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2008年11月掲載

FCC、テレビ放送帯の空きスペース活用に踏み切る
−メディア連合の反対を押し切り、斬新な無線サービス創造の揺り籠づくり−

 FCCは11月4日に、新しい革新的な無線サービス造りの土台となる施策を打ち出した。

 2009年2月17日に予定されているテレビのアナログからデジタルへの移行の完了とともに、テレビ放送用周波数であっても、テレビなどの免許された他のサービスのためには現に利用されていない周波数(場所によっては利用されていないこうした周波数は「テレビwhite space」と言われている)において、型式認定された新たな低出力の送信機器を煩雑な無線免許手続を必要とせずに利用できるようにする規則制定作業を開始したのである。こうしたwhite space 機器(white space devices :WSDs)を、テレビ周波数の中に持ち込むことが認められることとなる。

 電波伝搬特性の極めて良質ながら休眠している相当な量の周波数の活用に道を開くこととなる。また、ビジネスと消費者の双方にとって有用な新しく革新的で免許不要な機器が、テレビ周波数帯の中で既存のテレビ放送やその他の免許されたサービスを電波干渉などで阻害することなく、開発されるようになる。

■メディア側は反対

 しかし、テレビ局などを中心に、この周波数帯でのサービス提供を認可されている事業者は、電波干渉の恐れがあるとして反対している。10月末にも、NBC Universal, Walt Disney, CBS, News Corp等がFCCあてに書簡で「大規模な電波干渉等の恐れがあるので、周波数を利用させるべきではない」との反対意見を提出した。

■FCCは、すでにプロトタイプ機器のテスト済み

 FCCは、その研究所内と実際の外部環境の双方で、実際に干渉が起こるかどうかの検証を行うこととし、2008年1月17日にテストプランを公示した。そのテストでの試験用に提出されたAdaptrum, the Institute for Infocomm Research (I2R), Microsoft Corporation, Motorola Inc.および Philips Electronics North America (Philips)の5種類のWSDsが試された。FCCの技術テクノロジー部は、その結果を10月15日に「テレビwhite space用機器の実験結果に関する第二次の報告書」として公表した。

 その報告書は、次のように述べて、実用にgo信号を出せるとしている。すなわち、

「FCCの研究所部門は、「テレビwhite space」用機器のプロトタイプの送信機能とspectrum sensingの測定研究の第2フェーズを完了した。これらの機器は、テレビ放送帯域の周波数のうちでもそれぞれのローカル地域では用いられていない周波数で動作することとなる低出力機器の機能を提示するために開発が行なわれてきている。この点では、(放送に干渉しないこと)を立証する責任はまっとうされたものと確信している。われわれは、「現在位置測定」(geo-location)および 「データベース制度」(database access techniques )と併用して、「周波数検知」(spectrum sensing)[訳注: 特定の周波数が他人に利用されているかどうかをまず検知すること。]をも用いることで、適切な技術基準さえあれば、今日唯今でもこれらの機器を用いることを認めうるし、また、今後開発追加されるであろう様々な機器についても、それがspectrum sensingのみを用もいることになった場合でも、対処が可能であろうという結果に満足している。」

■電波検知機能と地域別電波利用データベースの併用で干渉防止

 FCCは、11月4日の公開審議でWSDsの規則制定にgo信号を出したが、同日、そのプレスレリーズで次のような二重三重の予防措置をつけるから心配はないとしている。

「これらの諸規則は、テレビのwhite spaceにおいて無線免許なしの機器の運用が認められるための第一歩となるものであり、既存のサービスを有害な電波干渉から守るための熟慮された幾多のセーフガードを含むものである。これらの規則は、固定およびパーソナルで持ち運べるものの双方の免許不要機器を許可するものである。これらの機器は、周波数が利用されているかどうかの周波数検知テクノロジー(spectrum-sensing technology)に加え、現在位置測定機能と既存の諸サービス、すなわち、フル出力および低出力のテレビ局やケーブル・システムのheadendsなどに関するデータベースへのインターネット経由でのアクセス機能を備えなければならない。このデータベースは、その場所でどの周波数が利用されているかを周知するものとなる。」
「すべてのwhite space機器は、FCC研究所により発行される機器型式認定書(equipment certification)が必要とされる。研究所は、前述の諸要件を満足しているかどうかのテストのために見本の提出を求めることとなる。」
「FCCは、また、現在位置測定機能とデータベースへのアクセス機能を持たないが、有害な干渉の発生を避けるため周波数検知テクノロジーだけに依存する機器の認定も認める予定である。」
「審査は公開されたプロセスであるため、すべての(型式認定)申請はFCCの措置以前に公開コメントのために公表される。これらの機器は、FCCの研究所により、「動作成績の確認基準」(Proof of Performance standard)に照らして、研究所内および実用世界であるフィールドの二種類のテストにかけられ、干渉などを生じないことを確認する。(先ごろ提出された)研究所スタッフのこれまでの検証テストの報告書もコメントの対象となり、誰でもが意見を申し出ることができる。現在の案では、かかる機器の認定はFCCの全体会議での承認が必要とされる予定である。」
「FCCは、テレビwhite spaceの導入にあたり、注意深く監視、モニターを行うこととなる。FCCは、万一有害な干渉を引き起こす機器が見つかった場合には、市場から除去する迅速な措置をとる所存であり、関係者に対しても起こった干渉に対して適切なアクションをとることを義務づけるものである。」

■常に革新的な新サービスの開発に前向きなFCC

 FCCはこれから技術基準をも含め、いろいろな規則を制定するので、実際にこうした機器が市場に出るまでにはなお時間がかかろう。どのような機器やサービスが生まれるかは分からない。

 しかし、テレビのデジタル化という機会をとらえて、使い勝手のよいこの周波数帯域を一部でも休眠させず、有効に活用して新サービス開発に役立てていこうとする姿勢は、敬服に値しよう。先頃のこのテレビ用の周波数帯域のオークションでも、まだ実現はしていないまでも、一部をイヤマークして災害時等に対処するため全国的な官民パートナーシップの緊急通信網用に別枠としたのも、FCCのこうした積極的な政策立案機能の一例である。
寄稿 木村 寛治
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