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2002年10月掲載 |
テレコム大不況でも比較的元気な米国の地域電話会社
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会社名 | 2002/第二四半期 (百万ドル) | 2001/第二四半期(百万ドル) | 増減率 | |
SBC | 事業収入 | 10,843 | 11,477 | - 5.5% |
事業支出 | 8,586 | 8,400 | 2.2 | |
利益 | 1,845 | 2,071 | -10.9 | |
Verizon | 事業収入 | 16,835 | 17,139 | - 1.8 |
事業支出 | 12,789 | 12,958 | - 1.3 | |
利益 | 2,095 | 2,101 | - 0 | |
Bell South | 事業収入 | 7,235 | 7,351 | - 1.6 |
事業支出 | 5,345 | 5,347 | - 0 | |
利益 | 996 | 1,085 | - 8.2 | |
Qwest | 事業収入 | 4,319 | 5,222 | - 17.3 |
事業支出 | 3,059 | 3,193 | - 4.2 | |
利益 | - 210(損失) | 128 | -- |
このようにQwest以外のベル系地域電話会社3社は、最近のテレコム不況で前年同期に比し業績が低迷し始めているが、まずまずの業績を維持している。
次表はVerizonの2002年前半6か月の事業別の構成比である。
この資料からわかるように、「テレコム」(固定電話等の伝統的事業)のウエイトは2/3程度まで落ち込み、「携帯電話事業」や「情報サービス」のウエイトが成長してきている。SBCとBell Southは、その携帯電話事業をCingularというJV(SBC 60%/Bell South40%)でおこなっている。
事業別 | 事業収入 | 事業利益 |
テレコム | 63% | 64% |
国内携帯電話 | 27% | 21% |
情報サービス | 5% | 10% |
国際事業 | 3% | 3% |
総額 | 330億ドル | 80億ドル |
長距離通信事業者が新興のGlobal Crossing、WorldCom、Qwestのみならず、古手のAT&TやSprintまでが軒並み経営不振で苦境に喘いでいるなか、ベル系地域電話会社がまずまずの業績を維持している背景としては次が挙げられよう。
1984年のAT&T分割で誕生した7社のベル系地域電話会社(持株会社。その傘下で複数の運営子会社が実際の市内/近距離市外サービスの提供にあたる。)は、親会社だったAT&Tが長距離通信事業者となったため、LATA(全米を約500の地域に区分)をまたがる長距離通信の取扱いを禁じられ、LATA内の近距離市外サービスと市内サービスに限定されてきた。
しかし、1996年電気通信法は、この禁止の原則は引継いだ(ただし、自社の営業区域以外では長距離通信の競争促進のため自由とした。)が、市内市場をライバル事業者に十分に開放したと認定されたベル系地域電話会社は、自己の営業区域から発信する長距離通信事業についても参入を認められることとなった。
一方、AT&T、MCI、スプリント等の長距離通信事業者は、料金値下げ競争で体力を消耗し財務も悪化して最近は休戦状態にあり、長距離通信料金はむしろ値上げに向かっているが、ベル系地域電話会社が長距離通信市場に本格的に参入してくれば、市内サービスと組合わせたサービス提供で競争力があるので、一層の苦境にたつ。ビジネス向けの長距離通信事業に絞込み、利用度数の低い消費者むけの長距離通信事業をお荷物と考える傾向すら出てきた。
ただ、ベル系地域電話会社がその市内市場を競争事業者に十分に解放したかどうかに関する州当局やFCCの審査はこれまで相当に厳しく、FCCはこれまで5件の申請を「市内開放不充分」として却下してきた。「FCCの審査が厳しすぎ、折角1996年電気通信法が認めたベル系地域電話会社の長距離通信への進出が一向に進まない」との批判が高まったこともある。また、ベル系地域電話会社の長距離通信事業の自由化については、議会で有力議員が、音声以外のデータ通信等については、即時全面解禁を内容とする法案を上程している。これは、ベル系地域電話会社側のロビー活動もさることながら、とくに都市部以外や僻地では、インターネット通信や広帯域通信等の迅速な普及のためにはベル系地域電話会社の力を借りざるを得ない事情もあるからである。
もっともこの1-2年、FCCの認可も次第に進み、9月にもFCCはBell Southにその営業区域の5州から発信する長距離通信事業を認可した。今回の認可により20州で認可が下りたこととなる。現在FCCが審査中の懸案は6州ある。なお、FCCは申請が提出されてから90日以内に審査を完了しなければならないこととされている。申請後にFCCと折衝し、撤回したものが16州ある。(これまでの州別の審査状況は、資料参照。)
ベル系地域電話会社の長距離通信進出申請のFCCによる認可状況
州 | 申請事業者 | 状況 | 申請月日 | 処理 |
California | SBC | 審査中 | 09/20/02 | 期限12/19/02 |
FL, TN | BellSouth | 審査中 | 09/20/02 | 期限12/19/02 |
Virginia | Verizon | 審査中 | 08/01/02 | 10/30/02 |
MT, UT, WA, & WY | QWEST | 撤回 | 07/12/02 | 09/10/02 |
NH, DE | Verizon | 審査中 | 06/27/02 | 期限09/25/02 |
AL, KY, MS, NC, SC | BellSouth | 認可済み | 06/20/02 | 09/18/02 |
CO, ID, IA, NE, & ND | QWEST | 撤回 | 06/13/02 | 09/10/02 |
New Jersey | Verizon | 認可済み | 03/26/02 | 06/24/02 |
Maine | Verizon | 認可済み | 3/21/02 | 6/19/02 |
Georgia/Louisiana | BellSouth | 認可済み | 2/14/02 | 5/15/02 |
Vermont | Verizon | 認可済み | 1/17/02 | 4/17/02 |
New Jersey | Verizon | 撤回 | 12/20/01 | 3/20/02 |
Rhode Island | Verizon | 認可済み | 11/26/01 | 2/24/02 |
Georgia/Louisiana | Bellsouth | 撤回 | 10/02/01 | 12/20/01 |
Arkansas/Missouri | SBC | 認可済み | 08/20/01 | 11/16/01 |
Pennsylvania | Verizon | 認可済み | 6/21/01 | 9/19/01 |
Connecticut | Verizon | 認可済み | 4/23/01 | 7/20/01 |
Missouri | SBC | 撤回 | 4/4/01 | 6/7/01 |
Massachusetts | Verizon | 認可済み | 1/16/01 | 4/16/01 |
Kansas/Oklahoma | SBC | 認可済み | 10/26/00 | 1/22/01 |
Massachusetts | Verizon | 撤回 | 9/22/00 | 12/18/00 |
Texas | SBC | 認可済み | 4/5/00 | 6/30/00 |
Texas | SBC | 撤回 | 1/10/00 | 4/05/00 |
New York | Verizon | 認可済み | 9/29/99 | 12/22/99 |
Louisiana | BellSouth | 却下 | 7/9/98 | 10/13/98 |
Louisiana | BellSouth | 却下 | 11/6/97 | 2/4/98 |
South Carolina | BellSouth | 却下 | 9/30/97 | 12/24/97 |
Michigan | Ameritech | 却下 | 5/21/97 | 8/19/97 |
Oklahoma | SBC | 却下 | 4/11/97 | 6/26/97 |
Michigan | Ameritech | 撤回 | 1/02/97 | 2/11/97 |
9月26日、SBCは設備投資の削減とともに要員を11,000名も削減すると発表し、大きな波紋を呼んでいる。同社はその原因を長引くテレコム不況とライバル事業者の不当な競争に帰している。同社の従業員数は、2001年6月には216千名だったものが2002年6月には186千名に減っている。そのうえさらに今回の削減である。他のベル系地域電話会社も軒並み要員削減に乗出している。Qwestは2000年のUS West買収直後にUS Westを中心に厳しい要員削減を行い、業界を驚かしたが、その当時は他のベル系地域電話会社は減員は行っていなかった。携帯電話やインターネット・メールにトラヒックをとられ、固定電話は退潮にある。
Qwest以外のベル系地域電話会社3社の株価も、今年初めには40-50ドル台だったものが最近は20ドル近辺まで大幅に値下がりしている。地域電話会社もテレコム台風の被害をうけるのか-----今後の推移は注目に値する。
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