているものの、買い手が二の足を踏んでいる。ニュージャージー州の大名御殿の本社ビルまで明渡すまで追いこまれ、かっての子会社であるベル・サウスなどのベル系地域電話会社に「対等」合併などを頼み込んで模索している。近い将来「AT&T」という名前はブランドとしてしか残っていないのではないかといわれだしている。かって系列のメーカーだったルーセント・テクノロジーも中核で成長力のある光部門を古河電工に売却するなど、なりふり構わぬ資金確保に身をやつしている。

 BTも、Vallance会長、Bonfield社長の派手な国際展開と、加えて携帯電話第3世代免許を欧州各国で競り合ったため負債が急増し、アットいう間に財務が極端に悪化した。格付が大幅に引き下げられ、資金難で両トップは相次いで退任に追い込まれた。リストラといってもビジョンなどといえた代物ではなく、名ばかり。とにかく資金確保のためにはナンデモアリの有様である。

 多少元気なのは、買収などに乗り遅れ、やむなく手をこまねいていたベル・サウスなどのごく一部の地域会社くらい。もっともベル系地域電話会社はおしなべてxDSL等の新分野を精力的にすばやく立ち上げている。FTもほぼフランス国内を独占している模様だ。

 事業者が財務を引き締め、WorldComのように世界中での建設投資をすべて中断するなどを典型に、設備投資を大幅に絞り込んでいるため、メーカー段階に大きな津波が押し寄せ、大幅な人員削減等などドラスティックなリストラが一般化している。

 情報通信分野が一体いつごろ回復に向かうかという論議も盛んなようだが、2003年より以前の回復は難しいという見方が多い。

この一年の歩み((3)は3月等、数字は月)

[規制当局]

  • FCC、AOLとタイム・ワーナーの合併を承認 (1)
  • FCC、大都市部以外で初のベル系地域電話会社の長距離通信進出を認可 (2)
  • FCC新委員長にパウエル委員が昇格。一層の規制緩和を提唱。 (2)
  • FCC、規制の総見直しの成果を発表 (2)
  • FCC、DTによるVoiceStream/Powertelの買収を認可 (4)
  • FCC、Verizonがマサチューセッツ州で長距離通信事業に参入する認可を付与 (4)
  • FCC、インターネット事業者(ISP)への通信料金の事業者間配分で新暫定基準 (4)
  • インターネット/データ等についてはベル系地域電話会社の長距離通信事業進出を容易にする法案、下院で提案 (5)
  • 仏政府、次世代携帯電話免許を2社に交付 (6)
  • FCC、2GHz帯での衛星移動通信新免許を8社に付与 (7)
  • FCC、Verizonにコネチカット州での長距離通信事業を認可 (7)
  • FCC、改訂コロケーション規則を制定 (7)
  • FCC、移動通信現況報告書(第6次)を公表 (7)
  • FCC、3G新世代携帯電話用の電波割当を先延ばし (7)
  • マイクロソフトの独禁法訴訟、連邦高裁が地裁の分割命令を破棄。ただし同社の行為
    は独禁法違反と認定。 (7)
  • 音声通信以外ではベル系地域電話会社に長距離通信事業への進出制限を撤廃する法案 (10)
  • 電気通信産業の回復はまだ先か (10)
  • 携帯電話免許料不払いのNextWave事件、和解で解決へ (10)
  • ワールドトレードセンタ事件をうけて緊急時に公衆保安当局に携帯電話の優先アクセスを確保する措置を検討 (10)
  • FCC、携帯電話事業者等の総保有周波数幅の上限を緩和 (11)
  • FCC、SBCに2州での長距離通信事業進出を許可 (11)
  • FCC、既存市内交換事業者(ILECs)の他の市内事業者への卸売サービスの基準策定へ (11)
  • FBI、通信事業者に犯罪捜査等のため通信傍受等の容易化協力を要請 (11)
  • 米国政府とNextWaveの無線免許の紛争和解で妥結。大手事業者が158.5億ドルでNextWaveの落札不払い免許を取得。 (11)
  • 米議会で審議中の「ベル系地域電話会社によるデータ通信での規制緩和法案」への反
    対ロビー活動高まる (11)

[事業者]

(米国)

  • AT&T、広帯域ケーブル事業のリストラで数百人の減員へ (2)
  • AT&T、第4四半期に大幅赤字を計上 (2)
  • AT&T、ニューヨークとテキサスでの市内電話サービスの中止も。 (2)
  • Verizon、ペンシルバニア州当局の「卸売/小売二社への分割構想」回避のため、競争促進施策を当局と約束 (4)
    アメリテック(SBCの一部)は、イリノイ州に競争約束不遵守で310万ドルの罰金 (4)
    AT&T、分割計画の細部発表 (4)
  • コンサート(AT&TとBTのグローバルJV)の赤字急増 (4)
  • AT&TとBT、コンサートの処理を検討。広い事業分野での国際提携も論議か。 (5)
  • AT&Tの第一四半期決算、3.66億ドルの赤字 (6)
  • PSINet、破産手続に (6)
  • 360networksも社債の利払い停止 (6)
  • ワールドコム、消費者担当と企業担当に二分割で株主の承認を獲得 (6)
  • Verizon、ニューヨーク市のトンネル内での通信も確保 (6)
  • Verizon、DSL事業者のCovadに訴訟提起 (6)
  • AT&T、ミシガン州で市内サービス提供開始へ (6)
  • AT&T、住宅用長距離通信料金を11%値上げへ (6)
  • AT&Tのケーブル・テレビジョン部門の売却交渉、挫折 (7)
  • AT&TにCATV(TCI)を売却したマローン氏、AT&Tの取締役を辞任。対抗AT&Tの動きか (7)
  • AT&TとBT、グローバル事業JV(Concert)の解消を検討 (7)
  • AT&T、携帯電話部門の分社を完了 (7)
  • WorldComから分離したMCI、業績反映株式として独り立ち (7)
  • インテルサット、民営化 (7)
  • AT&TのCATV事業の売却交渉進まず、さまざまな動き (8)
  • ベル・サウス、公衆電話サービスの廃止を2003年まで猶予 (8)
  • SBC、ミズリーおよびアーカンソー両州で長距離通信事業参入を申請 (8)
  • Qwest 、第2四半期に33億ドルもの記録的赤字を計上 (8)
  • Global Crossing、国防総省の契約破棄で打撃 (8)
  • Williams Communicationsも第2四半期赤字 (8)
  • Globalstar、赤字計上、人員半減、負債元利払停止 (8)
  • NextWave、FCCによる無線免許の没収で勝訴。ネットワーク建設資金も手当て。 (8)
  • Covadも破産手続へ移行 (8)
  • AT&T、元・子会社のベル・サウスに吸収合併されるか (9)
  • AT&Tの広帯域部門の売却も難航 (9)
  • AT&T、財務不安のインターネット事業者Exite@Homeの一部資産を買収へ (9)
  • テロ事件で通信網輻輳 (9)
  • テロ事件を機にイリジウムのサービス見直される (9)
  • Verizon、ペンシルバニア州で長距離通信事業の認可取得 (9)
  • ベル・サウス、地味な「本拠地中心主義」が好業績をもたらす (9)
  • Verizon、僻地の加入者回線等の資産売却を検討、公衆電話料金の値上げも。 (9)
  • Qwest、収益悪化、さらに6%の人員削減へ。 (9)
  • WorldCom、Rhythmsの資産を買収へ (9)
  • 新興の地域通信事業者の苦境、テロで一段と。 (9)
  • Metromedia、破産手続に移行を示唆 (9)
  • AT&TとBT、国際JVのコンサートに幕 (10)
  • AT&T、中核となる長距離通信事業、依然縮小続く (10)
  • 電気通信事業者の人員削減相次ぐ (10)
  • AT&Tの格付引下げ (10)
  • SBCも業績低迷、人員削減へ (10)
  • SBC、インターネット事業者のProdigyを完全買収へ (10)
  • ベル・サウスも3,000人削減へ (10)
  • スプリントは第3四半期赤字大幅増、6,000人をレイオフ。ただし携帯電話部門は順調。 (10)
  • WorldComも欧州中心に第二段の人員削減  (10)
  • 広帯域通信事業者のXO Communications社も600人(8%)の人員削減 (10)
  • インターネット電話事業者Net2Phone社、AT&T等3社のコンソーチアムが支配権 (10)
    無線方式のインターネット・アクセス事業者MobilStar社、事業停止 (10)
  • 広帯域分野では、新興通信事業者の挫折と対照的に既存大手事業者の健闘目立つ (11)
  • AT&Tのバッド・ニュース、依然相次ぐ (11)
  • 第3四半期の売上高7.7%減少、BTとのグローバル・ベンチャーであるコンサートの後始末で53億ドルの臨時損失計上、ケーブル・テレビジョン部門の動揺、子会社@Homeの破産手続、2,400人の削減、本社ビルの明渡し、等々。
  • Cingular Wireless、GSM方式を採択へ (11)
  • Verizonの第3四半期利益、46%減 (11)
  • Qwest、世界ネットワークの建設工事を中止 (11)
  • 衛星利用の企業むけインターネット・サービスを目指すAstrolink、解散へ (11)
  • AOL、スプリントおよびLevel 3と組んで通信サービスに進出 (11)
  • Williams Communicationsも第3四半期の損失拡大 (11)

(欧州)

  • BT、配当削減と投資削減を予告 (2)
  • BTのバランス会長、辞任 (4)
  • DT、第一四半期3.6億ドルの赤字 (5)
  • BT、リストラ計画を発表。携帯電話部門を分離へ。初の赤字、無配転落。格付ダウン。 (5)
  • DTとBT、英独で次世代携帯電話のインフラ整備で協同。コスト削減狙う。 (6)
  • BTとTelenor(ノルウェー)、スエーデンでの合弁事業を精算へ (6)
  • KPN(オランタ゛)も財務面で苦境に (6)
  • FT(フランス・テレコム)、スプリントの持分を売却 (6)
  • DT、ボイスストリームの買収を完了 (6)
  • BT、イタリーでの携帯電話子会社Bluでの持分売却が進展 (6)
  • KPNは依然Belgacomとの合併交渉を継続中 (6)
  • ボーダーホン、3G携帯電話サービスの開始を2003年に延期か (6)
  • DT(ドイツ・テレコム)、CATV事業の売却を先延ばし (8)
  • BT、第2四半期は一時収入を除き1.7億ドルの大幅赤字 (8)
  • BT、AT&Tとの合弁国際事業のコンサートを早期精算か (8)
  • ボーダーホン、次世代携帯電話(3G)で公表の通信速度を守れず (9)
  • KPNのトップ交代要件 (9)
  • DT(ドイツ・テレコム)のゾンマー社長、株主の批判で苦境 (9)
  • C&W、オーストラリアの子会社Optusのシンガポール・テレコムへの売却で手持資金大幅増 (9)
  • BT、携帯電話部門の分離で株主の承認を獲得 (10)
  • オランダのKPN、さらに4,800人の削減へ (10)
  • 英国の携帯電話事業者Orangeは、3Gへの投資を削減せず (10)
  • 欧州での次世代携帯電話の本格的展開は早くても2004年からか (10)
  • FT、ADSLに強気の投資 (11)
  • EC、欧州の衛星通信プロジェクト(Galileo:30個の通信衛星を打ち上げて米国のグローバル・ポジショニング・システムと競合するシステム)への英国の逡巡に苛立つ (11)
  • BTのBonfield社長、1月末で繰上げ退任へ (11)
  • BTの携帯電話部門独立(mmO2)、しかし前途は多難TelofonicaやTelecom Italiaによる買収説も。 (11)

(アジア等)

  • Korea Telecom、政府持株分をオークションで放出へ (9)
  • 香港政府、3G携帯電話免許の取得者を発表 (9)

[メーカー等]

  • ノーテル・ネットワークスとエリクソン、人員削減 (3)
  • アルカテル、ルーセントの買収を検討。ルーセント側は対等合併を要望。 (5)
  • アルカテルによるルーセントの買収挫折 (6)
  • マイクロソフトそ、新OSのWindows XPで電話サービスの提供を狙う (7)
  • Nortel、第2四半期に192億ドルもの巨額欠損を計上 (7)
  • ルーセント、光ファイバ部門を売却へ (7)
  • マルコーニ社、存立の危機に (9)
  • ルーセント、赤字で人員削減。2002年には黒字復帰を目指す。 (10)
  • Nortelも第3四半期に35億ドルの巨額赤字 (10)
  • Ericssonも第3四半期に4億ドルの記録的赤字。会長辞任へ。 (10)
  • ルーセントの光部門の古河電工への売却完了 (11)
  • アルカテル、さらに1万人の削減 (11)
寄稿 木村 寛治
編集室宛>nl@icr.co.jp
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