2011年3月4日、駐日イギリス大使館は、「英国モバイル・コンテンツ&スマートフォン ビジネスフォーラム ―英国からグローバル展開の機会を探る―」というイベント を開催した。
今回はその中で、BBCのモバイルに対する取組とモバイル広告についてみてみたい。
(1)イギリスのモバイルテレビの日本進出への期待
BBC のフューチャーメディア&テクノロジー部 モバイル事業 ヘッドのニック・ギャロン氏の講演。
「BBC:TV放送コンテンツのモバイルビジネス展開について」
プレゼンテーションの冒頭に、現状のIT業界の問題点をパロディ化したコメディ動画を見せて、問題点をひきつけた。(下記動画参照)
ポイントとして以下の点があげられた。
2011年1月、イギリスでのネットアクセスはGoogle、Facebookに次いでBBCである。
BBCのコンテンツをモバイルで提供するにあたって全ての端末(OS)向けに提供していく必要があると考えている一方で、技術的な面では、開発するには5つの異なるプログラミング言語があり、コスト・技術面で問題があることを指摘。
この課題を解決するためにHTML5に期待している。
BBCは、イギリスにて「iPlayer 」というスマートフォン向けアプリを提供している。
プログラムも増加して、利用者も増えており、過去1週間に放送されたBBCのテレビ、ラジオといった番組を視聴できる。
同アプリは、提供開始直後にiPhone版は126,000、Android版では46,000のダウンロードがあり急速に普及している。
イギリスの放送局はテレビライセンスフィーと呼ばれる料金を視聴者から徴収しているため、同アプリは現在イギリス国内のみでしか視聴できない。
イギリス国外への提供については、権利関係がクリアになれば有料で提供する意向はあり、海外での展開も2011年の夏を目途にリリースしたいとしている。
BBCではDual Screenの経験をユーザに提供したいとの意向で、テレビで放送したものをタブレットやスマートフォンで補足するような形式でコンテンツ提供を検討している。クリスマス前に実施したトライアルでは、「Wild Life」というテレビ番組で象に関する放送を行い、タブレットやスマートフォンでは象に関する情報やクイズを提供する試みを行った。
2012年にロンドンオリンピックに向けて、コンテンツのパーソナル化した提供の重要性をアピール。共有・参加しているようなソーシャル的なコンテンツの提供方法が重要になるだろうとのこと。
近いうちにBBC の「iPlayer 」が日本でも放送されることに期待したい。 そしてBBCがロンドンオリンピックに向けて実施しようとしている取組は日本の放送局も学ぶべき点が多くあるのではないだろうか。またBBCのような巨大メディアが参入してくることによって、日本のモバイル放送も活性化されることに期待したい。今後のBBCの「iPlayer」のグローバル展開に注目していきたい。
(2)今後の広告のカギは、「ソーシャル」「ローカル」「モバイル」
SOMO COOのカール・ウミンスキー氏の講演。
「スマートフォン先進国・英国から見たモバイル広告市場の可能性 スマートフォンにおけるSEO:ナショナル・クライアントを巻き込んだモバイル広告メディアの展開と収益戦略」以下のポイントがあげられた。
Symbian端末はイギリスでは減少しており、広告の対象としての注目度は落ちている。
HTML5に期待している。
サーチエンジンの最適化が重要になってくる。
iPadを活用した新たなインタラクティブな広告に注目。
今後の広告のカギとして、「ソーシャル」「ローカル」「モバイル」をあげ、Foursqure、Grouponを紹介。スターバックスの事例をあげて、”geo fenced area enhanced”と呼ばれる特定エリアに対してユーザにメールで広告配信をする事例を紹介した。ユーザはオプトインしているからスパムメールにはならない。
スマートフォンが34%も普及しているイギリスでのモバイル広告に関するノウハウや技術に関して日本もイギリスから見習う点が多くあるのではないだろうか。スマートフォンの分野ではイギリスは日本よりも進んでいるのではないだろうか。
次稿では、イギリス大使館の取組とイギリス政府のICTへの取組、構想について考察 を行いたい。
(参考サイト)
駐日英国大使館:http://ukinjapan.fco.gov.uk/ja/
英国貿易投資総省:http://www.ukti.gov.uk/
イギリス(1):ICTの現状〜市場としての魅力
イギリス(3):駐日イギリス大使館の取組と「イギリス版シリコンバレー」構想
【参考動画:BBCプレゼンでコメディ(現在のIT業界の問題をパロディにしたコメディ)】
VIDEO
*本情報は2011年3月7日時点のものである。