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2010年12月9日掲載

広州アジア大会と脱「脱亜入欧」

グローバル研究G
グループリーダー 真崎 秀介
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「日本完敗、中韓の背中遠く」

 中国では10月末までの半年間の上海万博の閉幕の余韻が冷めやらぬなか、11月12日から27日までの2週間にわたり広州アジア大会※が開催されました。今回のアジア大会は中国をはじめとしてアジア諸国の存在感が相対的に大きくなるなかで開催された大会であり、アジアの45カ国が参加し、42競技に9700名以上が参加する過去最大規模の大会でした。
 日本の今回の目標は韓国を上回る60個以上の金メダル数の獲得でしたが、結果は競技数が増えたにもかかわらず、韓国の金メダル数を大きく下回り、前回の金メダル数にも達しない48個に留まりました。個々にはサッカーなど団体競技では予想以上の活躍があったものの総括としては「日本完敗、中韓の背中遠く」という新聞の見出しとなっています。

※中国広州で行われた第16回アジア競技大会の略称。アジアの国々のための総合競技大会であることから、「アジア版オリンピック」ともいわれている。

脱「脱亜入欧」のススメ

 たかがスポーツという向きもありますが、スポーツは国の経済力を測る一つの指標といえるのではないでしょうか。中国は今年、GDPで日本を追い越し、世界第2位の経済大国に成長し、韓国はサムスンや現代自動車などグローバル市場で日本企業を凌駕しています。
 また、中国、韓国に限らずアジア諸国も経済力の高まりとともにスポーツにも力を入れてきており、アジア大会のレベルが確実に高まってきています。今やアジア大会に勝てなければオリンピックでは勝てないと言われるようになってきています。
 しかし、日本は明治以来の「脱亜入欧」思想が抜けきらないためか、アジア大会直前の世界選手権などを重視する傾向があり、アジア大会を次のオリンピックのステップに過ぎないという見方がここのところのアジア大会における日本の成績不振の一因かもしれません。

就職氷河期

 国内の話題に移りますが、アジア大会の最中に日本では「就職氷河期」のニュースが報じられました。今年の大卒者の就職内定が6割弱程度しか決まっておらず、2000年を下回る超氷河期の状況ということです。スポーツの世界では「金」メダルを獲得するのは「オンリーワンではなく、ナンバーワン」を目指す選手で弛まぬ努力と工夫が必要です。数年前に流行ったSMAPの「世界に一つだけの花」は「ゆとり教育」の象徴ともいえる歌でした。
 グローバルを目指す日本企業も「オンリーワンではなく、ナンバーワン」を目指し努力する人材を求めているのではないでしょうか。マンガとゲームに明け暮れて、勉強を怠ったゆとり教育世代の大学生をグローバル市場競争に晒されている日本企業が簡単に採用するとは思えません。
 特に今後の成長が期待されるアジア・新興国に進出しようとする日本企業は現地化を図るためにも目の輝いている中国、韓国、アジアの学生を採用する方向に向かうのは当然かもしれません。厳しいようですが「就職氷河期」で就職先の決まらない卒業生は経済不況のせいばかりではなく、自らが招いた自己責任と考えるべきでしょう。

グローバル人材の育成を

 日本企業の上半期の決算を見てみるとグローバル展開を図っている企業が好業績を挙げています。日本国内の内需の縮退と円高のため生き残りをかけた日本企業の海外進出がこれからも続くものと思われます。ICT分野においても韓国のサムスンはスマートフォンで日本へ進出を果たし、ようやく日本メーカーもスマートフォンで海外再進出を図ろうという機運にあります。サムスンの強みはそのグローバル化、特に人材のグローバル化が進んでいる点にあると言われています。日本の若者の内向き志向が指摘されていますが、日本企業のグローバル化のためにはグローバル人材の育成、海外勤務者の評価の見直しが必要だと思われます。海外勤務者は語学は勿論、異文化適応力やマネジメント能力など個々人の資質が国内勤務者以上に問われます。グローバル化を目指す日本企業にとっては優秀な社員が海外勤務を希望するインセンティブをどう与えるかを早急に再検討する必要があると思います。

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