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2003年4月掲載 |
「平成の市町村大合併」
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協議会・研究会の数 | 調達規模(億円) | 累計(億円) | |
「法定協議会」がすべて合併する場合 | 192 | 1,194 | − |
「任意協議会」がすべて合併する場合 | 195 | 1,434 | 2,628 |
「研究会レベル」がすべて合併する場合 | 327 | 3,234 | 5,862 |
システム統合の形態にはいくつかのパターンがある。(1)新規のシステム構築、(2)既存システムを活用し、1自治体のシステムに統合、(3)旧市町村が利用していたシステムの利点を生かして、業務ごとに旧市町村のシステムを採用、(4)ブリッジ(橋渡し)のシステムを導入し、旧市町村の既存のシステムを連携と――いう4つが、主として考えられる。
合併に向けて時間と費用が存分にあるならば、業務分析を綿密に行い、新しい自治体の規模に合った、新たなシステムを構築することが理想的である。しかしながら、現実的には、時間や費用面での制約があるなかで、この方式の選択は難しい。
名目上は新設合併であっても、例えば人口規模で10倍もの格差があるならば、(2)(既存システムを活用し、1自治体のシステムに統合)にするのが合理的だ。人口規模の大きな自治体のシステムに合わせれば、データ移行の手間は、規模の小さいほうの自治体分を移行するだけでよい。また、統合後のシステム利用者、すなわち職員の研修も、最小限で済むだろう。
合併する自治体の規模が同一程度の場合、(3)の選択肢もある。それぞれの団体のシステムの利点を活かすことが可能であるが、複数ベンダー(メーカー)と対応する必要があるため、1市(1社)のシステムに統合する場合に比べて、やや手間がかかる。(4)(ブリッジ連携)には、それぞれのシステムをすべて無駄なく活用できるというメリットもあるが、前例もなく、あまり現実的な方法ではない。
また、(1)〜(4)のようなシステムのハード的な統合パターンの検討に加え、システム運用のアウトソーシングや、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)の利用など、将来的な運用形態の検討を行うことも考えられる。
合併前の各市町村が運用しているシステムは、当然、同一のベンダーのものであるとは限らない。合併を機に、住民記録や税務などのシステムが1社のものに「リストラ」されるなら、ベンダーにとってのビジネスチャンスは純減になる。ベンダーにとっては死活問題になるため、囲い込みに必死となるだろう。逆に、ここをクリアすれば、以後の運用やメンテナンスの受注が約束される。今後の電子自治体ビジネスにおいても、主導権を握ることができる。様々な理由をつけて、自社に有利な方法を提案し、少しでも自らの生き残る道を模索しようとする。
今後、こうしたシステム統合が、合併特例法の期限である05年3月末に向けて、全国のあちこちで起こることになろう。全国の自治体システムのシェアが再編される。
一方で、今後この特需を前に、SE(システム・エンジニア)が全国的に不足するという事態が想定される。旧静岡市と清水市の合併では、ピーク時には、200人以上ものベンダーのSEが開発業務にあたった。また、合併の前後で、危機管理体制を立ち上げ、新組織における業務が波に乗る5月の半ば頃までは、ベンダーのSEが、サポートのため張り付くことになる。
今後2年間のうちに、大小合わせて最大700件もの案件が同時並行的に起こるとすれば、公共系システムの開発に長けたSEが、全国的に不足するような事態が想定されよう。このため自治体にとっても、システム統合方針を早期に決定し、早いうちに優秀なベンダーにあたりをつけることが重要である。
「シェア再編」現象と「SE不足」現象――。今後は、元請けベンダーのイニシアチブのもと、ベンダー間で人材を融通しあう、あるいは、異なる合併案件業務を互いに再委託するようなことが起きるかもしれない。また、在京の大手ベンダーだけでなく、地場の企業に対する開発業務の再委託なども想定される。地元のSI(システム・インテグレーター)が活躍するいい機会でもある。
合併特例法のタイムリミットはあと2年であるが、冒頭で触れたように、システムの統合には余裕を持って臨む必要がある。
システム統合を優先的に考えて、合併は年末年始やゴールデンウィークのような大型連休に合わせたい。反対に、05年3月末のギリギリの合併は、なるべく避けたい。だとすれば、2年後に目標を定めている自治体なら、04年12月〜05年1月の年末年始に照準を合わせることが望ましい。残された期間は、実質あと21ヶ月弱となる。
単に人が手配できればいい、という問題ではない。まず初期段階では、システム統合作業の方向性や庁内の体制をしっかり定めることが必要だ。統合方針を早めに固め、開発やテストには十分な時間を取るというような、メリハリをつけたプランニングが、当事者の自治体に強く求められる。
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