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2004年11月掲載 |
米国でまたも既存地域事業者の投資インセンティブ強化政策
−FTTHでのライバルへの設備貸与義務免除をFTTCにも拡大−
米国では、昨年FCCが、光ファイバについては、UNE(市内電話サービス要素のアンバンドリング)制度のもとで既存地域事業者に課されていたライバル事業者への設備貸与応諾義務を免除する大きな政策転換を行った。
これは、高度通信の担い手の中核となる加入者光ファイバの早期普及/展開を図るため既存地域事業者の設備投資インセンティブを強化することが目的であった。折角多額の設備投資で新設備を作っても、UNEやリセール制度でそれを競争事業者に貸与する義務がついていたのでは、既存地域事業者が二の足を踏むのは当然である。 1996年電気通信法は「競争促進」をはかる一方で、同時に「高度通信のあまねく全国での早期普及」を重要な政策目標として掲げ、FCCに具体的措置とるよう指示している。しかし、都市部以外の地方やとりわけ僻地では、競争事業者が採算面でサービス提供を躊躇し、インフラ整備にも応じないケースが多く、既存地域事業者に期待せざるをえないという事情がある。 こうしたFCCの政策転換を好感して、ベル系地域電話会社の一部は相次いで、フアィバ・ツゥ・ザ・ホーム(FTTH)構想の繰上げ着手を打出している。 FTTCにも貸与義務免除を拡大FCCは10月14日、「住宅街への広帯域普及の障壁をさらに縮減するため」と称して、加入者回線の途中までは光ファイバだが最後の部分(500フイート以内)は銅線のフアィバ・ツゥ・ザ・カーブ(FTTC)回線についても、FTTH同様、既存地域事業者の貸与義務を免除することを明示した。同時にまた、パケット網を競争事業者に貸与する場合に必要となるTDM機能を付加しないでもよい旨も裁定した。 FCCのプレス・レリーズ(2004/10/14)は次のように述べている。
このFTTCは、第三位のベル系地域電話会社のBell Southが提案していたもので、一本の光ファイバの先端に複数の銅線を結び、複数の顧客に接続する方式である。光ファイバを複数の顧客で共用するため、設備投資額を抑制できる利点がある。同社によれば一顧客あたり1,000ドル程度の建設費の節約が可能になるという。 ベル系地域電話会社はさっそく敷設計画繰上げで応えるこうしたFCCの転換を好感して、さっそく第二位のベル系地域電話会社のSBCは、家庭や事業所顧客までフアィバ・ツゥ・ザ・ホーム(FTTH)を敷設する計画を繰り上げ具体化すると発表し、応えた。 Telephony誌(2004/10/14)によれば、同社CEOのWhitacre は、「さきに、規制条件が好ましいものとなればという条件つきで、fiber-to-the-node (FTTN)テクノロジーを用いて5年間で建設する構想を発表していたが、本日これを繰り上げ2-3年のうちに展開する」と表明した。「本日のFCCの明示で光ファイバ構想の着手に十分な環境が整ったと判断した」としている。Bell Southも、「当社の要請がFCCにより受け入れられ、将来の規制の明確化がなされたので、2005年には光ファイバ・プラットフォームを備えた家庭の比率が40%まで高まるよう計画する」としている。 FCCは既存地域事業者寄りの政策を立て続けにFCCは数週間前にも、「集合住宅では光ファイバのアンバンドリングの義務はない」という裁定を出している。また、一部の州当局がアンバンドリング義務を通信事業者に課す規則制定をはかる動きがあるのに対し、州にはそうした権限はないとの判断を近々のうちに打出すとの信頼すべき筋からの情報もある。いずれもが既存地域事業者寄りの政策である。 市内電話市場での競争は既存地域事業者に有利に米国の市内電話市場では、1996年電気通信法が新規参入の便法として設けた「リセール」と「UNE」の二制度のおかげで、長距離通信事業者等を中心にした競争事業者がこれまで順調に顧客を既存地域事業者から奪ってきた。こうした背景には、UNEの事業者間料金については、FCC規則が、既存地域事業者の実際のコストより大幅に安いコスト算出するTELRIC(全要素長期増分コスト)という新規の算定方式を各州に強制したため、競争事業者は大幅割引の事業者間料金で既存事業者の設備をリースでき、利潤を付加しても既存地域事業者の顧客小売料金よりも安い顧客料金を設定できたという事情が貢献してきた。 2003年6月現在で、競争市内事業者は全国のエンドユーザーの市内回線総数1億8,300万回線の14.7%に相当する2,690万回線にサービス提供を行っている。既存地域事業者側の報告によれば、2003年6月30日現在で、220万回線を「リセール方式」で、また、1,720万回線を「UNE(アンバンドリング)方式」で競争事業者に提供している。競争事業者回線の約1/4は競争事業者の自前回線によるものである。(FCC資料:2004/5) しかし、2004年3月、連邦控訴裁判所がFCCのUNE規則を無効としたため、現在はUNEの法的根拠がなくなった状態で混乱している。FCCは鋭意、新UNE市内競争規則の策定を目指しているが、これまでの「とにかく競争増進」一辺倒の方針を反省し、UNE事業者間料金のある程度の値上げもやむなしとの姿勢を表明している。競争事業者側は、事業者間料金が値上がりしたのでは、折角市内市場に参入しても採算が問題だとして、AT&TやMCIはことに住宅顧客については今後積極的なマーケティングを行わない方針を打出し、市内での戦線を縮小しはじめている。 既存地域事業者の中核を占めるベル系地域電話会社は、1984年のAT&T分割以降、長距離通信事業を禁止されてきたが、1996年電気通信法により市内網のライバルへの開放を条件に、州単位に解禁され、昨年全米で長距離通信市場への進出が可能となり、最近はかなりのスピードで長距離通信顧客を獲得しつつある。また、本来の市内通信と新規の長距離通信をパッケージにした便利なプランを売り込み、成功しつつあり、その勢いをかって、既存地域事業者は一旦は長距離通信事業者等の競争事業者に奪取された顧客を奪還しつつある。 広帯域市場では大手地域電話会社とCATV会社の激突へ第一ラウンドの「市内通信市場での電話事業者同士の競争」では、既存地域事業者が優勢になりつつあり、一時は攻勢に出ていた競争事業者側は上記のようにFCCの方針変更もあって活力を失いつつある。財務状況を見ても、既存地域事業者は、携帯電話子会社やADSL事業での善戦で固定電話事業の縮減を補って、まずまずの業績を挙げているのに対し、競争事業者の中核である長距離通信事業者(AT&T、MCI、Sprint等)は、いずれも業績が低迷/縮小し、会社更正法の適用に追込まれたり、買収の標的化している。 次の第二ラウンドは、第一ラウンドの勝者の既存地域電話事業者とCATV(ケーブル)事業者との戦いである。両者はさしむき、高速インターネット接続で競争しつつあるが、お互いに相手の本業にも進出を策し始めている。近未来は、電気通信事業者とケーブル事業者との正面衝突の競争が必至となろう。 (ワシントン・ポスト:2004/10/22) 電力線利用の広帯域サービスにもGoFCCは、既に電話会社とケーブル会社の熾烈な顧客争奪戦が始まっている広帯域サービス市場に更なる競争を持ち込んだ。10月14日、FCCは、電力線利用の広帯域通信に関する規則を採択した。以下はFCCのプレス・レリーズである。
電力会社は送電網を全国に張り巡らしており、各家庭や事業所にも配電設備を引き込んでいる。インフラを既にもっているという位置エネルギーで参入も容易という利点を持っている。Access BPLは、近い将来、電力会社の売上高の相当な比率を占めることになるかもしれないというアナリストも多い。 わが国でも総務省や松下電器等が電力線利用の広帯域サービスの実用化をテスト中というが、米国での具体化には目が離せないようである |
寄稿 木村 寛治 編集室宛>nl@icr.co.jp |
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