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Global Perspective
2011年3月11日掲載

イギリス(3):ICTの現状〜駐日イギリス大使館の取組と「イギリス版シリコンバレー」構想

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2回にわたって、イギリスのICT事情に関して紹介した(こちらこちら)。今回はそれに伴い、主催者の駐日イギリス大使館のICTへの取組みと、2010年11月にキャメロン首相が発表した「イギリス版シリコンバレー」構想に注目したい。

駐日イギリス大使館の取組み

(1)イギリス直接投資支援
イギリス大使館のサイトによると、ICT分野は、イギリス最大の産業分野の一つとして重要な位置を占めておりイギリス経済に664億ポンド(6.4%)の貢献をしている。また約100万人の雇用を創出している。成長率も約5%と非常に高いとのことだ。
イギリス大使館では、ICT以外にもバイオ/医薬品、化学、食品・飲料の分野での直接投資や英国製品輸入の支援、啓蒙活動を行っている。

(2)イギリス製品の輸入に関する情報提供
ICTでは以下の分野についての紹介を行っている。

 駐日イギリス大使館には、今後ともICT分野も含めて経済的交流の面や情報発信から日本とイギリスの様々な架け橋になってくれることに期待したい。

ロンドンオリンピック跡地へ「イギリス版シリコンバレー」構想

 2010年11月4日、キャメロン首相は、ロンドン東部に先端技術企業が集積したイギリス版シリコンバレーを創設する構想発表した。(下記動画参照)
グーグル、Facebookなどが既に投資を計画しているという。イギリス企業や海外からの投資を加速させ、産業の成長と雇用の拡大につなげることが目的だ。企業誘致のため、起業家向けの新たな労働ビザの導入や知的財産権制度の改革も発表した。
英国版シリコンバレーの建設が予定されているのはロンドン東部のイースト・エンド地区で、2012年のロンドンオリンピックの会場となるオリンピック・パークの跡地も含まれている。「East London Tech City」というサイトもオープンされた。イギリスのICT分野での競争力強化、雇用創出、オリンピック跡地の活用という政策である。今後の発展に大いに期待したい。

 ICT分野というとGoogle、Apple、Amazon、Facebookなどアメリカから出てくるものが多い。そのような中で、今後ロンドンオリンピックを控えて積極的にモバイルICT分野へ注力し、かつオリンピック終了後にはその跡地をイギリス版シリコンバレーにしてしていこうというイギリスのICTに対する積極的な取組みが感じられる。
イギリスをはじめ、欧州には優秀なITエンジニア、企業家が多い。世界標準語となっている英語、マルチカルチャーや地理的アクセスの良さ等、イギリスという「地の利」を活かして多くの企業、人材を誘致することによって、ICTの分野をリードしていくハブになることを期待している。日本企業も積極的にイギリスへの投資、進出を検討すべきではないだろうか。

 またキャメロン首相が主導しているオリンピック跡地の有効活用したICT企業、人材誘致を目指した「イギリス版シリコンバレー構想(East London Tech City)」は日本の政財界も学ぶべきことが多いのではないだろうか。
イギリスはかつて産業革命で世界をリードしてきた。IT革命はアメリカがリードした。再びイギリスがICTの分野で復権することにも期待したい。
今後、イギリスの国家戦略としてのICT分野への取組みには引き続き注目していきたい。

(参考サイト)
駐日英国大使館:http://ukinjapan.fco.gov.uk/ja/
East London Tech City:http://www.eastlondontechcity.com/
イギリス(1):ICTの現状〜市場としての魅力
イギリス(2):ICTの現状〜BBCの戦略とモバイル広告

(参考動画)「ロンドンはシリコンバレーになりうるか?」を伝えるニュース(2010年)

*本情報は2011年3月7日時点のものである。

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