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情報通信 ニュースの正鵠
2008年7月掲載

生体認証装置としての携帯電話

グローバル研究グループ 清水 憲人

 あらためて言うまでもないが、最近の携帯電話は「電話」と呼ぶのが憚られるほど、多くの機能を備えている。

 メールやネット接続などの通信機能はもちろんのこと、テレビやラジオなど放送の受信機にもなる。カメラの性能は年々向上し、500万画素超の高精細な写真撮影が可能だ。

 クレジットカードや電子マネーにも対応し、電車や飛行機にも乗れるのでサイフの代わりになる。携帯電話を時計がわりにして腕時計をしない人も増えている。GPSを利用したナビゲーション機能は、簡易カーナビとして使えないこともない。

 PCを使わずに音楽を購入できるので、ミュージック・プレイヤーとしても悪くない。電子書籍をダウンロードすれば文庫本代わりになるし、ゲームもできる。暇つぶしグッズとしても優秀だ。

 スケジュール表、電卓、ICレコーダー、電子辞書なども搭載されており、ビジネス・ツールとしても役に立つ。日本語で話せば英語や中国語に翻訳してくれるサービスもある。

 持ち歩くだけで歩数や消費カロリーを表示してくれる加速度センサー搭載機種も登場し、流行りのメタボ対策にも効果がありそうだ。

 電池切れにさえならなければ、携帯電話一つで何でもできる。そんな時代になってきた。

 その携帯電話に、また一つ新たな役割が加わろうとしている。それは「生体認証装置」としての機能だ。

 NTTコミュニケーションズが提供する「Voice ID」というサービスをご存知だろうか。先週の水曜から金曜(7/16-18)に東京ビッグサイトで開催された「ビジネスショウTOKYO 2008」でも紹介されていたものだ。

 このサービスは携帯電話からセンターに電話をかけ、あらかじめ登録しておいたIDを発音することで、本人性の確認をするというもの。同サービスでは、まず、発信端末が本人のものかどうかを電話番号で確認し、次に、IDが登録されているものと同一かどうかをチェック、さらに、声紋認証で本人が発音したかどうかを判断する。声紋という生体認証を含む3段階のチェックを行うことで、確実に本人を特定できるというのがウリだ。

 ビジネスショウでは、具体的な利用シーンとして、ネット・バンキングとの組み合わせを展示していた。オンラインで振込みの操作を行うと、画面にVoice IDセンターのフリーダイヤル番号が表示され、本人性が確認された段階で振込み処理が実施される。

 電子商取引は増加しているが、依然としてセキュリティを心配する人は多い。このサービスは、セキュリティの不安から利用をためらっていた人達を電子商取引の世界に誘うきっかけになるかもしれない。

 パスワード認証でも乱数表と組み合わせるなど、セキュリティ向上についての工夫が行われているが、安心感という点では、やはり生体認証に分がある。しかし生体認証は、指紋でも、虹彩でも、静脈でも、多くの場合、専用の認証端末が必要になるため、パーソナル・ユースに広く普及させるのは難しい。

 その点、携帯電話ならほとんどの人が持っているので、あらためて端末を購入してもらう必要がない。

 2007年末時点で日本の携帯電話加入数は1億530万。国民の大半が保有しているという事実が、携帯電話の可能性をさらに広げていく。

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