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情報通信 ニュースの正鵠
2008年7月掲載

FTTH と FFTH

グローバル研究グループ 清水 憲人

 「FFTH」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 「FTTH」のタイプミスではなくFFTHだ。

 ご存知のように「FTTH」は「Fiber To The Home」(家までファイバー)の頭文字をとったもので、電話交換局から顧客の家までを光ファイバーで接続するもの。一方の「FFTH」は何かというと「Fiber From The Home」(家からファイバー)の略である。

 「言い方を変えただけ」のようにも見えるが、それだけではない。

 FTTHは「通信事業者が電話交換局から顧客の家まで光ファイバーを敷設する」のに対し、FFTHには「顧客がコストを負担して自宅からの光ファイバーを敷設する」という意味が含まれている。

 インターネット上のリッチコンテンツの増加、IPTVやVODなどの新たな動画配信サービスの提供、セキュリティ装置への動画機能の追加、オンライン・ゲーム利用の増加など、帯域ニーズの増加をもたらすさまざまな要因を考えると、いずれ「銅線(電話線)では一般家庭のブロードバンド需要に対応ができなくなるだろう」という見方が増えてきている。

 それにも関わらず、日本など一部の国を除いて、FTTHの展開がなかなか進まないのは、多くの場合、そのコストがネックになっているからである。

 例えば、米国のベライゾンは2010年までに1,800万世帯をFTTHネットワークでカバーする予定だが、そのコストは一世帯あたり約1,700ドル(約18万円)である。一方、ベライゾンが同社のFTTHサービス『FiOS』に申し込んだユーザに課す工事料金は、わずかに79.99ドル(約8,600円)であり、それさえ一年契約を選べば無料になる。

 つまりエンドユーザは、FTTH展開にかかるコストのほんの一部しか「工事料金」として負担してはおらず、実質的に通信事業者の負担で光ファイバーは建設されているのである。もちろんそのコストは、サービス料金の中でいずれ回収されることになるのだが、光化に伴ってどの程度顧客単価が上がると見込むのかによって、採算が合うかどうかが微妙になる。その結果、FTTH展開がなかなか進まないのだ。

 このような状況を打破するための妙案として期待されているのが、建設コストを顧客に負担してもらうという「FFTH」という考え方であり、通信事業者に光ネットワーク関連機器を売り込みたいベンダーによって喧伝されている。

 もちろん、一世帯数万円〜10数万円もする光化コストを、そのまま「工事料金」としてエンドユーザに課すというのは現実的ではない。そこで考えられているのが、デベロッパーとの連携である。宅地造成時に光ファイバーの敷設工事を一緒に実施しておけば、工事の効率も良いし、「高速ブロードバンド対応住宅」として物件の価値も上がる。実際にスウェーデンではそのような事例があるという。

 コロンブスの卵のようなこの話。逆転の発想で光ファイバー展開を加速させるという結果につながるのかどうか注目されるところだ。

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