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情報通信 ニュースの正鵠
2008年6月掲載

NGNのキラーアプリ

グローバル研究グループ 清水 憲人

  3月末にNTTが、次世代ネットワーク(NGN)の商用サービス「フレッツ光ネクスト」の提供を開始してから早3ヶ月。NGNを題材としたセミナーが各所で開催されるなど、関連業界の取り組みも徐々に熱を帯びてきた。

 NGNは、大容量で、信頼性が高く、QOS(通信品質)の確保を可能にする新時代の通信ネットワークである。また、融合サービスや、サードパーティによるサービス提供を容易にするメリットもある。さらに従来の通信ネットワークと比べて運営コストを低く抑えることができるなど、良いことづくめである。

 しかしながら、具体的なサービス・イメージが出てこないと、エンドユーザに対する恩恵が今ひとつピンとこないというのもまた事実。「セキュリティの向上」や「高精彩映像伝送の実現」は、確かに大きなメリットなのだが、当たり前すぎて驚きがない。

 そんななか、既に実現されており、なおかつ、NGNの凄さを体感させてくれるアプリケーションがある。それは「高音質電話」だ。これは、通常の電話網では3.4kHzまでで伝送される音声通話の帯域を7kHzにまで拡大し、音質を向上させたものだ。「NGNで音声!?」と訝しく思うかもしれないが、その差は歴然としている。「3.4kHz対7kHz」という数値の比較から想像するよりも、はるかに大きな違いがある。このクリアな高音質電話が普及すれば、息子や孫になりすましてお金を振り込ませる「振り込め詐欺」の被害も激減するだろう。

 問題は、対応端末がまだ高いことだ。今のところオフィスでの利用を想定した、多地点間通話機能付きの端末しかないことが原因だ。通話料は標準音質電話と同じなので、端末価格がこなれてくれば普及は早いかもしれない。

 モノラル放送からステレオ放送への移行や、白黒テレビからカラーテレビへの移行など、不可逆的な技術の進歩というものがある。一度経験してしまうと元には戻れないということだ。もしかすると高音質電話も、そのような進歩の一つになるのかもしれない。

 「NGNのキラーアプリ」と呼べるものが何になるのかはまだはっきりしない。しかし、高音質電話のように驚きを与えてくれる新サービスやアプリケーションが、他にもいくつか出てくると、NGNは俄然面白くなってくるのではないだろうか。

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