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Global Perspective 2011
2011年7月27日掲載

ハンガリー:通信事業者らによるNFC・モバイルペイメントへの取組:"Mobile Wallet Association" 設立

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年7月25日、ハンガリーの通信事業者3社とMastercard、OTP銀行
SuperShopがNFCを活用した「モバイルペイメント」の普及に向けて協力していくために、「Mobile Wallet Association」を設立すると発表した。

 ハンガリーの通信事業者Magyar Telekom、Telenor Hungary、Vodafone Hungaryの3社が参加する。「Mobile Wallet Association」設立の目的はモバイルペイメント普及のための標準化技術の策定と様々なプレーヤーが自由に参加できるプラットフォームの共有化である。具体的に採用する技術については表明していない。年内にトライアルを行い、2012年の商用化を目指しているようだ。

 ハンガリーの携帯電話事情について簡単にみてみたい。
携帯電話加入者約1,190万人。加入率約118%。今回提携を発表した3社が主要な通信事業者である。(2010年12月現在)

1.Magyar Telekom
 ・シェア約43.8%
 ・ドイツT-Mobileグループ

2.Telenor Hungary
 ・シェア約33.7%
 ・ノルウェーTelenorグループ

3.Vodafone Hungary
 ・シェア約22.5%
 ・イギリスVodafoneグループ

 ハンガリーの主要通信事業社は、全て外国資本が入っていることが興味深い。
最大手のMagyar Telekomは、ドイツのT-Mobileグループでドイツテレコムは2011年2月にモバイルペイメントへの取組みについて発表している。Telnorはノルウェーで「Tap2Pay」というモバイルペイメントのトライアルを実施している。Vodafoneも英国で同じようにモバイルペイメントに取り組んでいる。

 同じグループ会社であっても国境を超え、通貨が変わるとシステム、制度も変わるから、世界的に展開するグループ会社の強みもNFC・モバイルペイメントの分野では発揮できないのであろう。なおハンガリーの通貨はハンガリーフォリント。

 今回のハンガリーの通信事業者らの発表において、今後は携帯電話によるNFC対応のモバイルペイメントが重要になり、そのエコシステムのためには主要通信事業者と銀行、カード会社の協力関係が必要であると表明している。世界各国でも同様に通信事業者らのジョイントベンチャーや協力に向けた取組が多く発表されている。

 アメリカの通信事業者3社でNFCの共同推進を目的として2010年11月にISIS
を設立した。2011年7月19日には、クレジット決済ブランド大手のVisa、MasterCard、Discover、American Expressとの提携を発表した。ISIS対応の携帯端末で、クレジットブランドを選択して支払いが可能になる予定だ。
イギリスでは2011年6月には、通信事業者3社でのJV設立の報道があった。他にオランダやベルギーデンマークでも通信事業者同士が協力してNFCを推進していこうとしている。

 現在、世界では上記のように多くの国で通信事業者らが協力してNFCを活用したモバイルペイメントに取り組もうとしている。今回の発表でも事業者間で「arm-in-arm」で連携して取り組んでいくことを表明している。1つの国において通信事業者間で協力しあいながらNFCを推進していくことの重要性が理解できる。生活インフラとしてのモバイルペイメントを普及させるにあたっては、その方がユーザにとっての利便性もはるかに高い。さらに今回の発表の中で、以下のようにも述べている。

"This united move of Hungary's MNOs may ensure that Hungary will be among the first countries where mobile NFC services may be launched in Europe. "

 「may」でなく「will」と言い切れるように、今後のハンガリーの通信事業者らの「Mobile Wallet Association」の活動に期待したい。
ハンガリーの主要通信事業者は外国資本の会社だ。繰り返すが、国境を超え、通貨が変わるとシステム、制度も変わるから、世界的に展開するグループ会社の強みもNFC・モバイルペイメントの分野では発揮できないのであろうか。今後は親会社やグループ会社間とのNFC分野での連携にも注目していきたい。

 果たしてどこの国が先陣を切って商用化するのであろうか。

*本情報は2011年7月27日時点のものである。

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