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2014年6月9日掲載

SC業界における光コラボレーションモデル活用の可能性

(株)情報通信総合研究所
マーケティング・ソリューション研究グループ
部長 松田 淳

NTTが先月発表した「光コラボレーションモデル」(※1)が通信業界内外で注目されている。電力系通信事業者やケーブルテレビ事業者による総務大臣への要望書(※2)がどう扱われるか現時点では不明だが、当初予定通りであれば光アクセスのサービス卸は2014年度第3四半期以降、提供が開始されることになる。

そもそも光コラボレーションモデルは、「多様なプレイヤーが、NTT東西から光アクセスの『サービス卸』を受け、自社の強みと組み合わせ、自社サービスとしてエンドユーザに提供」するという内容。発表資料ではサービス提供プレイヤーのメリットとして、「固定と無線を意識しない通信環境により、多様な産業のリアルビジネスと通信を融合させた新サービスを実現可能に」なる点を挙げている。

NTT東西がこれまでエンドユーザに直接、光アクセスサービスを提供していたのと異なり、光コラボレーションモデルでは「サービス卸」を受けた事業者が自社サービスとして光アクセスを提供するため、NTT東西にとっても大きなビジネスモデルの変革になる。

「光コラボレーションモデル」の活用イメージとして挙げられているのは通信事業者と医療機関、家電メーカー、ハウスメーカー等が連携して健康のトータルサポートサービスを提供する例だが、この例に留まらず、多種多様な産業・業界で光コラボレーションモデルが活用されることを期待したい。

その産業・業界の一つとして注目したいのがショッピングセンター(以下、SC)業界だ。日本ショッピングセンター協会(※3)によれば現在、日本国内に3,134のSCが存在する(2013年末時点)。いわゆる商業ビル形態のSCが大部分を占めるが、駅ビルや複合ビル、地下街や高架下など、SCの形態も様々である。 この3,143のSCに入居する総テナント数は15万4,659店。SCの年間売上規模は昨年1年間で約29兆円に達しており、売上規模でみるとチェーンストアの2倍以上、百貨店の4倍以上の規模がある。

SCというと、複数の店舗が集合している商業施設というイメージ通りで概ね正解だが、日本SC協会は「ショッピングセンターとは、一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるものをいう。その立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便性、快適性、娯楽性等を提供するなど、生活者ニーズに応えるコミュニティ施設として都市機能の一翼を担うものである」と定義しており、SCとは単に買い物ができるだけの場所ではない。

先日、あるSCを利用したが、駐車場に停めた車を洗車してくれるサービスがあるのには驚いた。SCに車で来て駐車場に停め、お願いしておけば買い物をしている間に洗車してくれる。帰るときにはすっかり洗いあがってきれいになった車で帰ることができるというサービスだ。立地より差はあろうが、総じて車でSCに買い物をしにくる客は多い。また、買い物している間、車はそのままだ。そこに着眼したサービスだろうが、利便性にも富むうえ、快適で非常にありがたい。行けばあらゆるニーズを満たしてくれる場所、それがSCだといっても言い過ぎではないだろう。

さて、SCの定義に戻るが、SCとは「一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるもの」であり、その計画、開発、所有、管理運営をする主体は商業ディベロッパである。商業ディベロッパの出自は小売業であることが多いが、不動産管理業や不動産業に属するディベロッパやSCを専業とするディベロッパがあることからわかるように、そのビジネスの本質は開発した空間をテナントに貸し出し、テナントは売上に応じた賃料を支払うという不動産賃貸ビジネスである。

より具体的にいえば、商業ディベロッパと各テナントの間では多くの場合、定期借家契約を締結しており、商業ディベロッパはSC全体としての売上最大化のため、どのようなテナントに入居してもらうかに腐心する(テナントミックスとテナントリーシング)。SCに出店した各テナントは、SC全体の運営に協力しながら自店の売上獲得を目指す。SCが単に個別店舗の集合体というわけではなく、館全体で統一感があるのは商業ディベロッパとテナントの協力関係の賜物でもある。

SCという場は、それを運営する商業ディベロッパと物販や飲食、サービスを提供する様々なテナントが、こうしたビジネス的な結びつきのもと来客者のニーズを満たし、これまで存在感を高めてきた。情報通信業界でホットなキーワードとなっているO2OのOffline側を支える存在がSCと言ってもいい。
SCにはすでに医療サービスも入ってきているし、教育サービスも入ってきている。これからもますます、お客様のニーズを満たすあらゆる業界が集う場になっていくであろう。

冒頭に述べた光コラボレーションモデルの活用を商業ディベロッパが直接担うことになるのか、あるいは商業ディベロッパに近い通信事業者をたててその事業者が担うことになるのか、選択肢はいくつかありえよう。いずれであっても、SCという場には多様なプレイヤーが情報通信サービスを活用して、テナントを含め、その先にいるお客様のニーズを満たすことによるビジネスの可能性に溢れている。SCに行くのが好きな一人の生活者として、この業界における光コラボレーションモデル活用の可能性に期待したい。

※1 NTT「“光コラボレーションモデル” 〜 新たな価値創造への貢献 〜」(2014年5月13日) http://www.ntt.co.jp/news2014/1405jznv/ndyb140513d_01.html

※2 「NTTによる“光アクセスの「サービス卸」”に対する要望書の提出について」(2014年6月5日) http://www.k-opti.com/press/2014/press17.html

※3 日本ショッピングセンター協会「SC情報」http://www.jcsc.or.jp/data/

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