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ICR View
2009年9月11日掲載

情報格差の再認識とICTの活用

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 先月、8月30日の衆議院総選挙の結果は、政権交代という劇的な結果で終了しました。15年前に、政権交代が起こり易い二大政党制を目指して衆議院に小選挙区比例代表並立制が導入されて以来初めての本格的な政権交代が実現しました。それと同時に、今回の選挙は各党ともにマニフェストを揃えて政策選択を訴えたこれまでにないものでした。

 私は、先月の本欄に「マニフェスト(政権公約)と情報通信産業・サービス」を掲載して、主に自民党と民主党のマニフェスト及び政策集の中から情報通信に関係する部分を取り上げ、比較を行いました。そこで、今回は、政権与党となった民主党のマニフェスト・政策集に記載されている情報通信関係項目の中から今後の課題や方向性に関連するところを取り上げてみたい。

 個別の政策項目に対しては種々の立場があると思いますが、最も重要なことは、ICT産業についてのマクロ俯瞰力です。ICTを今後の我が国経済の成長・発展の礎として捉え、ハード面だけでなくソフト面からも産業構造の重要な柱として位置付け、人材育成及び雇用まで見据えた一貫した政策が必要です。ICT経済の拡がりは既に自動車産業を超える規模となっているだけに重要性が一層高まっています。

 その関連では、民主党の政策集の中に「情報格差の解消」の項目が盛り込まれているので、今後、具体的な施策が立案、実行されて行くことでしょう。期待したいと思います。ただ、本件を情報ネットワーク構築の地域格差に課題をしぼり込んでいるところが気になります。これまで政府のIT戦略本部が取りまとめた、「i-Japan戦略2015」の中でも指摘されているように、日本のICT産業は、インフラと技術は一流だが、その活用は世界の中でも遅れています(注)。特に、行政・医療・教育機関などの公的・準公的セクションでの活用が進んでいません。

(注)ICT競争力ランキング17位(2008年 世界経済フォーラム)

 ICTの利用者からは、安心・安全、生活支援、満足度向上など、その効果や貢献が実感できるサービスが求められており、特に、弱者(デジタル・ディバイド)を意識したICT活用が急がれます。高齢化社会、また、人々の移動や社会的流動が一層進むこれからの社会では、従来に増してICTが効用を発揮すると思います。情報格差は、ハードの地域格差だけではなく、むしろ、人々の間のソフト的な情報利用の格差に見られるのではないでしょうか。

 経済的格差が拡大していると指摘されている今日、ICTの活用によって情報格差を少しでも小さくすることの社会的・経済的効用は非常に大きいので、例えば、民主党の政策集にある「税・社会保障共通の番号の導入」の積極的な取り組みを見守りたいと思っています。

 最後に、ICT活用の推進組織・体制として、公共および民間機関・組織それぞれにCIO(Chief Information Officer)を配置して、少なくとも5年以上にわたる方針・計画を立案し、実行していくという施策の継続性を求めたい。ICTを上手に取り入れ、活用して高いお客様満足度を継続している企業では、長期間のCIOの配置と活動がベースになっている、という事実があります。特に、公的セクションにこのことを希望しておきたい。

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